日本株

2010年12月27日 (月)

超長期波動 : かかし

 「野村雅道と楽しい投資仲間たち」への投稿は今回が最終回となります。

 読者の皆さま、この2年間大変にありがとうございました。野村さん、このような楽しい企画に参加させていただいて、とても感謝しております。投資仲間の方々。とても貴重な情報を山のように頂戴してお礼の言葉もありません。世界を見る目が大きく広がりました。

 最終回ということで、今後の株式投資について考えておきたいと思います。

 結論を先に申し上げておくと、株式市場の重大な影響を及ぼすさまざまな波長の経済波動は、そろって上昇に向かうと見ています。

 まず、鉱工業の在庫循環モメンタム。在庫の変動によって引き起こされる景気の短期的な波動です。

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 在庫循環モメンタムは急速に下落しています。同時に、あと僅かで底打ちに転ずる可能性も見えてきました。おそらく来年の春先、2月か3月には底打ちとなりそうな気配です。

 次に建設サイクル。20年程度に及ぶ、景気の長期的な波動を牽引します。住宅着工件数の推移を見ると、姉歯事件をきっかけとする改定建築基準法の施工やリーマンショックによるダメージからようやく脱却しつつあるようです。

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 そして、60年という超長期の経済波動も、世界的な経済・金融不安による影響はありましたが、本来の上昇基調に復帰すると見られます。

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 注目しているのは、超長期波動です。幕藩体制の終焉という江戸末期から明治維新にかけての大混乱期、原爆により灰燼に帰した軍事主導の政治経済システム。そして、江戸末期から数えて3回目の大底から、ようやく脱却に向かっているというのが現状であるようです。

 江戸末期から数えて僅か3回しか経験していない大底期からの離陸です。

     

進む高齢化、ほぼ空白状態ともいえる国内政治の惨状、見えない経済発展への道筋等々、悲観的な要素を挙げればきりがないのですが、冷静に見れば大底期とはこのようなものなのだと思います。

 幸い、2011年は様々な波長の景気波動が好転しそうです。おそらく、超長期波動の上昇局面を担うさまざまな要因が浮かびあがってくると考えています。それをじっくりと見極めながら、株式市場を追いかけていきたいと思っています。

 それではよいお年をお迎えください。

 私のブログである「スケアクロウ投資経済研究所」は今後も続けますので、もしお時間があれば、ご参照いただければと存じます。

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2010年12月20日 (月)

セクター・ローテーション  :  かかし

 総集編の2回目として、セクター・ローテーションについてお話してみようと思います。

為替は、野村さんがかねがね強調されているように、癖のある動きをします。一方、株式は経済の動きをかなり合理的に織り込んで変動します。

 ところが、株式投資は単純あるいは簡単という話はほとんど聞きません。そうであれば、皆が株式投資に向かっているでしょう。投資は勝負ですから、あくまで勝てる土俵でやるべきだからです。

 私は30年近くアナリストという仕事を続けてきたのですが、初めのころは推奨銘柄がことごとく外れ、株には才能がなさそうだということで、やめようと思った時期がありました。

 その苦しい状況の中で、使い始めたのが在庫循環モメンタムという指標でした。出荷金額の変化率から、在庫金額の変化率を差し引いただけの簡単な指標です。しかし、変化の勢い(モメンタム)が指標に反映されるので、一般的な景気認識よりも早目に動きをつかむことができます。

 そして気がついたのですが、要はタイミングだったのです。しかし、この指標がなければこんなに長く株式投資の世界には生存できなかったような気がします。

 そこで、前回のピーター・ナバロ教授の図を思い出してください。

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 良く見ると、景気の山谷に比べて、株価が一足早く動いています。教授はこの時間差について特別な説明を加えていないのですが、実は在庫循環モメンタムを用いることでそのギャップを埋めることができるのです。

 株価あるいはマーケットの動きと、経済の動向の合理的な関係が把握できると、経済の局面に対応して特徴的な動きをする銘柄群が浮かび上がってきます。景気変動を繰り返すたびに似た動きをしてくれるので、株式投資戦略を考えるときに、とても好都合です。

