中国事情

2010年6月 2日 (水)

固定資産税の導入を考えている中国政府:  呂 新一

今、中国の幾つかの地方で、固定資産税の導入を計画しています。そして、531日、国務院(日本での内閣府に相当)は発展改革委員会(経済産業省に相当)が提出した《2010年 経済体制改革重点項目についての考案》を承認しました。その《考案》は固定資産税を徐々に導入することを明確に打ち出しました。

 

また、報道によると、上海市は、1人当たり居住面積が70平米を超えた家庭から、そして、居住面積の大小を問わず上海に戸籍を持っていないか又は上海市の居住許可証を取得した期間が1年以内の家庭から、固定資産税を徴収することを計画しています。

 

ただ、このまま固定資産税を導入すると、深刻な社会問題を起こす可能性は十分にあります。まず、以下のような問題点が挙がられます。

 

1) 多くの国民が固定資産税に抵抗を感じる可能性があります。というのは、中国では、住宅を購入したと言っても、本当に購入したのは今後70年間の居住権だけであり、土地はあくまで政府の持ちモノです。そして、70年間の居住権を購入したとしても、いつか、政府の役人が突然やってきて、今の住まいが何かの開発計画区域に含まれ、1ヵ月以内に引っ越してくれと言われれば、引っ越さざるを得ません。そのような、土地を所有出来ず、いつ政府によって壊されるのかも分からない “固定資産”に税金を払うことは国民が抵抗を感じると思われます。

2) 固定資産税は建物の評価額をもとに徴収されるが、その評価額を誰が決めるのかは大きな問題です。今、中国に大金持ちがぞろりいることは半ば常識になっていますが、その大金持ちのうち、かなりの人は会計事務所、地方政府と組んで国有資産をタダ同然で手に入れたことで初めて富豪になった人です。そのような過去があるだけで、今後、建物の評価額を決める際、高級住宅地などが意図的に低めに抑えられることは十分に考えられ、そして、そのことで、社会不満が高まる恐れはあります。

3) 課税の基準を一人当たり平均住居面積が70平米以上にしたことで、都会で狭いマンションに住んでいる殆どの住民は固定資産税を払う必要はないが、広い住居に住んでいる金持ちと土地の値段が安い田舎(上海市という行政区範囲に入る田舎)に住んでいる人達が税金を払うことになります。金持ちは何とか税金を払えるかもしれないが、田舎の百姓に固定資産税を払えと言うのはちょうど現実的に難しい上、都市部のサラリーマンとの間のバランスは取れていません。

4) 中国では、お家を持っている人達は必ずしも自分たちで買ったわけではありません。今から20数年ほど前、住宅制度改革をスタートした当時は、それまでに政府機関・国営企業が保有していた宿舎を非常に安い値段で長年勤続しそこに住んでいた職員達に売却、ないし贈与しました。中国で農民を除けば初めて持家を保有した人達はこのように政府機関・国営企業の従業員でした。今となっては、この人達は既にお年寄りになり、又は配偶者が居なくなり、一人で住んでいる場合は少なくありません。こういう人達に今から固定資産税を払えと言っても、現金収入がないことも多いでしょう。

5) 居住面積の大小を問わず上海に戸籍を持っていないか又は上海市の居住許可証を取得した期間が1年以内の家庭からから固定資産税を徴収することは、上海市民の排外意識を刺激すると同時に、“外来民”の生活を一層圧迫する恐れがあります。

6) 固定資産税は地方税に属される税種で、地方政府に税率および徴収方法を決める権限があります(ただ、中央政府に報告し承認を待つ必要があります)。地方が権限を持っているとすれば、今まで土地の値段を高くし、巨額の富を得たと同じように、今後、固定資産税を便利な“増収手段”として悪用する恐れがあります。

 

こうして見ると、中国(に限らず)で、透明性と公正性が保証されない限り、おカネに係わる重要な政策を導入することで、新たな社会不満を作り出す可能性があります。

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2010年5月26日 (水)

ギリシャ財政危機は我々に何を語っているのか: 呂 新一

ギリシャ財政危機をきっかけに、世界的に株価は大暴落を続いています。

 

ギリシャ財政危機についての議論は、大まかに言うと、2つの道に分かれます。1つはユーロ圏で発生した問題として捉え、ユーロが存続できるのかどうか、或いはユーロがどこまで下落するのか、の議論です。もう1つは、財政が火の車というギリシャの窮状は実はほかの国も抱えている悩みであることに注目し、次の修羅場となるのがどこの国か、との議論です。

 

