米株の調整が長引く可能性: 呂 新一
1月21日、ホワイトハウスより金融規制改革案が提案されたことを皮切りに、米株が調整過程に入りまして、S&P500種を見ると、2月5日のザラ場で1,046ポイントまで下落、1月19日の1,150ポイントからの調整が9%を超えました。最も、ここ2週間、株価が回復する過程にある(昨日、S&P500種が1,108ポイントで引けた)が、依然として予断が許されません。
筆者の経験によれば、ゴールドマン・サックス証券が米株式市場の1つ優れたインディケーターで、そのゴールドマン・サックス証券の株価は昨年10月にリーマン・ショック後の戻り高値を付けたあと、ずるずると下がり、今でも昨年10月の水準を18%ほど下回ったままです(下記チャート参照、ブルーラインはGSで、レッドラインはS&P500種)。振り返って見ると、筆者は米株が今回の調整を迎える前の1月13日に、本欄において、「米株の上値が重たくなる可能性」をタイトルとするブログを書きましたが、ゴールドマン・サックスの株価が下落していたことも当時の1つの根拠でした。
ファンダメンタルズを見ても、米株がここで直ぐに新たなブルマーケットに突入する可能性が低いように思われます。例えば、昨年第4四半期のGDP速報値が、前期比年率5.7%の増加と事前予想の4.7%増を上回ったが、最大の押し上げ要因は在庫削減動きの鈍化で、それによるGDPへの寄与度が3.4%にもなりました。無論、企業が年末よりも早い時期に在庫削減を進めた理由は減価償却を奨励する税制にあり、その税制の効果が一巡すると、GDPを押し上げる効果も薄れていきます。
さらに、リーマン・ショック後、日米の株式市場よりいち早く回復を見せていた新興国株価指数(モルガン・スタンレー証券作成)も、ここに来てもたつきし始め(下記チャート参照)、今回世界的な株価調整が長引く可能性を示唆しています。
最後に、中国を見てみます。中国は昨年8.7%のGDP成長を達成、世界経済成長の半分を占めました。ただ、8.7%の成長の内、最終消費、投資、貿易の寄与度はそれぞれ、4.6%、8.0%、-3.9%で、GDPの投資依存は異様で突出していました。このような成長パターンは、国家財政、投資効率、又は環境への影響など様々な点から見ると持続し難いと思われます。言い換えれば、今年の中国経済は昨年ほど(表面上の)強さを見せない公算が大きい。
その可能性を警戒しているように、中国上海総合株価指数が再び3,000ポイントを下回りました(下記チャート参照)。
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