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2010年3月17日 (水)

中国の不動産バブルの裏側: 呂 新一

今の中国で不動産開発業の利潤率が非常に高い。

 

その高い利潤率の殆どは政府から取得する土地開発権の単価と市場価格との間にある大きな差から来ています。事実、3月11日に発売された雑誌「瞭望方週刊」によると、国務院(日本でいう内閣)の任玉岭参事官は記者とのインタビューで、ご自身が目撃した例として、ある地方政府が時価1,600万元(日本円で約21,206万元)の土地開発権をただの200万元(日本円で約2,650万円)で民間の会社に売り、その社長さんがあっという間に18,500万円超の利益を手にしたことを挙げました。

 

無論、誰もが政府から格安の値段で土地開発権を入手できるわけではありません。甘い汁を吸っているのは地方幹部の縁戚か関係者だけです。そこで、すでに甘い汁を吸っている人達は勿論のことですが、これから吸いたいと願っている人達も、あの手この手で地方幹部のご機嫌を取ります。こうして、土地開発を巡り、業者と一部の地方幹部との間に腐敗の構造が出来上がっています。その腐敗構造に係わっている全ての人にとって、不動産価格が上昇し続けることは最大の利益です。言い換えれば、腐敗構造の存在が行政措置による不動産価格抑制を非常に難しいことにしています。

 

昨年からの財政刺激策も不動産価格高騰を助長しています。と言うのは、4兆人民元(日本円で約53兆円)にのぼる追加財政支出の殆どは国有企業に注ぎ込まれ、社会固定資本の形成と住宅建設などに使われてきたからです。中国共産党の機関紙「人民日」が発行する都市向けの新聞である「京華時報」の報道によると、昨日(315日)一日の間に、北京市で土地売買成約単価は3回もこれまでの高値記録を更新しました。前例のない高値で落札した業者はいずれも中央政府に直属する大手企業の不動産開発子会社で、それぞれのグループの中心事業は不動産開発とは何の関係もないタバコ製造、海運、そして兵器製造です。即ち、大手国営企業は今の地上げにおいて中心的な役割を果たしています。この事実は、大手国営企業は他社より手元資金が豊富であること、そして、政府指導者の不動産価格抑制発言にも係わらずブームが終わらないと考えていることを反映しているように思われます。

 

今まで遂行してきた大盤振るいの財政刺激策と金融緩和との政策ミックスの結果、インフレ期待が高まり、そのインフレ期待が不動産ブームを支えている側面もあります。事実、中国人民銀行が今日(3月16日)発表した2010年第1四半期都市住民意識調査結果によると、今の物価が高すぎると考えている住民は51.0%に達し、そして65.6%の住民は4-6月期に物価がさらに上昇すると予想しています。そのインフレ期待と不動産価格上昇との関連は、最近発表された北京大学の頼偉民教授の調査結果によってより明らかになりました。頼偉民教授は昨年後半から半年以上の時間を掛けて60余りの都市を回り、数百名のセールスマンに聞き取り調査をしましたが、そこで分かったのは、今の中国で住宅購入者のうち、8割が投資目的で、居住のための購入は2割しかなく、そして、住宅投資の目的がインフレによる銀行預金目減りを避けるとのことです。この調査結果から見ると、インフレ期待で住宅価格が高騰していますが、インフレ期待が萎んでしまうと住宅市場に流入する資金が細りブームは冷めかねません。そして、一旦、住宅ブームが去り価格が上昇しなくなれば、資金回収の動きが広がり住宅価格が坂道を転げ落ちるように下げ続ける可能性は極めて大きい。

 

このように、今の中国の不動産市場は複雑さと脆弱さを兼ね備えており、言われている不動産バブルのソフトランディングが非常に難しい。

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