ユーロが存続できるのかどうかについて、まず、頭に浮かんだのは、ヨーロッパの人達が連合された欧州を昔から理想として掲げ、長い歳月をかけてやっと通貨統合の段階に辿りついた事実であり、その意味では、ユーロを解体させることは、多くのヨーロッパ人にとって苦痛に満ちた選択となるでしょう。一方、現在の形でユーロを存続させるのは無理であることも明らかです。即ち、今後もユーロを存続させるなら、統合をさらに進め、参加国の財政支出基準まで統合するのか、或いは、一歩退き、ギリシャなど元々平時でも3%基準を満たしていない国々を暫くの間ユーロから離脱させ、少数先鋭の集団からユーロを再スタートさせるのか、のどちらかしかないです。ただ、よく考えれば、各国とも不景気に悩み、財政による景気刺激策を考えている現在、その財政の決定権をEUに委ねることは非現実的でしょう。他方、いま直ぐギリシャなどの国を除名することも市場へのインパクトを考えればありえない選択です。従って、当面、良い選択肢がなく、ユーロ諸国は暫くの間、市場の波乱がこれ以上広がらないように時間稼ぎに専念すると見られます。

 

そして、もう1つの議論の焦点である、次、どこの国が第2のギリシャになるのかについて言うと、南欧諸国のほか、候補者はまた沢山あります。ただ、より本質的なことは、どこの国が第2のギリシャになることではなく、今まで世界の主流を占めている経済発展パターンがこのまま維持できるのかどうかのことだと思われます。

 

ここで、筆者は「経済発展パターン」という言い方を使いっていますが、より厳しい言葉を使うと、「生活レベルを維持する方法」ということになるでしょう。即ち、南欧諸国だけでなく、日本、アメリカ、果てはイギリスまで、今までの経済発展パターン、或いは国民の生活レベルを維持するため、国債を発行し続き、将来の世代から許可もなく返す当ても膨大なお金を借りてきました。フランスのルイ15世は「朕の後は野となれ山となれ」という有名な言葉を残したが、今の西側諸国の政治家は、自分が当選するため、過度に国民に甘い将来を期待させる一方、まだ生まれていない(当然、選挙権を持っていない)将来の国民に負担を強制し、負債だけを残すことにしています。このやり方はルイ15世とそれほど変らないと思われます(ルイ15世はそのような酷いことを言わなかったとの説もあり、それが本当であれば、ルイ15世に申し訳ありません)。このようなやり方はいずれ限界を迎えることは明らかです。

 

一方の中国は、表向きでは国債などのツケを将来の世帯に押し付けることはあまりないが、環境・資源など、将来代々の中国人が生存する条件を酷く破壊してきました。中国食品薬品監督管理局の資料によれば、工場からの汚染された工業水や、化学肥料、農薬によって、河川、湖及び近海に深刻な環境汚染が起き、河川、湖については6割が深刻な汚染に侵されています。深刻な環境汚染、資源破壊は、償還金当てのない国債発行と同じく、将来の世帯へのつけ回しでしかありません。その意味では、今の中国の経済発展パターンも持続不可能と思われます。

 

ギリシャ財政危機を1つのきっかけに、世界範囲で株価がここまで下落したことは、市場参加者が金融危機を乗り越えたとしても、今までの経済発展パターンがここまま持続できるのかどうかという正体の知れぬ恐怖にとられているためである可能性があります。

 

このまま株価が下落していくと、近いうちに、景気の変調を示す経済統計が次々に発表され、相場のベア・マーケット入りにお墨付きを与えることになるでしょう。

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2010年5月19日 (水)

米株、中国株の行方:   呂 新一

まず、米国経済を見ると、ここ10年の間に、2回も大きなバブルをやりました。1回はITバブルで、もう1回は住宅バブルです。このことは、もしバブルがなかったら、米国経済が一時的なものにせよ、世界を魅了する盛り上がり、或いは輝かしい未来への憧れも演出できなかったかも知れないことを示唆しています。

 

ただ、バブルのお陰で米経済が最高のパフォーマンスを演出できたとしても、その後始末が大変厳しいものです。今回の住宅バブル崩壊で言うと、その影響で米国民の生活水準が元に戻れなくなり、そして、失業率は10%前後の高い水準で徘徊しています。

 

そして、ここ20年ほどのデータを見ると、景気が後退期から回復期に入った後の雇用回復は、毎回、前回に比べペースがゆっくりなり、雇用の増加数も減ってきています。このことは、米経済の雇用創出能力が落ちてきたことを如実に反映していると思われます。このような構図が今後も続くなら、今の米景気回復が力弱いものに止まる可能性が高く、そして、長期的に見ると、米経済はその優位性を失うことになります。

 

