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2009年12月31日 (木)

2010年豪ドル見通し:津田

2010年豪ドル見通し

30 December 2009

(豪ドル米ドル)
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(豪ドル円)
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(米ドル円)
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(ユーロ米ドル)
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NYダウ)
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(金)

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1.2009年の豪ドル相場レビュー

本年のレンジ AUD USD 0.6262 (3/2)- 0.9426 (11/16), AUDYEN 55.56(2/2)-85.32(10/23)

本年の豪ドル相場は、一言で言えば“激動の2008年世界金融危機による大暴落の後の回復の年”であったと言える。しかしこれは豪ドル相場のみならず、上チャート:ユーロ、株(NYKダウ)、金価格などほとんどのアセットの動きに共通しているものであり、唯一例外は下落基調を強めた米ドル円の動きであろうか。さて豪ドルは2月から3月の底値圏で62セント台、55円台の年間安値をつけたが、4月以降上昇に転じ、6月~8月には77セント-84セント、70-82円の中段保合を形成。10月以降再度上昇に転じて11月に年間高値94セントまで上昇。豪ドル円も10月に年間高値の85円台を付け、その後年末に至るまで概ね高値圏において揉み合い相場となっている。
安値から高値までの変動率は豪ドル米ドルが51.6%、豪ドル円が54.5%でこれはユーロ米ドルの20.1%、ユーロ円の24.2%などよりはるかに大きく、上昇率は主要通貨中最大となった。
昨年末の「2009年見通し」で“年前半は軟調、後半は堅調を取り戻す”と述べ、また“世界経済見通しの上方修正の可能性もあり”と指摘したが、概ねその見方は間違っていなかったようである。ただ豪ドルの上限を80セント、80円としたのは、控えめ過ぎるたというか、やはり豪ドルらしい投機的な買いが予想を上回った形となった。
年前半は昨年後半の急激な世界経済の悪化が尾を引き、リスク回避色の強い相場展開で豪ドルも62セント(3月)、55円(2月)の年間安値を付けた。しかし国際協調的な景気刺激策の導入に支えられて世界的に株価が3月にボトムアウトし、結局年間を通じて株価はリーマンショック前の水準とまでは行かないが、年初を越して高値引けとなった。
このような中、通貨市場における今年の特徴はやはり“ドル安の進行”であろう。昨年の金融危機に際して逃避先として買われたドルの売戻しが活発化したが、その背景は巨額の米国財政赤字の存在や、ドルに代わる準備通貨代替論の活発化、更には米低金利政策の長期化などがあった。特に年後半世界経済が回復基調になるに従い市場におけるリスク許容度が拡大し、ドル売り/オセアニア通貨・欧州通貨買いが活発化し、豪ドルも11月には年間高値の94セント台を付け、また豪ドル円も10月には85円台まで上昇している。
この豪ドル堅調の背景として中国などアジア経済を初めとした世界経済の回復基調から商品需要が増加したことが大きいが、国内面でも豪州当局の財政・金融両面からの景気刺激策が奏功して、いち早く今年の第1四半期にリセッション入りを回避し、景気が予想以上に回復したことから、RBAが他の主要国に先駆けて10月以降3月連続で利上げを行い、金融引き締めに転じた影響が大きかった。

2.2010年の豪ドル見通し

☆キーワードは出口戦略、景気の二番底、米ドル動向(米ドルの下落)、新興国バブル、リスク分散
メインシナリオ-世界経済の回復が継続し、金利格差や資源通貨としての強みから、豪ドルの堅調地合いを予想。ただし不安材料も山積し、一方的なの上昇トレンド形成とはならない。今年他通貨より先行して上昇した分、“息切れ”に要注意。
予想レンジ : AUDUSD 0.75-0.95AUDYEN 75-95

サブ(リスク)シナリオ-豪ドル再度暴落。景気後退の更なる長期化、主要国の巨額財政赤字拡大、新興国経済のバブル崩壊などの悲観的シナリオが現実となり、再びリスク回避の動きが活発化して豪ドルは暴落。今年の安値を下回る50セント、豪ドル円50円を目差す展開に。

