米株の上値が重たくなる可能性: 呂 新一
米株は昨年3月上旬にボトムアウトして反発上昇する過程に入りまして、今月でちょうど10カ月経ちました(下記チャート参照)。
この10カ月の間、経済指標は改善する傾向にあり、投資家心理も徐々に強気に傾き、今となっては米株再び調整局面を迎える可能性を語る人が殆どいなくなりました。
しかし、上記のS&P500種のチャートをよく見ると、1200ポイントに近づくにつれ、上値抵抗が強くなり、株価がすらりと1200ポイント乗せ出来るのかどうかまだ分かりません。事実、S&P500種の1200ポイントは、過去何回も重要なサポート又は抵抗ラインの役割を果たし、2005年には株価が1200ポイントを突破しさらに上昇するには1月から6月まで6カ月ほどの時間を費やしました。また、Investors Intelligence Advisory社の最新のサーベー(下記チャート参照)によると、先週、市場の弱気心理が過去3年の最低水準を更新しました。言い換えれば、殆どの投資家はこれからも株価が上昇し続けると確信しており、彼らが既に買い出動したとすれば、市場に残されている買い余力はかなり小さいと考えられます。言い換えれば、今回も、S&P500種が1200ポイントを突破し、さらに上昇するには時間がかかる可能性があります。
これからの米景気、ひいては米株価の足を引っ張る可能性の高いファクターは依然として住宅市場である可能性が高い。過去2年の間、720万人ほど仕事を失いました。労働省が8日発表した昨年12月の雇用統計も、非農業部門の雇用者数は前月に比べ8万5千人減少し、失業率は10.0%と、改善は見られませんでした。雇用情勢が改善しない限り、住宅ローンを払えない人が増えていくと簡単に想像できます。事実、OCC(通貨監督庁)とOTS(貯蓄金融機関監督庁)が最近共同で公表したデータによれば、昨年第3四半期にプライム住宅ローンの支払いを60日以上も延滞したケースの比率(延滞率)が3.2%まで上昇し、一昨年同期の2倍となりました。
おりしも、住宅の1次取得者に対する8000ドル(約73万円)の税額控除は今年4月末に打ち切られ、1次取得者の減少が考えられます。また、米国勢調査局が昨年10月29日発表した調査結果によれば、昨年7~9月期の空き家の数は約1,880万戸と、一昨年同期1,840万戸から40万戸増えました。こうした膨大な数にのぼる空き家のうち、住宅ローン滞納者からの担保物件差し押さえがかなりあり、そのうち、銀行が在庫(金利+保守)負担に溜まりかねて、差し押さえた物件を大量に競売に出すと、住宅市況が再び悪化可能性が高い。
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