日本経済は、失われた20年に突入しましたが、アメリカ経済も株価だけで見れば、失われた10年に突入しました。そして、ITバブル崩壊による株価下落と今回の住宅バブル崩壊、リーマン・ショックによる株価下落を比べると、S&P500を例にすれば、ITバブル崩壊当時は、ピーク(2000/03/131464.17)からボトム(2002/09/30800.58)まで、26カ月で45.3%下落し、今回の住宅バブル崩壊、リーマン・ショックでは、ピーク(2007/10/081561.8)からボトム(2009/03/02683.38)まで、15カ月で56.2 %下落しました。言うまでもなく、今回の方はマグニチュードが大きい。言い換えれば、今回の景気回復が2002年当時より道のりが長く険しいものになる可能性があります。当時は、FRBが実質のマイナス政策金利を長期間放置し、住宅バブルを作り出し、その資産効果で景気回復を図りましたが、今回は、同じような手が使えないと思われます。というのは、バブルが膨らんでいき、そして崩壊の繰り返しに翻弄され疲れてきた米国民が、今回もFRBがバブルの発生を黙認ないし助長していることを察知したら、今度こそ、全ての怒りをFRBに向かって爆発するかもしれません。米議会も、FRBの責任を追及すると思われます。

 

このように、米景気回復が弱いものに止まる可能性が高いため、昨年驚異的な回復ぶりを見せた米株は、今年はそれほど高いパフォーマンスを見せてくれないと思われます。

 

また、当面の米株価動きについていうと、筆者は512日付けの本欄「ギリシャの財政危機とこれからの株価」において、以下のように述べました。「NYダウは暫くの間、4月26日に付けた高値と5月7日に付けた安値の範囲内で動く可能性が高い。そのうち、新高値を付ければ上昇トレンド入りとなるが、それが出来なければ、5月7日の安値を下回る可能性が高くなり、2月の安値が新たな下値サポートとなろう」。今のところ、NYダウは依然4月26日に付けた高値と5月7日に付けた安値の範囲内で動いています(下記チャート参照)が、一言だけを付け加えるなら、株価が2月の安値を下回れば、近いうちに2番底を作るより、下落トレンド入りする可能性が高く、警戒した方が良いと思われます。

 

Nydow

 

他方、中国株について言うと、筆者は428日付けの本欄「中国株  高成長≠高収益」において、幾つかの理由を挙げた後、「今後の中国株を展望すると、我々はそれほど楽観的になれません」と述べました。その後、中国上海総合株価指数は2,907から2,594へと10.8%も下落しました。ただ、今まであまりに急激に下落してきたこと、そして、2,600は重要なチャート・ポイントであることを考えれば、暫くの間、反騰ムードが続く可能性があります(下記チャート参照)。そして、より長期的に見ると、中央政府の政策が景気刺激から住宅バブル抑制・物価抑制に転換したため、中国株がより政策に左右され、昨年以上にボラティリティの高い展開を見せると思われます。

 

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2010年5月12日 (水)

ギリシャの財政危機とこれからの株価:  呂 新一

EU全体の経済規模に対し僅か2.5%しか占めていないギリシャの財政危機が、株式相場にこれほど大きな影響を与えた背景は、恐らく以下の点にあると考えらます。

 

1)ギリシャの負債額が金融危機の発端となったサブプライムローンの残高(約150兆円)より小さいとは言え、19988月にロシアが90 日間支払停止にした対外債務と、20024月にアルゼンチンが宣告したデフォルト債務の合計に匹敵する金額であり、決して小さな額ではありません。ロシアの債務支払停止が一世風靡の大手ヘッジファンドLTCMの倒産に繋がったことは記憶に新しい。

2)ギリシャの次は、伝染病にかかるように、ポルトガル、スペイン、イタリアなどが相次ぎ財政危機に陥ることは危惧されていました。

3)金融危機後の世界景気回復は、巨額な財政出動・資金(信用)供給の上に実現したものであり、ギリシャの財政危機は、このようなおカネの力で景気回復を図るやり方に警鐘を鳴らしています。言い換えれば、おカネ任せの景気回復が脆弱なものであることを喝破しました。

4)ギリシャなど財政が危機的な状態にある国の債務(国債)を抱えている金融機関が不信な目で見られ、市場が疑心暗鬼になり、十分な流動性が確保できなくなる状況も考えられました。

5)株式相場に過熱状態にあり、何らかのキッカケがあれば、株価が急落する可能性は十分にありました(4月7日付けの本欄「NY株式相場、一息いれますか?」を参照)。

 

そして、さらに深層にある背景は、ギリシャを含め、今、この地球で経済成長を図っている殆どの国が、外国からの投資かまたは国債発行かなどの形で、他人または子孫のおカネを使っていることです。例えば、日本は新規国債で予算を組み、アメリカは海外からの借金で国民の車買い替え・新規住宅購入を補助し、財政赤字を増やしてきました。このような状況はとても長く続けられるようなものではなく、大局的に見ると、世界経済が袋小路に入ったことも十分に考えられます。

 

これからのグローバル株価動向を考える際、我々は慎重的な楽観論者です。

 