 今日は詳細にお話しする余裕はありませんが、在庫循環モメンタムとその局面に応じたマーケットの特徴を次のように考えています。このようなアプローチがセクター・ローテーションと呼ばれるものです。

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 在庫循環モメンタムの下落局面では、電力などの景気抵抗力が強いディフェンシブ株が活躍する傾向があります。

 反対に、在庫循環モメンタムが上昇するときは、利益成長性の高い業績株が目立って上昇するようです。以前はハイテク株が代表的でしたが、中小型株を含め幅広い銘柄群が活躍します。ポイントは利益成長です。

 実は、株式投資として最も魅力的なのは、在庫循環モメンタムが停滞局面から抜け出して、上昇に転じる時です。景気敏感株と呼ばれる銘柄群が著しい上昇を見せる傾向が強いようです。出発点の株価水準が低いことが、高い株価パフォーマンスの重要な理由の一つであるようです。

 景気敏感株であれば何でも良いというわけにはいきませんが、幸いセクターごとの意在庫循環モメンタムを手軽に作成できますので、それを確認しながら動けばいいわけで、カンや運に頼る必要は薄いようです。

 在庫循環モメンタム意外にも、株価をうまく説明する指標を探し出すのも、投資の醍醐味の一つでしょう。

   原油価格――――国際石油開発などの石油関連株

   金価格―――――住友金属鉱山などの産金株

   国際商品指標――総合商社株

   長期金利――――銀行株

 以上はほんの一例ですが、このような切り口でマーケットを見ると、株式投資の楽しみが増すようです。

 一昔前は、株式投資で売りから入るということが簡単にはできなかったので、買ったら上昇してくれないと話にならないという見方が多かったようです。買うだけと言うなら、その見方は正しいのですが、以上のように循環をとらえて適切に売りと買いを繰り返せるなら、その必要はなくなりました。大切なのは株式市場の合理的な動きであって、上昇を続けなければいけないということではありません。

 今日の話のおしまいに、現在の日本の鉱工業全体の在庫循環モメンタムの図を入れておきます。

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 来年のかなり早い時期に底打ちに転じそうな様子です。

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2010年12月13日 (月)

マクロウェーブ・インベストメント : かかし

 読者の皆さま、2年間どうもありがとうございました。

そして、野村さん、楽しい投資仲間たちの皆さま、このブログのタイトルの通り、楽しく参加させていただいたことをとても感謝しております。

 私の投稿も残すところあと3回。 そこでNHKではありませんが、3回にわたって総集編として、私の投資に対する基本的な見方をお話ししてみたいと思います。

 2年前、リーマンショックから日も浅い2008121日に書いた最初の記事とタイトルは「嵐の船出!?」。その時のメモを読み返すと、最終的には本文から削除してしまいましたが、サブタイトルとして「後に待つのは台風一過の青空か?」としていました。もっとも、状況はさらに厳しいものになりましたが・・・

 そして、翌年2009216日から何回かにわたって「次の一手を考える」というタイトルで、マーケットの底打ちについてお話ししました。幸いマーケットは3月を底に大幅な上昇に転じました。

 しかし、2009年の暮れ、1221日には、「来年の株式市場は?」というタイトルで、2010年後半のマーケットが大きく悪化する可能性を指摘しました。振り返れば、91日には日経平均株価が9,000円を割り込み、8796.45円をつけるなど厳しいマーケットでした。

 ところが、その厳しいマーケットにもかかわらず201096日には「2011年の株式市場を読む」と題して、かなり大きな回復を予想しています。結果をこのブログでご報告できないのが残念ですが、ぜひ来年を楽しみにしていただきたいと思います

 振り返れば、マーケットの厳しい局面が長く、私の投稿記事のタイトルには、「注意報」だの「警戒警報」だの「徐行運転」だの、何ともつまらないものが並んでおり、恥ずかしい限りです。まるで戦時中の新聞です。

 そして、来年は戦後の復興期を感じさせる雰囲気が漂いそうです。「銀座カンカン娘」や「東京ブギウギ」が流れそうです。これらに曲がピンとくる人は「ALWAYS 3丁目の夕日」世代ですね。

