外為入門85、東京市場では相場はNYと比べ動かないその2
「外為入門85、東京市場では相場はNYと比べ動かないその2」
日本の貿易の円建て比率は輸出が40%(外貨60%)程度、輸入が10%(外貨90%)程度である。輸出額は月間約300億ドル、輸入額は200億ドルである。このうち円建て貿易は為替は東京で起きないと考えれば、為替が起きる外貨金額は 輸出300億ドルの60%で180億ドル、輸入200億ドルの90%で180億ドルほぼ見合ってしまう。東京市場では貿易為替の外貨部分は売り買い同じとなる。東京の銀行の為替ディーラーは主としてこの為替のカバーで忙しい。自分の投機よりもこのカバーを優先しなければならず、その方がより収益的にも有利なのである。買い上がれば輸出の売りオーダーに、売り落とせば輸入の買いに見事にぶつかるのであり、またその金額が巨額でほぼ年を通せば同じとくればなかなか一挙に相場を崩すのは至難であり先に崩れるのは自分になってしまう。
月間輸出輸入それぞれ180億ドル、1日当たり 9億ドル1000本近い売りと買いが市場にあれば東京のディーラーがばたばたすれば、自分の損益がばたばたしてしまう。こんなことは上記の数字を知らなくても東京市場でトレーディングをやっていれば体にしみつくわけであり、自然と東京市場でのディーリングスタイルが出来上がってしまう。要するに顧客にユアーズされたら その2,3銭上に売りを置き、マインされたら2,3銭下に買いを置けばよい。ニューヨークのディーラーから見れば何と楽な市場であると思うだろう。 動かなくても楽で儲かるのが東京なのである。
しかしニューヨーク市場でこんなことをやっていたら 下がる相場でドル買いが、上がる相場でドル売りが膨れ上がり、損失は雪だるま状態となる。実需のオーダーは皆無である。東京と違ってお人好しの客はいない。皆相場師なのである。銀行も客も。
東京市場は実需の市場である。それは貿易が外貨建てが多くその為替取引をすることが市場の主な役割となる。 ニューヨーク市場ではドルが基軸通貨ゆえ貿易はドルで行われ世界中どこと取引しても為替は起こらない。ニューヨークとL.A.の貿易もニューヨークと大阪の貿易取引も為替とは無縁である。貿易業者は為替市場には現れない。ニューヨークで為替取引をする人はウサンクサイ人、投機、投資である。 為替をゲームとして認識する。よってセンチメントが大きくものを言うし、市場にはその日に為替を取引する実需の注文が置きっぱなしにはなっていない。時々市場にはプライスが無い時が訪れる。投機筋中心で甘い価格はないし、いざ何か経済指標や事件があればいっせいに注文をひき、またいっせいに買いや売りが集中する。そこに実需の注文はなく、相場は一方向へ飛んでしまう。「プライスが消えたと思った数分後に100ポイント以上動いていたこともある。それが自分にフェイバーなら良いがたいていは逆なのだろう。ニューヨークはディーラーにとって完全燃焼出来る市場である。
話は少しそれたが、極論すれば 日本は総実需市場、ニューヨークは総投機市場である。
それゆえ市場の厳しさ、ボラティリティーが違ってしまう。
東京が動かず、ニューヨークが動くのは、貿易の自国建て通貨比率によるもの、またドルが基軸通貨ゆえニューヨーク市場参加者は投機筋中心、東京市場は実需中心であったことによる。 わかりやすく言えばニューヨークはヤバイ人、東京は真面目な人が為替をやる。
以上が東京が動かない理由である。 貿易為替の観点から見れば動くのがおかしいとなる。 機関投資家も静かになり、対外投資といっても為替リスクのないスワップ付が多い。また彼らの動きは全社一斉にくるのでわかりやすい。日本の団体行動為替である。(結論)需給分析、円建て比率、基軸通貨などの観点から東京は動かず、ニューヨークは動くことを説明した。 東京の短期ディール、デイトレードならずともスイングディールにはセンチメントより実需の動きを知らなくてはいけないが、ある程度それは推測できる。
ニューヨークにフォローして朝一番にドルを売って長時間苦しむことは避けられるように思う。
動かなければ動かないというやり方がある。東京市場はややポジションを大きくして総収益を増やすとか、 時間帯、日にち、などによって特色のある仲値相場を会得するなど。ニューヨーク市場はセンチメントが優先しそうだ。そのほうが素直かもしれない。
24時間市場は開いている(土日も)。自分の頭が冴える時を選んで相場を張ればよい。東京好きでもよいし、ニューヨーク好きでも良いではないか。
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