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2010年1月27日 (水)

ギクシャクし始めた米中関係: 呂 新一

ここにきて、米中関係は刺々しいものになっています。

 

まず、貿易の面では、米政府が昨年12月末頃中国製の油井管に対して相殺関税を課すことにしました。そして、理念・価値観の面においては、今月のグーグル中国撤退を巡り、米政府が中国のネット検閲を強く批判し続けています。さらに、中国の国防・主権に係わる点においては、米政府が台湾への武器売却を決めた他、オバマ大統領がダライ・ラマと会談する予定になっています。

 

このような米国の態度について、中国国内で反感が高まっています。反発する人の中には、貧富の差が極端に広がっている現状に不満を抱き、(党幹部を除けば)皆が同じく貧乏であった毛沢東当時の革命社会に郷愁を感じ、資本主義・資本主義の国なら何でも反対する人達がいれば、政権の力を巧みに使い私腹を大いに肥やし、これからの中国の時代で、自分たちの時代であると思っている人達もいます。

 

事実、いま、中国の学術界で、このような言い方が流行っています。1949年(革命成功の年)、社会主義が中国を救った;1979年(改革開放が始まった年)、資本主義が中国を救った;1989年(天安門事件の年、ベルリンの壁が崩壊し東欧諸国がドミノ倒しのように社会主義を放棄した年)、中国が社会主義を救った;そして、2009年、中国が資本主義を救った」。そのような認識(自信)のもと、一部の中国の知識人は、これから中華文明が人類に新しい希望、新しい選択を提供する時代であり、中国が自らの価値観を輸出する時代であると唱えています。

 

しかし、人権尊敬を絶対的であるとする西側社会が、自国民に世の中の出来事を正確に知る権利を与えない中国政府の言う価値観を受け入れる可能性はほぼゼロであり、言い換えれば、今のままでは、米中間に横わたっている大きな溝が消えそうにありません。

 

さらに言うと、今後、中国の経済規模がますます大きくなるにつれ、米中間の摩擦が一層高まる恐れは十分にあります。それは、中国国内で、もう西側の“言いなりになる”必要はないとの考えが広がる一方、米国内では、大きくなる中国の存在を一種の脅威とする見方が強まる可能性が高いからです。

 

このように米中両方に高まっている対立感情(衝突)は、世界経済にとって良いことは何もありません。中国は自国経済の成長のため、米国の市場・米国の技術を必要である一方、米国は自国の財政安定・景気回復のため、中国に国債を購入してもらい、中国の国内市場をぜひとも必要です。特に、世界景気が依然非常に脆弱である現在、第1の経済と第2の経済になろうとしている中国の間に軋轢が高まれば高まるほど、世界経済の先行きがより不透明になるだけです。

 

このことの株価への影響を言うと、悪い影響だけと言えます。

 

我々は、113日の本欄において、「米株の上値が重たくなる可能性」について論じましたが、ここにきて、米株が調整しています。今後の米株価の動きについて言うと、これまでの上昇で、既に景気回復、企業の良い決算などを織り込んだため、今の調整が終了し株価が再び上昇し始まるとしても、これまでにつけた年初来高値を大きく上回ることは考えにくい。むしろ、そのような反発が一時的なものに終わり、その後、長い調整期に入る可能性が大きいと思われます。

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