まず、中国株はさらに下落する可能性が高い。過熱した経済をちょうど良い状態まで冷やし、バブル気味の不動産市場をソフトランディングさせることは決して容易に達成できる目標ではありません。それに、ここ数カ月、ユーロがドルに対し14%も下落した(昨年末:1ユーロ = 1.45ドル 現在: 1ユーロ = 1.27ドル)ことが、中国経済に深刻な打撃を与える可能性があります。中国は自国通貨をドルにほぼ連動させているため、最近のユーロ下落で人民元もユーロに対し約14%上昇しました。ユーロ圏が中国にとって最大の輸出相手であるだけに、ユーロ安による輸出への影響は大きいでしょう。

 

米株について言うと、今後、長期ブル相場を展開するには中身の伴う景気回復が不可欠であり、言い換えれば、雇用状況の改善がキー・ポイントです。ただ、製造業の空洞化を考えれば、雇用の改善が今後も非常に緩慢なペースに止まる可能性は高い。

 

また、米株の中短期動向について言うと、暫くの間、(NYダウは)4月26日に付けた高値と先週金曜日(5月7日)に付けた安値の範囲内で動く可能性が高い。そのうち、新高値を付ければ上昇トレンド入りとなりますが、それが出来なければ、5月7日の安値を下回る可能性が高くなり、2月の安値が新たな下値サポートとなろう。

 

そして、今回の救済措置にそれなりの効果があるかどうかの試金石は、米株よりヨーロッパの株、中でもギリシャへの貸し出しが多いフランスの株価動向と思われます。

 

さらに言うと、ユーロレートの変動は、今回の救済案の成否を測る基準になりません(例えば、ユーロの下落が救済案の失敗を意味しません)。というのは、今回の救済案はユーロを少し犠牲にしても、ギリシャを財政危機から救うことが先決であるという性格を持っているからです。

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2010年5月 5日 (水)

谷村新司の「昴」と万博後の中国:  呂 新一

今月1日、中国上海で行われた万博の開幕式で、谷村新司さんは「昴」を万国からの賓客に捧げました。それをテレビ中継で見た多くの中国人はたちまち谷村さんのファンになり、あるウェブサイトに載っている映像は、ただ今、クリック回数が107万を超え、コメント数も972にのぼりました。

 

コメントを1個1個読んでいくと、書いた人は青少年より中年の方が多いことはわかります。20年ほど前、「昴」が中国で流行っていたことを考えると、当時「昴」を聞いた人達は、今回、「昴」を再発見したということになります。

 

「昴」が再発見された理由はどこにあるのですか?

1人のファンは、こう言っています。「谷村さんが乾燥しきった中国人の心に春の雨のように潤いを与えてくれました」。もう1人のファンは、「谷村さんの微笑み、谷村さんの素朴さ、谷村さんの人間性に感動しました。それに対し、中国歌手は派手な服と華麗な踊りにばっかり力を入れ、魂のない演出を続いている」といったコメントを残しました。極め付きは、「今まで、(中国政府が提唱し続き、しかし)実現できなかった和楷社会(調和の取れた社会)は、谷村さんがステージに上がった途端、この会場で現実になりました」という中国政府をいら立たせるコメントです。

 

谷村さんの「昴」がここまで歓迎されたことは、これからの中国の行方を予想する上で、1つ大きなヒントになります。

 

日本は70年ん大阪万博の後、製品の質が飛躍的に向上し、新製品も沢山発明され、産業の高度化を成し遂げました。無論、中国は同じ道を歩みたいし、そうなる可能性も高い。ただ、谷村さんとその「昴」が中国人に大きな衝撃を与えたことから見ると、今の中国にもっとも必要なことは、経済成長というより、国民の心のケアということではないかと思われます。

 

ここで、最近、中国で起きた幾つかのことを見てみましょう。

 

過去40日のうち、今まで犯罪記録のない人が突然凶器を持って幼稚園または小学校に乱入し、子供たちを死傷させた事件が5件も起きました。筆者の出身地である江蘇省泰興市では、4月29日、失業中の40代の男性がナイフを持って幼稚園に乱入し、29人の子供、2名の先生、そして警備員1名を負傷させ、そのうち、5人の子供は重傷です。しかし、この事件は殆ど報道されず、翌日の地元新聞は、「貿易商談会を開く」などの“朗報”で埋め尽くされました。そして、いまだに、政府は治療情報を一切封鎖し、負傷した子供達の父母にも漏れないようにしています。

 

4月下旬より、北京市郊外にある16の町/村は、1か所か2カ所を除き、他の全ての出入り口が無期限に封鎖され、中に住んでいる人が外出したい時は指定された出入り口を通り、そして通るたび身分証明書を見せなければならなくなりました。そういった村には、遠い地方から、地元官僚の悪行を中央政府に直訴するために上京し、ここを臨時宿にしている人が多い。しかし、こういう人達はいま、21世紀の“ゲットー”の中に入れられました。

