外為入門128、所得収支黒字その2
「外為入門128、所得収支黒字その2」
円高に触れると海外投機筋のせいであると言う発言は当局民間の区別なく出る。要因が分からなくなると投機筋のせいとなる。そう言えば確かめようもないし、何となく為替を知っているような気分がして解決するようだ。しかし実際市場にいる投機筋などそれ程多いわけでもないし、彼らの張る相場は当っていることのほうが少ない。円を誰が動かしているかと言えばやはりそれは日本である。といっても日本人ということではなく、日本を通り過ぎる為替である。今年は簡単に言えば、1-9月で貿易黒字と所得黒字などの合計である経常黒字12兆円と外人の株の買い7兆円の合計19兆円を介入13兆円で埋めるが足りない6兆円は為替リスクのある海外投資に消極的な生保と、積極的ではあるが如何せん金額が小さい個人の外債投資では埋め切れない。それが円高の要因である。投機筋ではない。乱高下させているとしたら投機筋より当局の発言だ。
国際収支表は本邦と海外の資金の出入りを示す表であるがその表からは為替が絡むものと絡まないものの区別は出来ない。事実上今尚残る為銀主義で銀行を通じて資金の出入りはあるのでそこで為替に絡むものと絡まないものを分ければいいのだがそれは難しい。
為替変動の理論として「国際収支説」があるが 国際収支表を見て為替相場との関連性を説いている書はない。
経常収支はリーズ&ラグズや、ヘッジなどもあり時間的なぶれは残るがほぼ為替が絡み相場予想変動を説明出来る。
やっかいなのは資本収支であり、これは為替に絡まないものも多く含まれ、かつ経常収支などの複式簿記上の反対取引として記帳されているその他投資勘定(旧国際収支表の金融勘定)もあり複雑化する。
それで資本収支の代わりに対内対外証券取引状況(4項目)を利用する。そのなかで株取引は為替が絡むが円債取引は為替への影響が少ない。外債投資はこれまた為替ヘッジ付、ヘッジなしが区別出来ない。その点はさらに外債投資の主体別投資動向を見る。為替リスク付投資を原則やらない銀行の数字を省き、生保や投信の数字を中心にヘッジ率の記事を参考にしつつラフに推定する。
何とかこの「為替国際収支」を把握したいのが私の現在やっている作業でありより投資収益を効率化するものである。
(9月までの貿易黒字と所得黒字 関係ない人も為替で損)
1-9月までの黒字累計は貿易が777億ドル(8兆5471億円)、所得が601億ドル(6兆6169億円)である。円高に対して楽観的であるとか、当面の影響はない、円高抵抗力はついてきたといわれるが、確実に手取りは減るのである。円高は貿易収支だけについて議論されるが、所得収支についてもまったく同様の影響が出る。貿易に関係のない人々でも、外債投資をやっている人も円高では差損となる。自分は海外にかかわりがないと思っている人も 生命保険、年金、郵貯、簡保などが外債投資をしていてそこで為替差損が出れば保険金、配当が目減りしている。消費が減るのは当然である。たいして影響はないという理由をあげつらう人も多いが、サイフの中身は必ず減っている。最後は窮した人々が、窮していなくても海外の安価な商品を買ってその差損を、いや生活を改善しようとするがその道は政府が閉ざしている部分がある。それで不作のコメの値段が上がる。為替差損を負った上、国内物価高で円高を生かせない。中国のようなかたくなな為替政策とまでは言わないがもう少し国民の為の為替相場、輸入規制を考えてもらいたい。(とはいえこれは「べき論」であり為替相場操作はまた別なのである。当局が何もしそうになければドルを売らねばならない。)
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