 今日は前置きが長くなってしまいました。細かい話は次回にさせていただきますが、最も重要なポイントは、株式が経済の体温計であるということ。

 デイトレードで超短期に株価を追っていれば、ほぼランダムな動きですから、テクニカル分析を中心としたアプローチが中心になります。もちろん、これはこれで非常に重要なことで、私も楽しんでいるのですが、経済の動きを把握して株式市場を見ると、一段と深い楽しみ方ができるということを強調しておきたいと思います。

 経済の動きと株式市場を関連付ける投資手法は「マクロウェーブ・インベストメント」と呼ばれています。

 このアプローチによる代表的な著作としては、カリフォルニア大学のピーター・ナヴァロ教授が書いた「ブラジルに雨が降ったらスターバックスを買え」(ダイヤモンド社 2002年)があります。教授の考え方を図解したものが次に示す図です。

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 私自身もこの投資スタンスを重視しており、同様なものを作成していますが、それは次回にご報告したいと思います。

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2010年12月 6日 (月)

11月の米国雇用統計の影響に注目! : かかし

 先週の日経平均株価は1.38%と小幅でしたが上昇しました。これで5週連続の上昇となります。

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 11月に入ってからの日経平均株価の上昇率は11.2%。ダウ平均株価は2.3%の上げにとどまり、上海総合指数は6.9%下げていますから、日経平均株価の好調さが目立ちます。

 日足で見ると、1130日に円高と上海総合指数の急落を受けて1.9%下げたほかは堅調な動きを見せています。

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 そこで、今後はどのような展開になるのでしょうか? 果たして、堅調な動きが続くのか?

 結論として続くと思います。ただし円高が上値を抑えるため先週に続いて小動きと見ています。

 なぜ堅調と見るのか? 米国株式市場の底堅さが最大の理由です。ポイントは先週金曜日の11月雇用統計発表を受けたダウ平均株価の反応です。

 期待を大きく下回る雇用統計の発表直後にドルが急落しました。

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 GLOBEXのダウ先物価格も急落となっています。

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 ところがその後にスタートしたダウ平均株価が、下げるどころか0.17%上昇して大引けを迎えました。

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 なぜか? 経済の先行きに対する懸念より、量的金融緩和政策の維持・拡大に対する期待が上回ったためと考えています。(スケアクロウ投資経済研究所「米国マーケットを振り返る」)

 とすれば、皮肉ですが、米国経済が弱いほうが米国株式市場には好ましいということになります。米国経済の回復基調が鮮明になれば、FRBの量的金融緩和政策が適切であるかどうかに疑問が出てきますし、政策の縮小を余儀なくされる可能性も出てきます。

 そこで、3日に発表された10月の製造業受注統計を用いて米国製造業の在庫循環モメンタムを作成してみると、幸か不幸か、かなり下落しています。米国景気はコンセンサスとは異なって、悪化が鮮明であるということです。FRBの判断が基本的に正しいということになります。

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 この在庫循環モメンタムとダウ平均株価との連動性はかなり高いのですが、8月以降は乖離が進んでいます。景気指標の悪化にも関わらず、株価が上昇しています。印象論ですが、この乖離が流動性の供給によるマーケットの底上げ部分と考えています。

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 したがって、もし景気回復が確認されて、金融緩和政策が縮小・停止という事態になれば、ダウ平均株価には強い下げ圧力が顕在化することになると見られます。

 ということで、米国株式市場は当面は金融相場に支えられた底堅い展開が期待できそうです。日経平均株価にとっても好ましい展開です。

 しかしながら一方で、ドル安円高の動きが上値を抑える可能性が高いことから、日経平均株価は小動きと判断しています。

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 為替の動き次第では軟調な局面もあることに警戒しながら臨む必要があると考えています。

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2010年11月29日 (月)

今週の日経平均株価は小動きか? : かかし

 先週の日経平均株価は0.17%と小幅ながら上昇しました。これで4週連続の上昇となり、11月に入ってから9.7%上げたことになります。

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 一方で、先週のダウ平均株価は1%下落しました。11月は現在までのところ0.29%下げています。

