外為入門127、所得収支黒字その1
「外為入門127、所得収支黒字その1」
(所得収支が貿易黒字を猛追――本来は大金持ちのパターン)
前回は国際収支のうち旅行収支の特徴をあげたが、今回は所得収支について述べたい。
日本の対外純資産の増加で自然とその利子、配当の受け取りである所得収支黒字が拡大し続けている。 平成13年末で対外純資産は179兆円あり、所得収支の黒字は8兆3千億円である。ラフに考えれば年率4.6%で回っていることになる。
所得収支黒字は月当たり7000億円程度にもなり、1兆円近い貿易黒字を猛追している。
旅行収支はゴールデンウィークや夏休みなどのホリデーシーズンにもあまりその増減に特徴がなかったが、所得収支はやはり、外国債の利金の払いが多いとされる2、5、8、11月に金額が増えておりドル(外貨)売り圧力となる。
結局、日本のファンメンタルズが悪かろうと、この貿易黒字と所得収支黒字が円買い圧力として残り続ける。その黒字の海外への還流が日本の公的、民間機関投資家からうまく回らなくなって円高が続いてきた。
対外債券買い越しの金額が財務省の対内対外証券取引報告にあげられるが、銀行の買い越しが大きくこれは、短期ドル調達、長期ドル運用であり、為替には結びつかないALMのオペレーションである。海外短期金利がインフレで急騰し長期金利を上回ることがない限り損をしないかなり確実な儲け方(但しバランスシートを膨らませる)で伝統の手法である。
安定的な円安基調にするためには貿易黒字とともに所得収支黒字を上回る資本の流出が必要である。
しかし これだけ海外純資産をもちその配当、金利受け取りがあるなら、もう少し左うちわの生活ができそうなものである。 それを国内では購買力のない円に買えてしまうのがひとつの要因であろう。 「外に強く内に弱い円」である。 外弁慶。そのまま外貨で使えば、優雅に暮らせる人も出てくるが、規制と円高政策で自ら歩む苦難の道である。
通貨主導の経済破綻をいつになったら変革できるのだろうか。経済規模の大きさでアルゼンチンの混乱は起きていないがやっていることは質的に日本とアルゼンチンは同じであろう。
(続く)
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