« もう君には頼まない | トップページ | 先ずは数字、ドル以外何でも下げ »

2009年12月 9日 (水)

中国―GDPの8%確保と病んでいる住宅市場: 呂 新一

月曜日に閉幕した中央経済工作会議が、2010年も「積極的な」財政政策と「適度に緩和的」な金融政策を継続することは日本でも大きく報道されました。

 

一方、多くの中国国民は、住宅購入支援措置が継続されるかどうかに強い関心を持っていました(蓋を開けてみると、「戸籍を持っている者の住居ニーズと住居環境改善ニーズをサポートする」と明記され、支援措置の継続がほぼ確実のようです)。

 

というのは、今の中国で、住宅価格の高騰が民衆にとって深刻な問題になっています。

 

中国社会科学院が7日に発表した青本は、今の住宅価格では、85%の世帯が全く買えないと結論付けました。青本が用いた基準は年収の36倍以内ということですが、今の中国では、住宅価格は都市部住民年収の8.3倍に、都市部に来ている出稼ぎ農民に至っては、年収の22倍にもなっています。

 

中国では、住宅について固定資産税がないうえ、遺産相続税も徴収されず、カネ持ちにとってはインフレヘッジ、投機または資産を子供に移転するための格好の道具と化けています。そして、今年になってから、景気刺激のための資金が大量に住宅市場に流れ込んだことも住宅価格の高騰に拍車をかけました。

 

高い住宅価格が社会問題化しつつあります。昨日(128日)、上海市の地下鉄電車の中、一人の青年がテントを張り、「持家はないがそれでも恋人を募集している」と印字しているTシャツを着て、周囲に住宅難をアピールしました。

 

Photo

 

住宅価格がここまで高くなると、中央経済工作会議がいくら現代化・都市化の一環として、出稼ぎ農民の都市部への定着を訴えても、出稼ぎ農民は住宅を買えず、結局都市部に定住することはできません。

 

また、今年になってから、地方政府が建設用土地を取得するため民間の住宅を強制取り壊しにかかり、それに抵抗する持ち主が焼身自殺を図る悲惨なケースは、内モンゴルの赤峰市、四川省の成都市、そして山東省の青岛市で少なくとも3件発生しました。特に成都市のケースは、47才の女性が焼身自殺(下の写真)で亡くなった後、地元政府によって“暴力で公務執行妨害”と言い渡され、ネット上で白熱した議論を巻き起こしました。

                                 Photo_2

 

このように、中国人にとって、高嶺の花となった住宅をどう取得するのか、そして取得したとしても本当に自分のものになったのか、悩みのタネが尽きません。

 

無論、中央政府はこのような現状を知っていると思われます。ただ、社会安定を図るため、雇用を創出するため、8%以上のGDP成長はどうしても達成しなければならない。その8%の成長に住宅産業は不可欠であり、中央政府としても下手にいじることはできません。

 

事実、筆者が先々週中国へ一時帰省した際、故郷の大通りの両側に沢山の店が並んでいることを発見しました。2年前ではそれほどなかった筈です。そこで、よく見てみると、大半の店が住宅ブームの申し子であることが分かりました。というのは、建築用鉄筋・角材、水道パイプ・ガラス、タイル・塗料、大工道具・木材販売など、建築関連の専門店は非常に多く、日本では全く見られない風景です。このことは、今の中国で、住宅建築ブームがいかに景気を支え、雇用に貢献しているのかを如実に表しています。

 

それにしても、中国は、今、国民の生活安定に深くかかわっている住宅価格の安定を優先するのか、それとも高いGDP成長率を優先するのか、厳しい選択を迫られているように思われます。

野村雅道と楽しい投資仲間達おすすめFX会社

|

« もう君には頼まない | トップページ | 先ずは数字、ドル以外何でも下げ »

4呂新一」カテゴリの記事

中国事情」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« もう君には頼まない | トップページ | 先ずは数字、ドル以外何でも下げ »