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 この結果、日米の株価乖離は着実に縮小しています。そして、ドル円の動きとの連動性の高さも維持されています。日経平均株価が、国内要因に関係なく、ダウ平均株価と為替の動きだけでほぼ決まってしまうというのは情けない気もしますが、これが現実の姿です。

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 さて今週の日経平均株価はどうでしょう? 結論は小動きと見ています。

 まず先週の動きを日足で見ると、月曜日の0.93%の上げが最も大きく貢献しました。その背景は、アイルランドがEUIMFに支援を要請したことから、欧州の財政問題に対して楽観的な見方が広がり、ユーロ高円安が進んだことでした。

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 その欧州が再び怪しい雰囲気です。先週金曜日のアイルランド銀行のADR8.86%の急落を見せています。引け後の時間外取引では3.47%戻してはいるものの、予断は許さないようです。

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 加えて、ダウジョーンズ・スペイン株価指数が1.88%下げました。アイルランドの情勢が飛び火したように見えます。

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 ならば米国は? ブラックフライデーの好調な小売動向に対する期待から、楽観的な動きが見えました。メイシーズが0.42%上昇して、引け後の時間外でもさらに0.19%上げています。

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 消費への期待が大きい一方で、気になるのは24日(水曜日)に発表された10月の耐久財受注の動き。頭打ちが鮮明です。

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 この耐久財受注統計に含まれる出荷と在庫の数字から作成した耐久財在庫循環モメンタムは-0.18%と、とうとうマイナスに沈んできました。

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  耐久財受注統計は、123日に発表される10月の出荷・在庫・受注統計の一部を事前に公表したものですから、かなり高い確率で全製造業在庫循環モメンタムもマイナスに転じると推測されます。9月までは次のような動きでした。

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 ダウ平均株価を日足で追うと、すでに頭打ちが鮮明ですが、この状況には変化がなさそうです。

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 このような局面を反映して、長期金利の上昇も止まり、それに連動するようにドル高円安の動きも止まっています。

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 以上の展開を合わせて考えると、日経平均株価の上値は重いと考えられます。ただし、欧州の財政問題や朝鮮半島の情勢が大きく動いてダウ平均株価が急落するようなことがない限り、下値も限定的と思われます。

 以上から、日経平均株価は小動きと想定しています。

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2010年11月22日 (月)

QE2後のマーケットを考える(その3) : かかし

 先週の日経平均株価は3.06%上昇しました。ダウ平均株価が僅か0.10%の上げ、上海総合指数は3.24%の下落でしたから、日経平均株価の上げの大きさが目立ちました。 

 しかも、いつもは日経平均株価に大きな影響を与えるダウ平均株価やドル円の動きを無視するかのような展開が見られました。

 そこで今日は、果たして日経平均株価が、ダウ平均株価やドル円の動きに影響されることのない、これまでとはまったく異なる上昇局面に入ったと言えるのかどうかを考えてみたいと思います。

 結論を先に申し上げておきます。3点です。(1)そのようなことはない。(2)米国株式市場に比べて大きく下振れしたことの反動による水準訂正が大きかったが、その動きは既に完了した。(3)今後さらに円安が進めば、日経平均株価も上昇する。もし1ドル91円程度になれば、日経平均株価は11,000円程度に。結論は以上です。

 それでは定例のご報告から。

 日経平均株価は3.06%の高騰となりました。

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 日経平均株価が上昇する一方で、ダウ平均株価は小幅な上げにとどまったことから、日米の株価乖離は縮小しています。

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 日米の株価乖離はこのようになっています。

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 1週間の動きを日足で追うと、木曜日の大幅な上げが目立ちます。前日のダウ平均株価が0.14%下落したにもかかわらず、日経平均株価は2.06%上昇しました。そしてこの日は対ドル円高の進行を無視するかのような展開でした。

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 そこで、先ほどの日米株価乖離とドル円の動きを重ね合わせてみます。非常に高い連動性が維持されています。

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 ということは、米国株式市場やドル円の動きとは異なる上昇局面に入ったとは言えないということになります。

