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2010年12月20日 (月)

セクター・ローテーション  :  かかし

 総集編の2回目として、セクター・ローテーションについてお話してみようと思います。

為替は、野村さんがかねがね強調されているように、癖のある動きをします。一方、株式は経済の動きをかなり合理的に織り込んで変動します。

 ところが、株式投資は単純あるいは簡単という話はほとんど聞きません。そうであれば、皆が株式投資に向かっているでしょう。投資は勝負ですから、あくまで勝てる土俵でやるべきだからです。

 私は30年近くアナリストという仕事を続けてきたのですが、初めのころは推奨銘柄がことごとく外れ、株には才能がなさそうだということで、やめようと思った時期がありました。

 その苦しい状況の中で、使い始めたのが在庫循環モメンタムという指標でした。出荷金額の変化率から、在庫金額の変化率を差し引いただけの簡単な指標です。しかし、変化の勢い(モメンタム)が指標に反映されるので、一般的な景気認識よりも早目に動きをつかむことができます。

 そして気がついたのですが、要はタイミングだったのです。しかし、この指標がなければこんなに長く株式投資の世界には生存できなかったような気がします。

 そこで、前回のピーター・ナバロ教授の図を思い出してください。

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 良く見ると、景気の山谷に比べて、株価が一足早く動いています。教授はこの時間差について特別な説明を加えていないのですが、実は在庫循環モメンタムを用いることでそのギャップを埋めることができるのです。

 株価あるいはマーケットの動きと、経済の動向の合理的な関係が把握できると、経済の局面に対応して特徴的な動きをする銘柄群が浮かび上がってきます。景気変動を繰り返すたびに似た動きをしてくれるので、株式投資戦略を考えるときに、とても好都合です。

 今日は詳細にお話しする余裕はありませんが、在庫循環モメンタムとその局面に応じたマーケットの特徴を次のように考えています。このようなアプローチがセクター・ローテーションと呼ばれるものです。

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 在庫循環モメンタムの下落局面では、電力などの景気抵抗力が強いディフェンシブ株が活躍する傾向があります。

 反対に、在庫循環モメンタムが上昇するときは、利益成長性の高い業績株が目立って上昇するようです。以前はハイテク株が代表的でしたが、中小型株を含め幅広い銘柄群が活躍します。ポイントは利益成長です。

 実は、株式投資として最も魅力的なのは、在庫循環モメンタムが停滞局面から抜け出して、上昇に転じる時です。景気敏感株と呼ばれる銘柄群が著しい上昇を見せる傾向が強いようです。出発点の株価水準が低いことが、高い株価パフォーマンスの重要な理由の一つであるようです。

 景気敏感株であれば何でも良いというわけにはいきませんが、幸いセクターごとの意在庫循環モメンタムを手軽に作成できますので、それを確認しながら動けばいいわけで、カンや運に頼る必要は薄いようです。

 在庫循環モメンタム意外にも、株価をうまく説明する指標を探し出すのも、投資の醍醐味の一つでしょう。

   原油価格――――国際石油開発などの石油関連株

   金価格―――――住友金属鉱山などの産金株

   国際商品指標――総合商社株

   長期金利――――銀行株

 以上はほんの一例ですが、このような切り口でマーケットを見ると、株式投資の楽しみが増すようです。

 一昔前は、株式投資で売りから入るということが簡単にはできなかったので、買ったら上昇してくれないと話にならないという見方が多かったようです。買うだけと言うなら、その見方は正しいのですが、以上のように循環をとらえて適切に売りと買いを繰り返せるなら、その必要はなくなりました。大切なのは株式市場の合理的な動きであって、上昇を続けなければいけないということではありません。

 今日の話のおしまいに、現在の日本の鉱工業全体の在庫循環モメンタムの図を入れておきます。

1020101206

 来年のかなり早い時期に底打ちに転じそうな様子です。

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