 

4月29日、中国共産党宣伝部の責任者で国務院新聞・ニュース事務室長でもある王晨氏が、人民代表会の常務委員会で、これからのインタネット管理方針を説明しました。その主旨は、今後、どなたも、ニュースを報道するサイト又は主な商業目的のサイトでコメントを発表する際、実名で登録しなければならず、実名登録するには、公民証番号を提示する必要があるとのことです。言い換えれば、近い将来、中国政府は国民の誰がどこのサイトで何を言ったのかを、全て掌握できるようになります。

 

また、ある調査によれば、中国の法定最低賃金額は、世界平均値の15%未満で、上から数えて158番目です。このことと、今、世界で最も奢侈品が売れる国が中国であるとのことを合わせて考えると、中国での貧富の差が深刻になっていることが容易に想像できます。

 

このように、万博で華麗な花火を打ち上げた中国ですか、経済発展、人民の生活向上を花火のようにならないためには、まず、国民の心のケアを大事にする必要があります。これは、谷村さんの「昴」が送ってきた大事なメッセージです。

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2010年4月28日 (水)

中国株 ― 高成長≠高収益:  呂 新一

経済の高度成長は、必ずしも高い株式投資収益率を意味しません。中国株投資をしてこられた方に、このような感想を持っている人は多いでしょう。

 

無論、より正確に言うと、高度成長は必ずしも株価の持続的上昇を意味しません。長期的に見れば、高度成長は高い株式投資収益率をもたらすが、投資するタイミングを間違えると、何年間は失望、落胆、我慢を強いられることになります。

 

2000年以降、中国の経済成長率は8%以上を保っています。しかし、中国株は2005年年末までの間、ずっと下落し続けてきました。その後、中国政府による非流通株改革が成功を収めたことで、株価がようやく上昇トレンドに入りました(最も、上昇トレンド入りした後、過去の遅れを急いで取り戻すように、上海総合株価指数は2年余りの間、6倍も上昇しました)。

 

そこで、昨年後半以来、中国株式投資は再び高度成長が必ずしも高収益を意味しない時期に入りました。このことについては、筆者はある程度予想していました。2009年の中国の高度成長は投資への依存が異常に突出し、質の良い、持続できる成長とは言い難いと言い続き、そして、20091230日付けの本欄2010年の中国―物価上昇抑制と株価」において、「仮に政府が固い決心をし、金利などの政策手段を用いて物価上昇、住宅価格の高騰の抑制に乗り出すと、少なくとも短期的に中国株が強い押し下げ圧力を受けることになると思われます」と書きました。今は、まさにこのような状況です(下記チャート参照)。

 

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今回の株価下落は、不動産株がリードしています。下記チャートは不動産開発大手“万科”の株価推移であるが、昨年12月以降下落し続き、中央政府が住宅価格抑制策を発表した後、下落ペースをさらに速めました。

 

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中国政府による住宅価格抑制措置は、不動産開発業者に膨大な資金を注ぎ込み、住宅ローンの貸し出しに積極的であった銀行も直撃し、銀行の株価がここにきて大幅に下落しました(中国農業銀行が20日に大掛かりなIPOを発表したことも銀行業株価を押し下げた一面があります)。次のチャートは大手銀行である工商銀行の株価推移です。

 

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今後の中国株を展望すると、我々はそれほど楽観的になれません。と言うのは、中国経済が第1四半期に11.9%も上昇したので、通年8%の成長という目標を掲げた政府にとって、当面、政策の中心を経済成長から過熱抑制、不動産バブルのソフトランディングにシフトする余裕ができました。言い換えれば、抑制的な経済・金融政策は当面続く可能性が大きい。

 

そして、厄介なことに、今の中国は市場機能を通じて住宅価格を調整する手段はまだ整えていません(他の国が整えているとも言いにくいですが)。そこで、政府が何でもかんでも目標を実現したいなら、最終的に強制的な行政手段に出る可能性があります。言い換えれば、今回の住宅価格抑制は、完全に失敗に終わり、住宅価格がさらに上昇するのか、又は住宅価格が急落し、実体経済に深刻な打撃をもたらすのか、のどちらかになり、うまくソフトランディングすることは難しい。前者であれば、中央政府のメンツが丸つぶしになりますが、後者であれば、株価はさらに下落することになります。

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2010年4月21日 (水)

中国の住宅市場 ―― 複雑怪奇な現状を映し出す鏡:  呂 新一

今週に入ってから、中国の不動産関連株が急落しています。月曜日(4月19日)に5%超下落し、火曜日(20日)も3.6%ほど下落しました。その背景は、中国政府が、最近、発表した一連の住宅価格抑制政策と思われます。

 

