外為入門

2009年12月 2日 (水)

日銀による追加金融緩和策、中国人民元: 呂 新一

昨日午後、日銀は臨時の金融政策決定会合を開き、年率0.1%の固定金利で10兆円規模の資金を金融市場に供給することを決めました。

 

追加緩和策の効果をみると、まず、これで資金が最もそれを必要とする企業に届くかどうかは定かな保証がなく、ルートの問題を解決しないと、資金が単に金融機関の中で死蔵金になる恐れは高い。この点においては日銀が批判を受ける可能性があります。

 

ただ、金融機関が年率0.1%で安定的に資金調達できる見通しが立つと、市場金利が低位安定し、その結果、日米金利差に基づく円高見通しがかすみ、円高阻止する効果が期待できます。特に円のロングポジションが膨大なものになっている現在その効果はあると思われます。

 

今回の決定についてもう1つ言えることは、タイミングが良かったことです。日本株に弱気ムードが充満し、ここにきてドバイ・ショックも重なり、在日外銀を含め銀行の資金繰り、資産の毀損が懸念されている最中、日銀による追加の金融緩和策は株式市場の弱気ムード払拭し、銀行を纏わる不安の解消に非常に役立つと思われます。

 

ただ、今回の追加緩和策だけで円高圧力がなくなり、これから円安に向かうとはとても言えません。円がドルに対し本格的に安くなっていくには次の2つの条件のうち、少なくとも1つが満たされることは必要でしょう。

 

1) FRBが利上げに動くこと。その可能性はないわけではありません。ゼロ金利によるドル安が米国経済を支えているが、長期に亘りドル安が続くと、コモディティ価格の上昇が止まらなくなります。それがいずれ米国経済に好ましくない影響をもたらします。そうなると、FRBまたは米政府がドル防衛に回ると予想されます。

2) 中国が再び人民元の緩やかな上昇を認めること。米国は中国に対し対米貿易黒字を稼ぎ過ぎと怒っていますが、よく見ると、中国の対米貿易黒字のうち、現地生産している日系企業、あるいは、日本産の部品を使っている韓国系、台湾系の企業によるものは少なくありません。言い換えれば、日本の企業は、中国を使って米国に迂回して輸出しています。その迂回輸出に韓国系企業、台湾系企業も協力しています。このことは、アメリカから見ると、日本 中国 アメリカ、というアメリカへの商品流入ルートを円高、又は人民元高のどちらかでブロックすれば良いわけで、そのため、人民元が高くなれば、円高への圧力が弱まる可能性はあります。

 

 では、中国政府が人民元高を容認しますか、その可能性はあります。今のところ、中国政府が人民元の安定を強調していますが、水面下でのインフレ圧力が表面化すれば、中国政府が姿勢転換する可能性は十分にあります。

 

今から約2カ月前、中国はガソリン価格を2割ほど値上げしました。過去数年間、中国政府が断続的にガソリンを値上げして来ましたが、そのつど補助金を出していました。しかし、今回は補助金なしで、ガソリン価格上昇がユーザーを直撃しています。例えば、上海市では、1011日より、タクシーの初乗り料金(最初の3キロまで)が11元から12元に、初乗り距離超過後の1キロ当たりの加算料金も2.1元から2.4元に引き上げられました。

 

補助金なしでガソリン価格を上げると、殆どすべての物価が上がります。今の中国はもう過去の農業国と違い、(効率の悪い)工業化が急速に進んだため、燃料価格の上昇は隅々の物価まで影響します。

 

ドルが安定している時、人民元がドル連動しても物価にそれほど影響しないが、ドルがとんとん下がっていき、年率8%の成長が続き、海外の原料・エネルギーへの依存度がますます高まってきた現在、通貨のドルペッグ維持が輸入インフレを招く可能性が高い。

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2009年8月14日 (金)

この一冊=両から円へ

「この一冊=両から円へ」、山本有造、ミネルバ書房

 幕末・明治前期貨幣問題研究

重点は円の誕生の明治4年(1871年)の新貨条例から銀本位制の確立する明治18

年(1885年)の間である。

 外国為替ディーラーとしてはやはり洋銀相場の記述が気になった。円の対外価値は円と洋銀の交換率である洋銀相場によって計られた。

 明治7、8年には金流出と国際収支の悪化で通貨危機状態となっていった。

明治維新創業にかかわる財サービス資本の輸入コストが増大した。幕末は貿易黒字であったが維新時は貿易赤字となり洋銀相場は急騰したようだ。

また銀価下落、金価騰貴で1:15での金銀比価が1:16となっていった。安い銀貨を輸入し日本の金貨と交換し海外へ輸出する取引が極めて有利となった。

 

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2009年8月13日 (木)

プラザ合意以降1

「プラザ合意以降1」

*1985年9月22日の声明  プラザ合意 ドル円240円

米国の製造業、農業は国際市場での競争力を失う。ドル高是正の声高まる
不公正貿易、保護主義法案、対米不均衡がより大きな政治問題、プラザ合意5カ国秘密裡、強いドル=アメリカを180度転換  

1987年2月 ルーブル合意 ドル円153円

これ以上のドル下げは不要 、AROUND CURRENT LEVELSで保つ
政策協調 日本 内需拡大、西独 減税前倒し、米 財政赤字削減

サーベイランス=相互監視、成長、インフレ、貿易、経常収支、財政状況、金融環境、 

目標相場圏(TARGET ZONE)、参考相場圏(REFERENCE RANGE)を議論

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通貨変動対策

「通貨変動対策」

*自国通貨安対策=通貨防衛策

①ドル売り介入 ②公定歩合引き上げ③スワップ枠の拡大
④外貨建て政府証券の発行⑤海外投資抑制⑥輸入課徴金 

*自国通貨高対策


①ドル買い介入②公定歩合引き下げ③スワップ枠の拡大
④海外投資規制緩和⑤輸出抑制(輸出税) *(市場閉鎖も)