<サマリー>
今年の豪ドル相場は“復活の過程”という“くくり”で説明ができ、ある程度予測しやすい展開であった。しかし来年の相場は若干面倒な展開となりそうだ。つまり中国初めアジア新興国の成長や、先進国の景気対策を受けて、いよいよ世界経済は今年にも増して力強い成長路線に復帰するとの希望的観測がある反面、IMFなどが警戒するように回復のペースが再び鈍化するという、いわゆる“景気の二番底”の懸念も払拭できない。
メインシナリオは世界経済が金融危機前の状態に復活する動きが継続するというもので、米国を初め主要国の出口戦略が更に鮮明化し、世界的に“緊急低金利政策”からの脱却が進む。ただし各国の経済の優劣が更にはっきりとしてくるために、今年見られた国際協調的金融政策の実施が困難になり、各国の体力を反映した独自の金融政策へと移行していくであろう。したがって今年見られたリスク許容度の拡大・縮小がメインテーマの“全通貨右へならえ”の動きから通貨別の優劣を反映したマチマチの動きになることが考えられる。経済が落ち着きを取り戻せば再び「通貨分散投資」が活発化するであろう。係る中、米ドル安の大きな流れに変化はなかろうが、一方ドルの暴落も想定しにくい。緊急事態が発生すればやはりドル資産への逃避が起こるであろう。
このような通貨市場において豪ドルのメインシナリオも更に二つの可能性に分けられ。一つ目は世界経済の回復=資源価格の上昇=豪州経済の拡大=金融引き締め=豪ドル高の構図。二つ目は今年金融引き締めの先陣を切って大きく上昇した豪ドルであるが、来年はその他主要国も金融引き締めという観点からは豪ドルにキャッチアップしてくる。つまり今年先行した分の反動・揺り戻しが来る可能性があるということ。為替はあくまで通貨の相対比較の問題。豪ドルの好材料を市場が織り込んだ後、ポジションが溜まれば何らかの悪材料に反応して反落する可能性も十分ありうる。メインシナリオは景気の楽観論がベースとなっているが、次に述べるリスクシナリオの可能性を秘めつつの楽観論というべきであろう。
サブシナリオ(リスクシナリオ)はすなわち、種々の悪材料が表面化するいわゆる“景気の二番底シナリオ”である。主要国における景気後退が更に長期化、雇用情勢の深刻化、財政収支の著しい悪化からの長期金利の上昇、デフレリスクなどが表面化する。また新興国のバブル崩壊、巨額の財政赤字を抱える米国における赤字ファイナンス不能という局地戦では終わらないデザスター・シナリオの可能性も無しとはしない。
係る要因からリスク値が増大する場合には再び米ドルが安全資産として買われる局面が予想されるが、しかし米ドルの安全資産というステータスもリスクと表裏一体。一旦米国財政赤字がサステナブルでなくなれば、それは米ドル暴落のワーストシナリオに繋がる。米国の崩壊はすなわち今回の世界金融危機の再来であり、世界景気は二番底を通り越して新たな深みへと沈み込むことになる。いずれにしてもサブシナリオ下において豪ドルは再び暴落を演じることになる。

次に相場予測上のキーポイントを項目別に見てみよう。

1)世界経済---経済成長はプラスに転じるが懸念材料も多い
IMF世界経済見通し(10月)
                               (単位:%)

2007

2008

2009年(予想)

2010年(予想)

5.2

3.2

-1.1

3.1

IMFは今年と来年の見通しについて、7月時点からそれぞれ今年-1.4%→-1.1%、2010年についても+2.5%→+3.1%に上方修正しているが、一方来年は回復ペースの鈍化懸念も表明している。またOECD11月に発表したOECDの各国・地域の成長見通しは次のようになっている。
                               (単位:%)

2009

2010

2011

米国

-2.5

2.5

2.8

日本

-5.3

1.8

2.0

ユーロ圏

-4.0

0.9

1.7

OECD全体

-3.5

1.9

2.5

つまり、来年も世界経済の拡大に新興国の成長が欠かせない状況が続く。しかし未だに景気の二番底懸念や新興国におけるバブル崩壊の可能性など不安材料も多く、あまり楽観しできない状況にある。