中国政府が発表した一連の政策の着眼点ははっきりしています。セカンド・ハウスの頭金比率を50%に引き上げ、サード・ハウスには住宅ローンを提供しないなど、投機手段になることの多いセカンド・ハウス、サード・ハウスの取得制限を中心に置いています。

 

ただ、中国の住宅市場現状は、今の中国社会の特殊性・複雑さの現れであり、中央政府の号令1つでバブルが鎮静化するとは考えにくい。以下は、中国住宅市場の特異性について、数点を挙げて見てみることにします。

 

一、中国政府と地方政府との矛盾

中央政府は国民の不満を解消するため、安定した住宅価格を目指していると見られます。一方、各地方政府にとって、占有している土地を高値で売却することは、財政収入増に繋がると同時にGDPの数字造りに役立ち、まさに一石二鳥です。そのため、多くの地方政府は色んな名目で土地開発し、土地の転がしに乗り出しています。

地方政府の土地転がしが民間住宅の強制取り壊しに繋がり、それゆえ、住民たちの反発も激しさが増してきています。

下記の写真は、広西チワン族自治区北海市の農民たちが政府の強制取り壊しに反発し、自分達はもう“死を覚悟した上で戦うつもりである”との意味で、棺を買って、「政府が法を犯しても構わないなら、我々もこの命は要らない」との横断幕を掲げた光景です。

 

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仮に、今後、中央政府が発表した政策の効果で住宅価格が下がり、地方政府の財政が窮地に立たされることになれば、地方政府と中央政府との矛盾が先鋭化する可能性はあります。

 

二、幹部と普通の人との間の格差

報道によれば、汚職または管轄する企業、地域からの貢ぎで富をなし、数軒、ないし十数軒以上の住宅を持つ官僚は少なくありません。

また、最近、一部の中央官庁ならびに北京地方政府が、職員に市場価格の1/10/8程度という破格な値段で住宅を支給していたことが暴露されました。

また、欲に限りがないとのことで、一部の地方では、経済的に余裕のない家庭を対象にした経済型住宅も内装を密かにグレードアップして公務員達に分けました。

このように、幹部、公務員が“住宅持ち”であることで、不動産バブルを抑制する1つ有力な手段である「固定資産税」徴収がいつ経っても始まりません。

 

三、金持ちとそうでない人を分ける溝

今の中国にはまだ差別意識が強く残っています。住宅市場においてもそれが見られます。例えば、豪邸を宣伝する広告に、堂々と「この豪邸はあなたがエリートになった証明である」と大きな字で書いてあります。

住宅価格が高騰し、普通の人はますます買えなくなったが、一方、このことは複数の住宅を保有している富裕層にとって単に富の増加を意味しています。

言い換えれば、住宅価格の高騰が、貧富の差を広げ、階級固定化に繋がりかねません。

 

四、農民と都市部住民を分離させる「ベルリンの壁」

都市部で平気で1平方メートルが2万元(日本円で約三十万円)もする住宅は、月当たりの収入が100元(日本円で約1,500円)程度の農民から見ると、とても買えるようものではありません。

この現状が続くと、中国の都市化、現代化プロセスはかなり遅いものになります。

 

五、投資手段が欠如していることの表れ

投資手段が欠けている中国で、不動産が絶好の投資対象になりました。

最近のある調査では、全国660の都市で、連続6ヶ月間、電気を使った痕跡がまったくない住宅が6,540万軒もあります。言い換えれば、6,540万の世帯が住めるほど膨大な数の住宅が単に投機のために購入された可能性が高い。

また、報道によれば、中央政府が住宅価格抑制政策を打ち出したことで、深圳市では、ある個人が投機のために購入した680軒の住宅を一気に売りに出しました。この例から見ると、今までの住宅投機熱は中途半端なものではありません。

 

六、経済成長と社会安定との矛盾

中国政府は、GDPの8%以上成長を至上命令としています。住宅価格がここまで高くなった1つの理由は、昨年の緩和的な金融政策と4兆人民元にのぼる財政刺激策と思われます。その意味では、先行き、万が一、住宅価格抑制政策が経済成長を妨げることになれば、中央政府が再び舵取りを修正する可能性もあります。

 

こうして見ると、中国の不動産バブルのソフトランディングが非常に難しい。

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2010年4月17日 (土)

将来への希望:  呂 新一

人間にとって、最も恐ろしいことは、今、置かれている現状が厳しいことではなく、将来への希望が見えないことでしょう。現状とこれからの方向、この2つがキー・ポイントです。

 

いまの中国で、社会安定を脅かしているのは、格差が凄まじいスピードで拡大し、階級が固定化しつつあることです。多くの若者が将来に絶望し、世界に類の見ない高成長の中で、ドリームを持てなくなっています。

 

中国語には、「哀莫大于心死」というのがあります。即ち、希望を持てないことほど、悲しいことない。

 

若者が希望を持てないとすれば、社会構造に問題があるのではないかと思いたくなります。

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2010年4月13日 (火)

中国人民元切り上げについてのQ&A:  呂 新一

今朝、日経CNBCに出演し、中国人民元についてコメントさせて頂きました。

 

その主な内容をサマリーしてみると、以下のようになります(ただし、時間の制限で一部説明できなかったことをここで補足しました)。

なお、Qは日経CNBCキャスター、Aは筆者

 

Q:中国政府は人民元改革をどう見ていますか?

