中国の都市建設、銀行と金融政策: 呂 新一
中国に何回も行ったことのある人なら、誰もが都市建設のスケールの大きさ、及び建設の速さに感銘を受けます。
中国がそこまで都市建設を速くできる理由の1つは、資金を潤沢に持っている地方政府が主導しているためと見られます。中国では、各地方政府が、都市建設と地方経済振興のため、銀行から資金を調達することをメイン業務とする融資会社を作り、いま、中国全国でこういった融資専門会社が3,800を超えたと言われています。
中国社会科学院が発表したレポートによると、各地方政府がこうした融資専門会社を通して、銀行から借りた資金の残高が昨年で6兆人民元(日本円で約79兆3,000億円)を上回りました。
無論、地方政府がこういった融資専門会社を通じて調達した巨額資金を都市建設にだけでなく、地元にある国有企業にも注ぎ込んでいます。それは中国の国有企業が、効率が悪くても資金繰りに困らない1つの理由であります。
地方政府がこれほど大胆に銀行から借り入れをし、そして、銀行が安心して地方政府に貸す理由は、双方とも政府機関で潜在的なリスクに鈍感であるだけでなく、地方政府の財政収入、中でも土地譲渡収入が担保の役割を果たしているからと見られます。
今の中国で、地方政府の財政収入の半分程度が土地譲渡金です。中国国土資源省2月2日の発表によると、2009年の全国土地譲渡面積が2008年より38%増え、譲渡額が約1.6兆人民元(日本円で約21兆1,700億円)と、2008年より63.4%も増えました。しかし、土地譲渡収入に頼る財政は非常に不安定なもので、将来的に土地価格が下落に転じるのか、又は譲渡できる土地が少なくなるかで、地方政府に借金返済の手立てがなくなります。
そもそも、地方政府およびその傘下にある各種機関、外郭団体、国有企業などは事業の採算に無関心であり、それに加え、融資専門会社には事業への監督権がないため、調達した資金が用途不明になり、又は株式投資に充てられたことがよくあります。このような状況ですので、融資専門会社のうち、債務超過に陥り実質的に倒産したものは少なくありません。
今年に入ってから、中国人民銀行が金融政策を緩和から適切な緩和(実質的には引き締め)へと舵取りを変更しました。しかし、このような政策転換が地方都市でかなり難航すると思われます。というのは、まず、各地にある大手銀行の支店長が地方政府のトップからの融資要請を断りきれない可能性は大きい。そして、最も重要なことに、各銀行が既に巨額な資金を地方政府に貸してしまったため、ここで、色んなプロジェクト、色んな関連機関を抱えている地方政府の資金繰りに助け舟を出さないと、万が一、地方財政が破綻したら、貸した資金が戻らなくなります。言い換えれば、銀行は既に巨額な資金という人質を地方政府に取られてしまいました。
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