日本の財政赤字と新しい経済成長の可能性: 呂 新一
ギリシャで起きている財政危機は日本にとって良い“wake-up
call”になりました。
日本は、国と地方の財務残高がGDPの約1.8倍にのぼり、先進諸国のうち最悪の部類に入ります。ここまで巨額な累積債務を抱え込んだ最大の理由は、ここ十数年経済があまり成長しなかったためと思われます。事実、今の名目GDPは1993年とそれほど変わらず、言い換えれば、日本経済は1993年から成長しませんでした。
成長しなくなった経済において、需要を維持する一方、拡大する社会保障支出の穴を埋めるため、建設国債と赤字国債を発行し続き、累積債務の拡大に繋がりました。
日本経済が成長しなくなった理由について、詳細な分析が必要であるが、筆者は以下の3点が看過できないと思っています。
1)少子高齢化の進行。人口が減り始め、リスクを取れる人が少なくなっていくことは、需要の委縮と社会の活力の低下を意味し、経済成長にはマイナスです。厄介なことに、少子高齢化の進行は止めにくい現象であり、現代社会の一種の持病であるとも言えます。
2)他国の追い上げもあって、世界においてリーディング産業が減ったことです。かつて日本の電機産業は世界を君臨していましたが、今はその面影は全くありません。そして、自動車産業もトヨタの大規模なリコールとアメリカビックスリーの復活で、絶対的な優位性が揺らいでいます。このように既存産業は地盤を失いつつある一方で、残念なことに、アメリカのように、ITなど新しい産業において優位性を樹立できずにいます。少しくらい想像してみると分かるが、グーグル、或いはアップルのような会社が一社でも日本企業であれば、日本経済に測りきれないほどポジティブな影響を与えると同時に、日本人の精神状態、将来への希望は全く違うものになっていると思われます。その意味では、日本の風土が、現代社会に生きる人間の心理をつくアイデア、そして冒険心に富む新しい企業に適応するようにある程度の変身を遂げる必要があります。
3)グローバル経済の流れに乗り遅れたこと。この点は、世界を舞台に活躍する韓国企業と比べると分かりやすいと思われます。その理由は、国内マーケットが縮小しているとは言え、依然、サイズとしては非常に大きいであること、そして、企業の内なる国際化がまだ十分でないことにあると言えます。1つの例を言うと、中国に進出した日系企業の現地事業利益率が平均して欧米系よりずっと低い。その理由の1つは、今まで、現地子会社への権限委譲が十分ではないことにあると言われています。事実、トヨタはアメリカで起きた大規模なリコールを受け、現地子会社への権限委譲をいまより進むことを決めました。
公的債務がここまで膨らんだ最大の理由が、ここ十数年経済があまり成長しなかったことにあるとすれば、債務削減のため、増税と支出カットのほか、経済成長への道のりを真剣に模索しなければなりません。
少子高齢化が進んでいる日本が経済成長を目指すと言うと、不可能と思われるかもしれないが、実際、少子高齢化が進行しても、医療産業、介護産業、そして文化産業などの発展余地は殆ど影響をうけず、着眼点によっては発展余地がさらに大きくなったことさえあると思われます。
そして、あまり言われていないもう1つ発展の可能性は、輸入代替産業(事業)の進行です。日本はエネルギーと食糧の海外依存度が高い。そこで、地域ごとに循環型の産業・事業が新しい現実、新しい技術・発見の支援を受け、大きくなれば、輸入代替効果で経済が成長し、雇用チャンスも大きく増えることになります。
言い換えれば、新しい時代に新しい成長のチャンスがあり、それをうまく掴んでいれば、累積債務の軽減はだいぶ楽になると思われます。
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