 最近の動きを良く見ると、日経平均株価のもっとも大きな上昇要因は、10月末から114日までに見られた、日経平均株価のダウ平均株価に対する下振れの反動による水準訂正の動きであったことが鮮明に浮かび上がります。

 しかも、重要な点は、その水準訂正は既に完了して、日米株価乖離がドル円に連動する局面に再び入ったことを示しています。

 したがって、今後ドルに対して円安が進めば、日経平均株価は上昇を続けることができそうです。図が示すように、1ドル92円程度になれば、日米の株価乖離は消滅します。ダウ平均株価が11,000ドル近辺にとどまるならば、日経平均株価は11,000円程度になるということです。

 ならば、1ドル92円になる可能性は? 小さいと考えています。ドル高(円安)を牽引している米国長期金利の上昇が限定的であることが理由です。米国製造業在庫循環モメンタムが示唆するように、景気の強さに関しては予断を許さないと考えています。

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 最近1週間の米国長期金利の推移を見ても、どうも鮮明な上昇基調をたどっているとは言えないようです。

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 したがって、過剰流動性のマーケット押し上げの可能性は否定できませんが、過度に楽観的な投資スタンスは避けたほうがよさそうだと思っています。

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2010年11月15日 (月)

QE2後のマーケットを考える(その2) : かかし

 まるで船の名前を思わせるQE2と呼ばれるFRBによる量的緩和政策の発表を受けて先々週に4.6%と急騰した日経平均株価は、先週も1.03%高と続伸しました。

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 とはいえ、金曜日には大きく下げるなど、なんとなく基調の変化を感じさせる動きが見えるのが気になりました。

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 ダウ平均株価も先週は2.2%安で終えていますので、日本同様に様子が変わってきたように見えます。

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 日本が上昇、米国が下落ということで、日米株価の乖離幅は縮小に転じています。

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 そこで今週のマーケットをどう見るのか? QE2後に見せた動きを踏まえて考えてみたいと思います。実は、先週と基本的なロジックは変わっていません。重複箇所は読み飛ばしていただければと存じます。

 まず、日米株価乖離をドル円の動きに重ねます。そうすると、日経平均株価がQW2後に見せた急速な上昇の理由が浮かび上がります。ドル円の動きに対して日米株価乖離が大きく下振れしていたのが、揺り戻されただけと見ることができそうです。

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 最近の動きを拡大すると、次のようになっています。揺り戻しの引き金は円安への動き。ドル円が円安に動き、日米株価乖離が上昇に転じました。日米株価乖離は日経平均株価からダウ平均株価を単純に差し引いたものです。ダウ平均株価の動きは小幅でしたから、日米株価乖離が上昇したということは、日経平均株価が上げたということになります。

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 では、現在の状況をどうみるか? すでに、ドル円と日米株価乖離の間にあったギャップを埋める動きは既に完了したように見えます。

 そうすると、もし日経平均株価がさらに上昇を続けるとするならば、何が上昇要因になるのでしょうか? この図から単純に考えると2つあります。一つはドル円がさらに大幅円安に進むこと。もう一つは、ダウ平均株価が上昇することです。

 まず円安について。もし、QE2の結果、長期金利の低下が設備投資や企業収益の回復を促し、経済が力強い上昇軌道に乗ったということであれば、円安への基調の転換の可能性は高いといえそうです。しかし、もちろんそれを確認するにはもっと時間が必要です。そして、何よりも、米国の長期金利は低下するどころか、上昇しています。

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この長期金利が、景気回復を早々と織り込む動きであるならば、FRBQE2は判断ミスであり、世界中に過剰流動性をまき散らす役割を果たしたに過ぎないということになってしまいます。

私は、米国経済の先行きは予断を許さないと見ています。それについては、製造業の在庫循環モメンタムを使って先週申し上げました(「QE2後のマーケットを考える」)FRBの判断ミスではなさそうだということです。ですから、対ドルで本格的な円安に基調が転換したとは言えないだろうと考えています。

ついでに対ユーロでも円安が進んだことについても一言。もし、欧州が財政問題を完全に克服して、着実に回復軌道を辿っているということであれば、本格的な円安局面に入ったと見て良いと考えています。しかし、財政問題は完全克服どころか再燃の気配です。

