« 好きなことだけをやればいい、中村修二、バジリコ出版 | トップページ | 先ずは数字、リスク選好なるも金利低下 »

2010年2月17日 (水)

米中の景気比較 ― 問題はどこかに潜んでいるより発見された方が良い: 呂 新一

人間社会は経済発展、或いはもっと単純に富を追求することを目標にすると、その方法がアメリカのように個人の欲望に任せきりにせよ、または中国のように政府が主導するにせよ、短期の経済成長・損得に目が奪われ、長期的な視野を持ち難くなります。

 

言い換えれば、富のために富を追求することは、人類の永遠の課題である経済・社会の安定に多くのリスク要因を持ち込み、経済構造そのものを不安定にしてしまいがちと思われます。このように、経済構造に不安定要因が多いとの現状を踏まえると、不安定要因を早期に発見し解決することは、不安定要因を知らないよりずっとましであり、安心できると思われます。

 

このような目で最近の米中経済を見ると、巷で言われているようなことと違う構図が浮かび上がります。一般的な見方ですと、今までの間、アメリカの景気回復力が非常に弱く、商業用不動産市場の崩落も続いており、アメリカ経済の将来が非常に危惧されます。他方、西側諸国が苦境に陥り喘いでいると対照的に、中国は昨年8%超の経済成長を達成、今年にも日本を追い越し世界2番目の経済大国になり、今後、中国経済という追い風に乗らなければいけない、とのようなことになるでしょう。しかし、問題が常にどこかに隠れているとの考え方からすると、アメリカ経済が今ぶつかっている問題は新しい問題ではなく、不動産バブル期に作った問題であり、そういった問題が顕在化し米経済に深刻なダメージを与えたが、今は米政府・国民がそういった問題の後遺症、そして問題自体の解決に取り組んでおり、何らかの改善が期待されます。言い換えれば、今の米国経済は不動産バブルが絶頂期にあった2006年より希望・将来性があると思われます。一方、中国は政府主導・供給過剰という不健全な経済体制・体質のままで、世界経済が冷え込む環境下でも8%の成長の既定目標を達成するため、4兆人民元(日本円で約60兆円)の天文学的な数字の金額をばらまきました。その結果、中国の高い経済成長は世界から称賛を頂いたが、根底にある歪みをさらに深刻化し、拡大してしまった恐れが大きいと思われます。言い換えれば、今の中国経済は景気刺激策を発動する前に比べより不安定になった可能性があります。

 

中国経済がより大きな問題を抱えるようになったことの証拠に、1月18日に次ぎ、中国人民銀行(中央銀行)が今月12日に再び預金準備率を0.5%引き上げたことが挙げられます。1ヵ月未満の間に、2度に亘り預金準備率を引き上げたことは、不動産バブルが大きくなりすぎて崩壊の危機が近づいているのか、又はインフレの脅威が台頭しているのかを示唆しているように思われます。中国の政策は、いつも、内緊外松(中国語で、表向きは何のこともないように平静を装うが、内部では緊張感でピリピリになっていることを指す)で、経済の本当の姿は政府高官の発言または統計数字というより、最新の政策動向から推測したほうが実態に近いでしょう。

 

今年1月も全国の不動産平均価格が前年同月比9.5%上昇したなど、中国の不動産バブルは膨張し続けています。不動産バブルの膨張は、少なくとも、次のような幾つかのルートを通じ中国経済に悪影響を与えることになると思われます。

 

一、 不動産バブルに銀行のバランスシートが人質として捉えられ、ほかの産業への融資余力がなくなってしまうこと

二、 子の住宅購入に親が惜しみなく貯金を差し出したため、1戸の住宅が売れたことで2家族(2世帯)以上の関係者(国民)が消費余力を失うこと

三、 オフィス・店舗家賃が高騰したことで民業、特に零細商業が圧迫されること

四、 2030代の若者がこのままでは一生住宅を買えないとの不安・不満に捉われ、理想に燃え、新しいことにチャレンジする所ではなくなること。

 

無論、さらに恐れるべきことは、いつか、不動産バブルが崩壊してしまうことです。ソフトランディングができず、不動産バブルがついに崩壊してしまうと、それこそ、中国経済は数年間立ち上がれないほどのダメージを受けることになります。

野村雅道と楽しい投資仲間達おすすめFX会社

|

« 好きなことだけをやればいい、中村修二、バジリコ出版 | トップページ | 先ずは数字、リスク選好なるも金利低下 »

4呂新一」カテゴリの記事

中国事情」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 好きなことだけをやればいい、中村修二、バジリコ出版 | トップページ | 先ずは数字、リスク選好なるも金利低下 »