6月の鉱工業生産動向を読む : かかし
先週の日経平均株価は1.13%上昇しました。
堅調な展開と言いたいところなのですが、日足を追って見ると7月28日(水曜日)に256.42円、2.70%の大幅高となったことが大きな理由で、全体を眺めれば山あり谷ありのデコボコ道でした。決してアクセルを踏みこむような状態ではなく、徐行運転が欠かせなかったようです。
7月28日は、急速なユーロ高円安、中国人民銀行の強気な経済見通しをきっかけとする上海市場の大幅高、バーゼル銀行監督委員会による銀行資本規制の緩和による金融セクターの急上昇など、珍しく追い風が重なりました。いつも、このような幸運が訪れるわけではありません。
そこで今週です。決算シーズンの最中で、好決算も多いのですが、やはりアクセルは踏みこみにくいと見ています。好決算がかなり織り込まれていることもあるのですが、気になるのは景気の方向性です。
そこで、7月30日に経済産業省が発表した6月の鉱工業生産動向で景気の方向性を見ておきたいと思います。長くなりますので、結論を先に言っておきますが、景気の方向は上向きではなく、下向きです。したがって、マーケットの上値は重いと考えています。
まず、鉱工業生産の動きを前年同月比増減率で見ると、頭打ち感が鮮明になっています。
次に、出荷数量の増減率から在庫数量の増減率を差し引いた景気指標である「出荷在庫バランス」を見ると、出荷の勢いが弱まると同時に在庫の積み上げ利が進んでいるため、鉱工業出荷在庫バランスも下落に転じています。
特に気になるのは、昨年春以降鉱工業出荷在庫バランスの上昇を牽引してきた自動車などの耐久消費財の出荷在庫バランスの下落が著しいことです。
加えて、半導体など電子部品が大きな比重を占める生産財の出荷在庫バランスも下げが目立ってきました。
一方で、機械類などの資本財セクターは依然として健闘しているのですが、残念ながら全体としての出荷在庫バランスは、今後月を追って下落基調が鮮明になりそうです。詳細については、私の株式ブログ「スケアクロウ投資経済研究所」の「6月の鉱工業生産動向を出荷在庫バランスで読む」をご参照ください。
次に、出荷在庫バランスを構成する出荷数量、在庫数量を、日銀の「製造業部門別投入・産出物価指数」を用いて、出荷金額、在庫金額に変えて作成した景気指標である在庫循環モメンタムを作成すると次のようになっています。
基本的には、出荷在庫バランスと大きな差はないのですが、投入価格、つまり原料コスト、の上昇率が、産出価格(=出荷価格)を上回るため、指標の頭打ちがより鮮明に出ています。
株価は景気を移す鏡と言われていますが、鉱工業在庫循環モメンタムと日経平均株価はかなり強く連動しています。
今後、在庫循環モメンタムも下落がより鮮明になってくるため、株式市場の基調も上値の重い展開になりそうです。この点も詳細は「スケアクロウ投資経済研究所」の「6月の在庫循環モメンタムと株価」をご参照ください。
ただし、一方的に悲観しているわけではありません。下値を支えそうな要因もあります。
個人的に注目しているのは、日米株価の格差です。連動して動くことが多いのですが、最近はダウ平均株価の上昇ペースが日経平均株価を上回っています。
日経平均株価とダウ平均株価の単純な乖離は次のようになっています。
経験的には乖離幅が拡大すると、修正の動きが出てくるようです。日経平均株価がダウ平均株価に追いつくように上昇する可能性があります。ただし、ダウ平均株価が下がることで乖離が縮小することもあるわけですから、決して手放しで楽観的しているわけではありませんが、ある程度の期待を持っています。
そのようなわけで、上値を抑える要因と下値を支える要因との狭間での株価の動きを想定して、徐行運転を継続するつもりです。
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