このようにみると、円安への動きは一時的である可能性が高いと考えられます。

次に、米国株式市場の動向です。これまで、QE2への期待から、強い経済指標よりむしろ弱い経済指標を好感して上昇を続けてきました。QE2への期待を膨らませたということです。ところが、QE2の発表前後からは、皮肉なことに、強い経済指標が増えてきたようです。強い経済指標は、弱い経済指標で上昇を続けたマーケットの動きが誤りであったと言っているようなものです。

では、どう見るのか? 私は、すでに申し上げたように、米国経済の先行きは予断を許さないと見ているのですが、QE2で政策的に (人為的に) マーケットを底上げしてしまいましたので、一段の上昇余地は限定的であると考えています。

強い経済指標はマーケットにはマイナス要因です。これは金融相場から業績相場への転換期の反落局面では頻繁に生じるありふれた現象にすぎません。

ということで、為替と米国株式市場という日経平均株価の動きに大きく影響する2つの要因が、ともにプラスの影響を及ぼすことはないだろうと考えますので、2週連騰となった日経平均株価ではありますが、依然として警戒が必要と見ています。「除行運転」です。

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2010年11月 8日 (月)

QE2後のマーケットを考える : かかし

 先週は「FRBによるQE2(量的金融緩和政策第2弾」や週末の雇用統計をめぐってマーケットがかなり揺れそうだ」と申し上げました。(「2011年の株式市場を読む(その3」)

 確かに、ダウ平均株価だけでなく日経平均株価も大きく動きました。1週間で4.6%の急騰です。

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 日足で見ると、113日(水曜日)のQE2発表を受けた木曜日以降の大幅な上昇が目を引きます。

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 そこでダウ平均株価の動きを追いながらQE2後の様子を確認して、今週の日経平均株価を見る上での参考にしたいと思います。

 まず113日のQE2に対するダウ平均株価の反応です。発表直後にモタつきが見られましたが、結局は好感されて64.10ドル、0.58%高で終えています。3連騰です。景気の悪さ→弱い経済指標→QE2→株価上昇という構図が維持されています。

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 114日はスタートから急騰を見せ、219.71ドル、1.96%の大幅高で終えました。QE2による流動性の大量注入が確定的になり、インドなど新興国市場が大幅高になった影響が大きかったようですが、週間ベースの新規失業保険申請件数がコンセンサスを大きく上回ったこともインパクトがあったと見ています。

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 なぜ、雇用状況の悪さを示す新規失業保険申請件数がマーケットにプラスの影響があるのか? 弱い経済指標はQE2を発表したFRBの判断の正しさを示すものだからです。再び、景気の悪さ→弱い経済指標→QE2→株価上昇という構図です。

 115日は、マーケット開始前に10月の雇用統計の発表がありました。非農業部門の雇用者数が予想を大幅に上回る強い数字でした。米株先物は上昇し、ドル高円安に振れました。発表の瞬間は、マーケットが好調な雇用統計を歓迎する雰囲気がありました。

 ところがマーケットが始まると、すぐに停滞色が強まっています。結局9.24ドル、0.08%の小幅高で終えているのですが、大引け直前に買い上げられたためで、ザラバの基調の弱さが印象的でした。

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 マーケットは、弱い経済指標を好感して上昇を続けてきたわけですから、雇用統計の好調な数字が不都合なものであることにすぐ気付いたようです。もし、強い経済指標が続くようであれば、FRBは判断を間違えたことになるわけです。

 さて、10月の雇用統計が示唆する強い経済指標が正しいのか、経済の弱さを懸念するFRBの判断が正しいのか?

