NY株式相場、一息いれますか? 呂 新一
米株式相場は2月5日にボトムを付けた後、反発から上昇へと、天井知らずの勢いで上がってきました。
そのような動きに励まされ、マーケットのセンチメントも強気一色で、健全な上昇がさらに続くとの声は圧倒的になっています。
しかし、懸念材料はないわけではありません。ここで、その幾つかを見てみましょう。
その1つは相場の過熱感です。日本の騰落レシオに似ているモノに、S&P500種構成銘柄のうち50日移動平均を上回っている銘柄の比率と言うのがあります。その比率が100%に近づくほど、より多くの銘柄が50日移動平均を上回る水準にあり、投資家が無選別になっていることを意味します。無論、そのような無選別状態は長続きせず、投資家が冷静になれば、相場が調整局面を迎えることになります。下記チャートはその比率の推移ですが、チャートが示しているように、現行水準は92.8%で、相場はかなり過熱しています。そして、過去3年の間、この比率が92%を超えると、例外なく調整局面に入っていました。
もう1つは、長期チャートを見ると、S&P500種は正念場にきていることです。反発に反発を重ね、S&P500種は1,200ポイントの一歩手前まで来ました。この1,200ポイントという水準は、2008年夏のリーマン・ショックに、背中を押され、谷底へ飛び込んだ直前の水準です。言い換えれば、この1,200ポイントを明確に上回ることができるのかどうかは、株式市場がリーマン・ショックを乗り越えることができるのかの試金石です。
このように、相場が大きな関門の前に立っている時、仮に多くの投資家が依然弱気心理に捉われ、投資余力を温存していれば、関門を突破することは容易であると思われます。しかし、現状はその逆で、投資家のセンチメントが非常に強く、VIX指数が過去1年以来の低い水準まで落ちています(下記チャート参照)。
このように、株式相場がわが世を謳歌していられる背後に、無論、ファンダメンタルズの改善は非常に大きいですが、その他、FEDによるチップマネーの供給も見逃せません。下記チャートはセントルイス連銀がまとめた1984年以後のベースマネーの推移です。チャートから分かるように、金融危機後のマネー供給は異常としか言えません。
無論、遅かれ早かれ、FEDはこの洪水のような資金を回収しなければなりません。その回収は簡単なことではありません。一歩間違うと、金利急騰を招き、景気を殺してしまう危険があります。
下記チャートはここ半年間での長期(残存期間10年)国債利回り推移ですが、最近上昇していることがわかります。その背景は、景気回復ならびに財政赤字の急増と思われ、暫くの間、反落は期待し難い。
今までの経験によれば、アメリカ国民が借金漬けになっているため、景気の金利依存度は非常に高い。言い換えれば、何らかの理由で金利が大幅に上昇すれば、それの景気への悪影響を先取りして、株式相場が調整局面に入る可能性は高い。
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