日銀による追加金融緩和策、中国人民元: 呂 新一
昨日午後、日銀は臨時の金融政策決定会合を開き、年率0.1%の固定金利で10兆円規模の資金を金融市場に供給することを決めました。
追加緩和策の効果をみると、まず、これで資金が最もそれを必要とする企業に届くかどうかは定かな保証がなく、ルートの問題を解決しないと、資金が単に金融機関の中で死蔵金になる恐れは高い。この点においては日銀が批判を受ける可能性があります。
ただ、金融機関が年率0.1%で安定的に資金調達できる見通しが立つと、市場金利が低位安定し、その結果、日米金利差に基づく円高見通しがかすみ、円高阻止する効果が期待できます。特に円のロングポジションが膨大なものになっている現在その効果はあると思われます。
今回の決定についてもう1つ言えることは、タイミングが良かったことです。日本株に弱気ムードが充満し、ここにきてドバイ・ショックも重なり、在日外銀を含め銀行の資金繰り、資産の毀損が懸念されている最中、日銀による追加の金融緩和策は株式市場の弱気ムード払拭し、銀行を纏わる不安の解消に非常に役立つと思われます。
ただ、今回の追加緩和策だけで円高圧力がなくなり、これから円安に向かうとはとても言えません。円がドルに対し本格的に安くなっていくには次の2つの条件のうち、少なくとも1つが満たされることは必要でしょう。
1) FRBが利上げに動くこと。その可能性はないわけではありません。ゼロ金利によるドル安が米国経済を支えているが、長期に亘りドル安が続くと、コモディティ価格の上昇が止まらなくなります。それがいずれ米国経済に好ましくない影響をもたらします。そうなると、FRBまたは米政府がドル防衛に回ると予想されます。
2) 中国が再び人民元の緩やかな上昇を認めること。米国は中国に対し対米貿易黒字を稼ぎ過ぎと怒っていますが、よく見ると、中国の対米貿易黒字のうち、現地生産している日系企業、あるいは、日本産の部品を使っている韓国系、台湾系の企業によるものは少なくありません。言い換えれば、日本の企業は、中国を使って米国に迂回して輸出しています。その迂回輸出に韓国系企業、台湾系企業も協力しています。このことは、アメリカから見ると、日本
⇒ 中国 ⇒ アメリカ、というアメリカへの商品流入ルートを円高、又は人民元高のどちらかでブロックすれば良いわけで、そのため、人民元が高くなれば、円高への圧力が弱まる可能性はあります。
では、中国政府が人民元高を容認しますか、その可能性はあります。今のところ、中国政府が人民元の安定を強調していますが、水面下でのインフレ圧力が表面化すれば、中国政府が姿勢転換する可能性は十分にあります。
今から約2カ月前、中国はガソリン価格を2割ほど値上げしました。過去数年間、中国政府が断続的にガソリンを値上げして来ましたが、そのつど補助金を出していました。しかし、今回は補助金なしで、ガソリン価格上昇がユーザーを直撃しています。例えば、上海市では、10月11日より、タクシーの初乗り料金(最初の3キロまで)が11元から12元に、初乗り距離超過後の1キロ当たりの加算料金も2.1元から2.4元に引き上げられました。
補助金なしでガソリン価格を上げると、殆どすべての物価が上がります。今の中国はもう過去の農業国と違い、(効率の悪い)工業化が急速に進んだため、燃料価格の上昇は隅々の物価まで影響します。
ドルが安定している時、人民元がドル連動しても物価にそれほど影響しないが、ドルがとんとん下がっていき、年率8%の成長が続き、海外の原料・エネルギーへの依存度がますます高まってきた現在、通貨のドルペッグ維持が輸入インフレを招く可能性が高い。
野村雅道と楽しい投資仲間達おすすめFX会社
最近のコメント