 私はFRBの判断が正しいと考えます。景気は悪化を続ける可能性が高いと見ています。

 理由は米国製造業の出荷と在庫の動向をベースに作成した在庫循環モメンタムの動き。長期的な視野から見ても、現在の悪化傾向が鮮明に浮き出ています。

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 在庫循環モメンタムを構成する出荷の動向を見ると頭打ちが鮮明です。

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 一方、在庫は積み上がりが加速しています。

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 この景気の悪化をQE2で食い止められるかどうかはわかりません。しかし、少なくともFRBの判断は正しいのではと考えています。

 ということであれば、11月5日のダウ平均株価が、雇用統計の強さにも関わらずにザラバで見せた軟調な展開は、おそらく正しい反応であって、ドル高円安へ為替が大きく振れたのは一時的なものである可能性が高いと推測することが出来そうです。

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 今日(118日)の日経平均株価は、その雇用統計後の円安が重要な要因となって、高く始まりそうです。CMEの日経先物価格(円ベース)9,700円の近辺での寄り付きを想定しています。

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しかし、その後はマーケットを押し上げる要因が見当たらりません。ドル円がさらに大きく円安方向に振れるとは考えにくいからです。むしろ、高く寄り付いた日経平均株価はその後調整局面に入る可能性が高いと考えています。したがって、「徐行運転」を続けざるをえません。

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2010年11月 1日 (月)

2011年の株式市場を読む(その3) : かかし

 日本の株式市場の停滞が続いています。先週の日経平均株価は2.38%と大幅に下落しました。これで3週連続での下落となってしまいました。

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今週はFRBによるQE2や、週末に発表される10月の米国雇用統計をめぐって、為替市場や米国株式市場がかなり揺れそうな気配です。日経平均株価にとって、その影響は国内の経済指標や決算発表などをはるかに上回ると見ています。

したがって、毎度で恐縮ですが、今週も「徐行運転」です。

そこで、頭を切り替えて来年のことを考えてみたいと思います。「2011年の株式市場を読む」も既に3回目となりましたが、今回は先週金曜日に経済産業省が発表した9月の鉱工業生産動向速報を使って考えてみたいと思います。

この鉱工業生産動向をベースに作成した景気指標である在庫循環モメンタムは、次のようになっています。急速に調整が進んでいる様子が鮮明です。

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最近の動きに絞って、多少詳細にみると、下図のようになっています。リーマンショックの翌年、20092月に-29.81で大底をつけて、2010年の2月に34.92で天井となっています。そして下落基調に転じ、20109月には5.95となりました。株式市場はこの動向とかなり連動しています。

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黒い実線で示した出荷金額の基調が弱まっており、9月は前年同月比+11.77%まで低下しました。一方、黒い点線が示す在庫金額は積み上がり傾向を示しており、9月は+5.82%になっています。したがって、9月の在庫循環モメンタムは11.775.825.95と計算します。

余談ですが、在庫循環モメンタムは景気先行指標です。通常の景気循環には先行して動くため、転換点では景気の実感と異なった動きを見せます。通常の景気指標が強く、企業業績も良いのに、在庫循環モメンタムはなぜ下落しているのかと指摘されることが多いのです。もちろん、底打ちの局面ではちょうど反対の指摘が頻繁になされます。その状況を図で示すと、下記のようになります。株価は景気先行指標に沿って動くことが多いようです。

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では本論に戻りますが、注目しているのは在庫循環モメンタムの下落のピッチの速さです。このペースで進むと、かなり近い将来に底打ちしそうな様子です。

なぜでしょうか? 実は8月、9月は本来であればもっと急速に下落していたかもしれないのです。それは、部門別に詳細に見ていくとわかります。紙面の都合で長くなりすぎてもいけないので、ご興味のある方は、私の株式ブログ「スケアクロウ投資経済研究所」の「9月の鉱工業生産動向を出荷在庫バランスで読む」をご参照ください。

8月や9月は暑夏の影響で、飲料や夏物衣料などの非耐久消費財が好調であったことや、エアコンに加えて、エコカー減税の切れる乗用車の駆け込み需要などから耐久消費財も好調であったことが大きく影響しています。したがって、今後はその反動が出る可能性が高いのです。

となれば、来年、つまり2011年の鉱工業在庫循環モメンタムは比較的に早い時期に底を打って上昇に転ずる可能性が高いと見ることができます。

もしその局面で、大幅な円高が反転して円安に振れるようなことがあれば、株式市場の上昇は加速しそうです。

したがって、来年は今年とは打って変わって良い年になることを期待しています。

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2010年10月25日 (月)

