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2010年5月26日 (水)

ギリシャ財政危機は我々に何を語っているのか: 呂 新一

ギリシャ財政危機をきっかけに、世界的に株価は大暴落を続いています。

 

ギリシャ財政危機についての議論は、大まかに言うと、2つの道に分かれます。1つはユーロ圏で発生した問題として捉え、ユーロが存続できるのかどうか、或いはユーロがどこまで下落するのか、の議論です。もう1つは、財政が火の車というギリシャの窮状は実はほかの国も抱えている悩みであることに注目し、次の修羅場となるのがどこの国か、との議論です。

 

ユーロが存続できるのかどうかについて、まず、頭に浮かんだのは、ヨーロッパの人達が連合された欧州を昔から理想として掲げ、長い歳月をかけてやっと通貨統合の段階に辿りついた事実であり、その意味では、ユーロを解体させることは、多くのヨーロッパ人にとって苦痛に満ちた選択となるでしょう。一方、現在の形でユーロを存続させるのは無理であることも明らかです。即ち、今後もユーロを存続させるなら、統合をさらに進め、参加国の財政支出基準まで統合するのか、或いは、一歩退き、ギリシャなど元々平時でも3%基準を満たしていない国々を暫くの間ユーロから離脱させ、少数先鋭の集団からユーロを再スタートさせるのか、のどちらかしかないです。ただ、よく考えれば、各国とも不景気に悩み、財政による景気刺激策を考えている現在、その財政の決定権をEUに委ねることは非現実的でしょう。他方、いま直ぐギリシャなどの国を除名することも市場へのインパクトを考えればありえない選択です。従って、当面、良い選択肢がなく、ユーロ諸国は暫くの間、市場の波乱がこれ以上広がらないように時間稼ぎに専念すると見られます。

 

そして、もう1つの議論の焦点である、次、どこの国が第2のギリシャになるのかについて言うと、南欧諸国のほか、候補者はまた沢山あります。ただ、より本質的なことは、どこの国が第2のギリシャになることではなく、今まで世界の主流を占めている経済発展パターンがこのまま維持できるのかどうかのことだと思われます。

 

ここで、筆者は「経済発展パターン」という言い方を使いっていますが、より厳しい言葉を使うと、「生活レベルを維持する方法」ということになるでしょう。即ち、南欧諸国だけでなく、日本、アメリカ、果てはイギリスまで、今までの経済発展パターン、或いは国民の生活レベルを維持するため、国債を発行し続き、将来の世代から許可もなく返す当ても膨大なお金を借りてきました。フランスのルイ15世は「朕の後は野となれ山となれ」という有名な言葉を残したが、今の西側諸国の政治家は、自分が当選するため、過度に国民に甘い将来を期待させる一方、まだ生まれていない(当然、選挙権を持っていない)将来の国民に負担を強制し、負債だけを残すことにしています。このやり方はルイ15世とそれほど変らないと思われます(ルイ15世はそのような酷いことを言わなかったとの説もあり、それが本当であれば、ルイ15世に申し訳ありません)。このようなやり方はいずれ限界を迎えることは明らかです。

 

一方の中国は、表向きでは国債などのツケを将来の世帯に押し付けることはあまりないが、環境・資源など、将来代々の中国人が生存する条件を酷く破壊してきました。中国食品薬品監督管理局の資料によれば、工場からの汚染された工業水や、化学肥料、農薬によって、河川、湖及び近海に深刻な環境汚染が起き、河川、湖については6割が深刻な汚染に侵されています。深刻な環境汚染、資源破壊は、償還金当てのない国債発行と同じく、将来の世帯へのつけ回しでしかありません。その意味では、今の中国の経済発展パターンも持続不可能と思われます。

 

ギリシャ財政危機を1つのきっかけに、世界範囲で株価がここまで下落したことは、市場参加者が金融危機を乗り越えたとしても、今までの経済発展パターンがここまま持続できるのかどうかという正体の知れぬ恐怖にとられているためである可能性があります。

 

このまま株価が下落していくと、近いうちに、景気の変調を示す経済統計が次々に発表され、相場のベア・マーケット入りにお墨付きを与えることになるでしょう。

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