中国のレアアース外交が西側を震撼させる:津田
中国のレアアース外交が西側を震撼させる
今回の漁船衝突事件・船長拘束事件を機に態度を硬化させた中国が日本へのレアアース輸出を停止し、大きなニュースとなった。この停止措置は解除に向かっているようであるが、中国のレアアース外交に戦々恐々としているのは何も日本だけではない。
レアアース(希土元素)は電池や磁石や、モーターから人工衛星、レーザー兵器、精密兵器などの先端産業や軍事産業に不可欠な鉱物資源であるが、世界の産出量で圧倒的なシェアを誇る(97%以上)中国は各国の商業および軍事産業の肝を握り市場を独占していることになる。
今回の漁船衝突事件の背後にはアジアの二大経済大国(日本/中国)間の領土問題、漁業権、エネルギー資源を巡る抗争があるが、その交渉の場に中国がレアアースをちらつかせたことが世界中の商業ベース及び軍事産業に大きなショックを与えた。
昨年中国は世界のレアアース酸化物の97%を生産したが、その大部分は中国国営企業であり、いわば中国の国家そのものが世界の需給関係を握ったような結果となった。
今回の日本への禁輸措置以前にも2005年頃から中国はレアアースの生産と輸出を規制し始め価格は急騰。ある種の主要レアアース酸化物は2008年から今日までで価格が倍に上昇している。
実はこの中国のレアアース独占に対しては豪州政府も警戒心を持っており、昨年9月に豪州の投資関連の許認可を司るForeign Investment Reserve Boardは中国国営企業が西豪州のレアアース鉱山Lynasの買収を、国家保障上の理由で阻止したいきさつがある。Lynasはレアアースの世界最大規模の鉱床を有すると言われており、Mount Weldの埋蔵量は今後世界全体の需要の20%を30年間生産できるとも言われる。
米ペンタゴンは軍事産業におけるレアアース需要の中国への依存度の高さに警鐘を鳴らすレポートを作成中と言われるが、レアアース供給ストップの影響は米国のみならず、豪州など米国から武器を購入している同盟国にも影響を及ぼすものである。
人工衛星、レーザー兵器、精密兵器以外にも米国の防衛システム関連の通信、レーダー、航空電子工学、暗視装置、ジェット機エンジン、ミサイル誘導装置、魚雷探知装置などはすべてレアアースを必需としている。例えば具体的には精密誘導爆弾の安定板作動装置はネオジウムとボロン鋼からできる磁石を使用している。さらにそれらの生産に使用されるコンピュータのハードドライブ自体もレアアース要素を使用している。
最近中国は年後半のレアアースの輸出割当量を72%削減した。輸出量は昨年同時期の28,500メトリックトンから8,000メトリックトンに減少した。もし新しい生産源が開発されなければ2012年までに世界のレアアース需要は供給を50,000トン超過するとの試算がる。
中国側は生産/輸出削減の理由として、レアアース採掘には有毒化学品の使用が避けられず、大量の採掘が中国の大規模な水質汚濁などの環境汚染に繋がり地域の大きな健康問題に発展したと説明している。
この中国の説明はあながち根拠のないものではない。米国では1990年ころまで主にカリフォルニアのMount Passでレアアースを自給自足しており、レアアース生産のワールドリーダーであった。しかしものの10年間でほとんどを中国からの輸入に切り替えた理由はやはり環境問題と規制問題であり、Mount Pass鉱山は2002年に閉山している。
レアアースは金や銀などの貴金属に比べて地殻に存在する割合は多いが。単独の元素を分離精製するのが困難であるために「Rare=まれな」と呼ばれるのだ。
経済的価値を持っている採掘可能なレアアースの埋蔵量は全世界で1億トンと言われる。3分の一以上が中国、それも南部と内モンゴルと言われる。ロシアと旧ソビエトに19百万トン、米国に13百万トン、豪州に5.4百万トン、インドに3.1百万トン、グリーンランドや南アフリカも主な埋蔵国である。
中国の生産増加が当初は価格低下をもたらしたが、ここへきて中国は国家として生産統制を行い始め価格を吊り上げてきた。つまり価格を支配し始めた訳である。
米国はじめとした先進国では中国依存過多の弊害に対する先見の明のなさを現在猛省しており、代替供給先を模索している。
米国、カナダ、豪州、南アのレアアース鉱床の採掘は2014年頃には可能になるとの見方がある。しかし一旦閉めた米国の鉱区を再開発するには更に長い年月がかかるとのことである。当分の間は中国が強力な切り札を持つことになる。
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