「崖=米国債務上限問題は意外と健全なやり方、日本と違う」
*2011 年の債務上限問題は、「Budget Control Act of 2011(BCA)=財政赤字削減と債務上限の引き上げを柱とする法律」が2011年8 月に成立し、債務上限が引き上げられたことにより一旦収まる。しかし、財政赤字はさらに増加しつつあり、債務上限引き上げによる単なる時間稼ぎではなく、抜本的な財政改革が必要となっている。2000年代に始まった所得税などに対する大型減税策、いわゆる「ブッシュ減税」が2012年末に期限切れとなる。
*BCAでは2013年1月から強制的な超党派の合意がない限り、予算削減がなされることとなっている。引き上げるためには超党派委員会の行う財政赤字削減の程度によって増減する。超党派委員会が1 兆2,000 億ドル以上の赤字を削減できた場合、引き上げられる債務上限は超党派委員会が削減した赤字額と同じ額となる(最大1 兆5,000 億ドル)。しかし、現実には超党派委員会の試みが失敗に終わっている。この場合は債務上限が1 兆2,000 億ドル引き上げられるが、強制削減=sequestration”が発動され、防衛費を含む広い分野の一律予算削減が実行されるとBCA は規定している。
*2013年から、減税が切れ「実質的増税」と「強制的な歳出削減」のダブルパンチで崖から落下するような急激な財政の引き締めが起こってしまう可能性がある。
*民主党は歳出削減と増税の両方を組み合わせることを主張、共和党は社会保障費などの歳出削減により財政赤字を削減すべきだと主張し、経済成長が伴わない増税には反対。
*現時点では、大統領選挙後まで財政赤字の問題を棚上げし、選挙で勝った後で自らの主張を強く通した方が共和党にとっては得るものが大きいとされている。その選挙で勝ちたいという考えが、民主党との対立を生じさせている。
「歳出一律削減=sequestrationとは」
2013 年から2021 年の9 年間で1 兆2,000 億ドルの財政赤字削減を実行させる。削減額は軍事費と非軍事費へと均等に割り振られる。
*今後は一律削減措置で歳出の一律自動削減が実行される場合と、議会と大統領の協力による一律削減措置を無効にし、債務上限引き上げとなるかに注目したい。
*ただきっちり債務問題を毎年議論する米国は意外ときっちりしている。日本は垂れ流し。
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