A:察するに、中国政府は自国通貨について、ゆくゆくその国際化、即ち、世界で信用され、強い通貨になることを狙っています。そして、中国の経済発展について、産業構造を現在のローテク/労働密集型からハイテク/資本密集型に転換することを考えています。言い換えれば、日本みたいに技術立国を目指しています。人民元が緩やかに高くなることは、この2つの目標に合致しています。

ただ、産業の構造を転換させると言っても、技術が一朝一夕で生まれるわけではないので、転換に時間がかかります。そこで、緩やかな人民元高はローテク産業に転換・脱皮への圧力をかけると同時に、転換のための時間も与えます。その意味では、人民元高のペースが緩やかでなければなりません。

 

Q:人民元切り上げのデーはいつですか?

A:市場にその正確な日にちを予測できないようにするのは、中国政府のつとめであり、腕の見せる所です。

 

Q:一気に切り上がるやりかたと変動幅を拡大するやりかたがあって、どっちが採用される可能性が高いのですか?

A:アメリカに言われたので、人民元をデジタル的に切り上げ、そして、来年になってまたアメリカに言われ、またデジタル的に切り上げ、そのようなことをしていたら、中国の自主権は完全に無くなります。従って、(人民元の)変動幅を拡大して、その範囲内で時には政府が自らの意向で人民元レートを誘導することは、固定レートにしておいて、時にデジタル的な切り上げをするよりも、市場原理に近い上、中国の自主権も確保し易い。従って、変動レンジ拡大の方は採用される可能性が高い。

ただ、アメリカ側の不満があまりにも大きく、変動幅拡大だけではとても収まらないと中国政府が判断すれば、デジタル的な切り上げと変動幅の拡大を同時に行う可能性があります。ただ、その際も、切り上げ幅は小さなものに止まると思われます。

 

Q:年末までの中国人民元上昇幅をどう見ています?

A:1%-3%の上昇と見ています。と言うのは、2005年7月当時、中国が人民元の改革に着手する時から、今まで約5年の間、中国人民元は約15%上昇(1ドル=8.11人民元  1ドル=6.825人民元)しました。平均すると、1年間約3%の上昇でした。もっとも、リーマン・ショック以降、中国政府が人民元レートを固定したことを考えると、(金融危機を除いた)平時の年間上昇率が3%を超えましたが、アメリカの景気がまだ完全に回復していないため、3%の上昇は1つの限界でしょう。

 

Q:国民党が共産党に敗れたのも、天安門事件が起こったのも、背後にインフレの高進がありました。中国はインフレ抑制のため、人民元をもっと高くすべきではないのか?

A:確かに、歴史はそうなっています。ただ、今の中国は、インフレがそこまでのリスクになっていない上、インフレを抑制するには、主に金融政策を使うべきで、通貨政策は補助的な役割しか果たせません。

 

Q:3%程度の人民元切り上げで、アメリカの議員は満足しますか、議員の中で40%の切り上げを求める人もいますが。

A:そういった議員達の過激な要求は、地元選挙民に向けたポーズでしょう。そもそも、中国から輸入する多くの製品はもうアメリカで生産していません。人民元が高くなったことで、輸入先が中国から東南アジア、或いは他の地域にシフトするだけです。雇用はアメリカに戻ってきません。アメリカの議員もそういうことは分かっています。

その上、中国と長年、色んな分野について交渉したことで、アメリカの議員達は中国が何でも聞いてくれる国ではないことも認識したと思われます。

さらに、過去5年間、中国人民元は15%しか上昇していませんでした。そこで、今、一気に数十%切り上げれば、中国経済そのものが崩壊する可能性はあります。そうなったら、アメリカにとっても何も良いことがありません。

CNBC):そうですね。アメリカと中国は既に持ちつ持たれつの関係になっています。朝鮮半島の核問題で中国に議長国になってもらい、イランの核問題もあります。

 

Q:何%ぐらいの上昇であれば、中国国内企業は耐えることができるのでしょうか?