G20財務相・中央銀行総裁会議を終えて : かかし

 今朝は、株式関連の分野での話題をあれこれ検討してみたのですが、頭の中をG20が占有してしまっていて、どうしても他の話題が浮かんできません。そこで、策を弄するよりも、昨日私の株式ブログ「スケアクロウ投資経済研究所」に書いた記事をそのまま転載させていただきたいと思います。決して手を抜いたわけではないのですが、あらかじめお詫び申し上げます。

G20財務相・中央銀行総裁会議を終えて」(「スケアクロウ投資経済研究所」、1024日)

 G20を終えて、日本は「為替介入はダメよ」と書いた首輪をぶらさげられて帰国したような印象があります。

 振りかえってみれば、日本は以下のような戦略をとるべきだったかもしれません。

1)まず、他国に迷惑をかけようと、通貨安競争の元凶になろうと、徹底的に円安にする。たとえば対ドル120円。

2G20が近づくにつれて、「日本は円安を望まない」「為替は適正水準」と繰り返します。

3G20 直前になると、「日本は世界のために円高にする努力を惜しまない」「円高は国益である」と一段とトーンを高めます。ドル円を100円程度まで円高に持って行くように為替操作をします。

4G20では、「日本は円高にする努力をした」と自慢して意気揚々と会議に臨みます

5)ただし、これは見え透いているために、批判を受ける可能性があるので、適当な煙幕を張ります。たとえば、各国の経常黒字や赤字をGDP4%以内するというような、皆を煙に巻く話題を提供します。なぜ4%かはどうでもいいのですが、2%とすると貿易黒字国の一部が発狂してしまいますから、適当に4%程度としておきます。

6)これで、1ドル100円程度の円安水準でも、各国に喜ばれるわけです。

 個人的には、このような戦略は好みませんが、どうも似たような戦略を実践した国があったような気がします。これを実践できるかどうかは、政治家としての資質や能力の問題もあるのだろうと推測します。

 というわけで、市場が決定した(determined)為替に対して、為替介入などの操作はしにくくなったようです。短期間に何円という大幅な変動がない限り、為替介入は正当化出来なくなったわけです。

 となると、円はどうなるのか?円高への歯止めが期待しにくくなったようです。財団法人国際通貨研究所が算出した最新の購買力平価を輸出価格ベースで見ると、1ドル68.76円。とうとう70円を越えました。放っておけば、とんでもない円高になるかもしれないということです。

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 それにしても、なぜ購買力平価がどんどん円高へ振れていくのか?おそらく、デフレを野放しにしている政府・日銀の方針が色濃く影響していると思います。もちろん為替に対しては「断固とした」姿勢を政府が示す一方で、日銀もデフレに対して「許容しない」と勇ましいのですが・・・・

 今年に入ってからの日米の株価乖離とドル円の動きを重ねると見事に一致しています。要するに、日本の株式市場はドル円の動きで決まっています。そのドル円に対して「円高」の首輪をつけられてしまったのですから困ったものです。

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 「『反省』だけなら○○にもできる」というコマーシャルがありましたが、「『断固とした』という言葉だけなら政治家にも言える」ということなのでしょう。

 国会議事堂内での写真撮影がどうしたこうしたということより、もう少しマシな議論を政治家の方々にしてもらいたいところです。

以上が昨日の記事からの転載です。

以下は蛇足ですが、定例のご報告です。

先週の日経平均株価は0.77%下落しています。

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中国の基準金利引き上げショックで大幅に下げた米国株式市場を映した水曜日の下落が大きく足を引っ張りました。

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一方、ダウ平均株価は0.63%上昇したため、日米の株価乖離が一段と進んでいます。

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そこで今週ですが、本格的な決算シーズン入りとなります。経済指標も盛りだくさんです。しかし、株式市場へのインパクトが格段に大きい為替から目が離せないようです。

 となると、11月初めのFOMCQE2の規模が気になるわけですが、株式市場orientedというより、株式市場determinedな気質の米国で、FRBが株式市場の急落を招きかねないような規模縮小という政策を採る可能性は小さいと見ています。

 したがって、円高に要注意ということで、「徐行運転」を継続せざるを得ません。

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