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2009年8月12日 (水)

国際通貨制度の歩み9

「国際通貨制度の歩み⑨」

変動相場制下の円の軌跡 

固定相場制離脱後の円高への調整期
第一次石油危機によるその後の調整期
経常黒字と円高加速
カーター大統領のドル防衛策と第二次石油危機による円安
経常収支赤字化の円高
経常収支黒字化の円安

プラザ合意とドル安の進行

経常収支黒字の縮小と円安
経常黒字の再拡大と対外投資の減速

 変動相場制の評価


 当初の楽観論と悲観論、 均衡破壊的な投機取引
 恣意的な相場形成の概念、 為替相場の合理的な修正
相場の変動がもたらす悪影響、 国内均衡と国際均衡の同時達成の期待

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国際通貨制度の歩み8

国際通貨制度の歩み⑧」

 変動相場制をとっておらず他の通貨などにペッグしている国も多い。

変動相場制がかならずしも行きつく先でもない。ユーロ圏は固定相場=通貨統合へ進んでいる。ボーダレスな経済になれば為替相場は障害となる。ユーロ圏は経済体制、規律、税制などを含め統合した。 日本は税制など異質な制度が多いので他j国との通貨統合への道のりは遠いだろう。

通貨制度別内訳
固定相場


 米ドル=パナマ、ドミニカ、オマーン、リベリア
 仏フラン=ユーロ=カメルーン、チャド、コンゴ、ニジェール、
 他通貨インドルピー=ブータン、ルーブル=アゼルバイジャン
 

 定められた経済指標で調整=チリ、コロンビア、ニカラグア、マダガスカル
 管理フロート=中国、韓国、エジプト、シンガポール
 独立してフロート=オーストラリア、日本、カナダ、ユーロ、ニュージーランド、イギリス、アメリカ

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2009年8月11日 (火)

国際通貨制度の歩み7

「国際通貨制度の歩み⑦」

スミソニアン体制 197112

新たな固定相場 ドルは金に対し切り下げ、主要国通貨はドルに対し切り上げ

ドル円は360円から308円へ(中心レートから2.25%の範囲で介入で抑える)

ドルと金の交換性なし、ドルは引き続き国際収支赤字 介入にも限度、過剰流動性の問題

(変動相場制)

19732月、3月相次いで変動相場制へ

 メリット 時に機動的 石油ショック

 デメリット 米赤字でも通貨高=レーガン政権

       経常収支に均衡作用が働かない、国内金融政策が為替相場を意識する

(国際通貨制度の将来) 変動、固定、ターゲットゾーン(目標)、レファレンスレンジ(参考) 

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国際通貨制度の歩み6

国際通貨制度の歩み⑥

1960年代


 ドルのオーバーハング(OVERHUNG)
 米国の国際収支赤字の増大、深刻化、 各国公的当局のドル保有が増大
 米国は 金利平衡税 アメリカ人が海外から債券を購入した時は特別税
 対外投融資自主規制、スワップ協定(米国のドル買い他通貨売り=他通貨を借りる)
 ローザボンド 相手国の通貨で債券を発行、ドルで売却

英国 1967年 11月切り下げ

 ゴールドラッシュへ、1968年 ベトナム戦争

(ニクソン大統領新経済政策)

1971年8月
ニクソンショック=ドルと金の交換性を停止、主要国はドルの買い支えを放棄 
 10%の輸入課徴金、対外援助の10%削減、価格統制、 失業対策としての財政措置

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この一冊、格付会社の研究

「この一冊、格付会社の研究」黒沢義孝、東洋経済新報社

 ミシュランのレストラン格付けもそうだが、法人の格付けも疑問に思うことがあったのでこの書で先ずは格付け会社とは何であるかを学んだ。

 最近ではニュージーランドの格付けがムーディーズ、S&P、フィッチで三者三様であることにも違和感があった。格付け会社は必要なのだろうか。ミシュランと同じようにあってもなくてもいいのではないかとも考えていた。

 破たんや債務危機が起きてから格付けを後付けで変更する例も多くあり、格付けを頼って投資しても価値はないのではないかとも思っている。

 ただ日本の格付け産業は2007年で推定売り上げ242億円、アナリストなど従業員数も531人と成長しているそうである。 格付けの需要が高まっている。

本書は日本で活動する格付け会社5社を比較したものである。ムーディーズ、S&P、フィッチ、R&J、JCRである。

 最上級格付けのサブプライム債券を購入して破たんの憂き目にあったひともいるだろう。為替相場ではソブリン格付けの変更が恣意的に流されて大変動を生むようなこともあったと思う。

 IOSCO(証券監督者国際機構)で格付け会社の行動規範はあるようだ。理不尽な格付けで当該国家や法人が苦難に陥ることは避けてほしいと思う。

 

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2009年8月10日 (月)

国際通貨制度の歩み5

「国際通貨制度の歩み⑤」

(戦後の状況)
 1946-1949年

*米国の金準備は世界の公的保有金の70%
*世界中が金不足、ドル不足
 米国が援助  欧州はマーシャルプラン、日本へはガリオア、エロア
 各国は国内経済の引き締めと為替管理

(ドルの動揺)

戦時中、戦後にかけて圧倒的な強さを誇った米国にも1950年代、1960代に国際収支の逆調、政府部門の赤字、長期資本の流出、貿易黒字の縮小で外国の公的部門、民間部門に保有されるドル残高の累増

米国が1オンス=35ドルを維持できるかどうか。投機は金の購入へ向かう
ゴールドラッシュ、主要国はドル買い介入でドル残高が増え金準備を超える

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