A:中国政府が最近、行ったアンケート調査(ストレステスト)で、企業側からの回答は1%-3%の範囲内に集中しています。それをさらに詳しく見ると、紡績など付加価値の低い産業、中でも特にマーケットシェアが小さい中小企業の方は、耐えられる上昇幅の上限が低い。一方、こういった企業ほど、技術革新、他業種への転換などは図りにくい。その意味では、中国政府は、大企業よりも労働力の受け皿になっている中小企業のことを考え、できるだけ人民元の上昇ペースを抑制していくと思われます。

最も、時間が経つにつれ、中国企業の対応力も高くなっていくでしょう。

 

Q:人民元の切り上げは、円高を誘発するでしょうか?

A:人民元切り上げが発表される瞬間、同じアジア通貨、同じく対貿易黒字を積み上げた国の通貨として、円が連れ高になる可能性はあります。

ただ、長期的に見ると、もし、米政府・議員が主張しているように、人民元切り上げで米国の貿易収支が改善するなら、いずれ、米ドルが強くなり、円が米ドルに対して弱くなる筈です。

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2010年3月31日 (水)

中国人民元問題をもう1回考える: 呂 新一

去年の後半辺りから中国人民元の交換レートを巡り議論が盛んになり、そして、今月15日にアメリカの超党派議員130人がガイトナー財務長官とロック商務長官に書簡を送り、中国の「為替操作」問題への対策を直ちに講じるよう求めたことで、人民元問題が一気に緊迫化しました。

 

では、人民元問題は果たしてどうなるのか、解決策があるのか、こういった疑問に答えるため、現状を整理してみる必要があります。

 

一、いま、中国では人民元の切り上げに反対する声が強い

人民元の切り上げに反対する理由はさまざまであるが、もっとも強硬でありかつ広く受けいれられたのは、米国の陰謀論です。即ち、米国が中国の経済発展を脅威と受け止め、かつて日本に対してしたと同じように、中国経済を崩壊させ、自国の優位を保つために、人民元高圧力をかけているとのことです。この見方をしていれば、米国がどうなことを言っても、中国は現行の人民元レートを死守するべきであり、妥協の余地は一切ありません。

2番目に多い理由は、人民元切り上げによってもたらされる実害についての想定です。例えば、人民元高になれば、ホットマネーがこれまで以上に中国に流入し、資産インフレを招きと同時に、人民元高で輸出が落ち込み、雇用が大きな問題になる恐れがあるなどなどです。

そして、3番目に見られる理由は、主に心情によるものです。例えば、人民元は中国の通貨ですので、人民元のレートについて、中国が主導権を握るのは当たり前のことであり、米国の国内政治に利用されたくないとの考えです。

他方、米国内の議論を見ると、人民元切り上げを求める理由は、純粋に経済理論に従う結論から、雇用市場を守るための視点までさまざまです。ただ、中国に見られるような、戦略的なレベルまで高め、そうでなければ米国経済が中国に負けてしまう議論はあまり見当たりません

 

二、切り上げをしたらどうなるのか

中国にとっては、人民元を大幅に切り上げると、輸出が落ち込み、玩具・紡績品など付加価値の低い製品を生産している中小企業が大量に倒産し、その結果、労働市場が大きなダメージを受けると思われます。

他方、アメリカから見ると、人民元が高くなれば、安い製品の輸入先が中国からほかの発展途上国に変わるだけで、貿易赤字はそれほど減らないと思われます。そもそも、前世紀70年代からアメリカの製造業の空洞化が既に始まったので、サプライヤー・チェーがきれいになくなった今、人民元高との理由だけで、製造業を呼び戻すのは容易ではありません。その意味では、人民元の切り上げで雇用回復を期待していた人達は肩透かしを食らう可能性は高い。

 

三、人民元は安くない

米国の政治家は好んで人民元が不当に安く放置されていると言います。しかし、アメリカに輸出された中国製品が安い理由は、人民元が安いというより、本来、製品コストに反映されるべき環境汚染、資源の消耗、地代、そして出稼ぎ労働者の厚生福祉などが、十分に反映されていないためであり、その上、中国政府が輸出を奨励するため、輸出企業に付加価値税の還付を行っているためです。

言い換えれば、中国製品の輸出価格競争力は人民元安より、中国国内の環境、資源、労働者、そして政府の財政に重い負荷をかけたことからきています。

 

四、当面切り上げはない

世界経済がまだ不安定である現在、米国は経済面での相互依存関係を深めている中国をこれ以上刺激しないため、来月中旬に発表される財務省為替政策報告書で、中国を為替操縦国に指定しないと思われます。

他方、中国から見ると、最大の輸出先である米国との貿易摩擦を緩和するため、将来的にある程度の人民元切り上げは止むを得ないと考えている可能性が大きい。そのベストタイミングは、米国からの切り上げ圧力が弱まり、かつ米景気の回復が顕著で輸入品に対する価格弾性値が低くなった時です。そして、切り上げ幅は非常に小さなものに止まる公算が大きい。というのは、仮に人民元を大幅に切り上げすれば、世界中に、中国は米議員の言う通り、“人民元を操作している”と認めることになるからです。

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