2)豪州経済---来年は潜在的成長率である3.25%への拡大が期待される

豪州経済見通し  (2009,2010年は予想)                 (単位:%)

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

3.0

3.9

2.9

2.7

4.3

0.3

1.75

3.25

昨年は世界同時不況を受けて豪州経済もかろうじてレッドナンバーを免れて+0.3%の成長に留まったが、今年は財政・金融両面での景気刺激策の実施を背景に消費者及び企業信頼感が大幅に改善し、個人消費や住宅部門、更には資源価格の大幅上昇が外需を支え、先進国でも最上位の成長率を達成できた。来年についてはRBAの四半期金融政策報告(11月)を見る限り更に成長の加速が予想されているが、不安材料も目に付く。つまり政府の景気刺激策の効果が剥げ落ちると同時に今年第3四半期あたりから民間設備投資が細っていること、更には外需についても来年の世界経済動向次第では輸出の伸びが減速し、豪ドル高の影響もあって貿易赤字が拡大する可能性があることなどであろう。

3)RBA(豪州準備銀行)の金融政策・金利格差---来年豪州のオフィシャルキャッシュレートは歴史的中庸レベルである5%前後への上昇が予想される

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今年先進国がほぼゼロ金利に近い緊急的低金利政策を維持する中、RBA10月から3ヶ月連続で政策金利(オフィシャルキャッシュレート)を25bp引き上げて歴史的な低水準の3%から現在3.75%とした。RBAは先進国で最初に明確な金融引き締めサイクルに突入したが、その背景は住宅バブル懸念もさることながら、やはりインフレ率(アンダーライイング・インフレーション)がRBAのターゲット2-3%を上回る3.5%前後に上昇していることであろう。来年RBA予想が正しくて3.25%の潜在成長率を回復するのであれば、政策金利も歴史的中庸レベルといわれる5%前後へ上昇すると見るのが妥当であろう。他の主要国も遅かれ早かれ出口戦略を実施することになると思われ、各国当局の言動とは裏腹に特に米国は資金吸収準備を怠らないと思われるが、豪州金利も同様またはそれ以上のペースで上昇するであろうことから、当面豪ドルの金利面での優位性は揺るがないであろう。また現在米豪10年債利回り格差は豪州が5.5%、米国が3.5%で約2%あるが、この金利差は今年年間を通して概ね2%前後であった。ただ来年は巨額の財政赤字を抱える米国財政赤字が更に悪化し長期金利上昇圧力が高まれば長期金利格差が縮小する可能性も否定できず、その場合には投資家心理にも影響することになろう。

4豪州財政赤字---13年ぶりの財政赤字に転落

今年年初の金融危機対策としての過去最大規模の420億ドルの景気刺激策導入(GDP3.5%規模)を受けて豪州は13年ぶりに財政赤字に転落したが、今年5月の連邦予算案によると2009-2010財政年度における財政赤字は576億豪ドルと過去最大となりこれはGDP4.9%に相当する。過去13年豪州は赤字国債の発行を必要としなかったが、今後巨額赤字のファイナンスを海外投資家にも依存せざるを得ない状況となる。ここで想起されるのは1990年代初頭の財政赤字期において、政府が高金利、豪ドル高政策で海外資金の流入を図ったことであるが、今後国債発行額の急増とともに海外投資家誘致のためにもある程度の豪ドル高を許容する方向に進むのかもしれない。

5)米ドル動向---長期的には下落傾向。しかし暴落はない

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外貨準備における米ドル、ユーロ、円の割合          (単位:%)

95

96

97

98

99

00

01

02

03

04

05

06

07

08

09

USD

59

62

65

69

70

70

70

66

65

65

66

65

64

64

62

EUR

17

18

19

24

25

24

24

25

26

26

27

YEN

6

6

5

6

6

6

5

4

4

3

3

3

2

3

3

上図及び表を見て気づくのは1998-2001年あたりで外貨準備における米ドルの割合が上昇している時は米ドルインデックスも上昇した。また昨年末から今年前半にかけての米ドルインデックスの上昇“小山”は金融危機からの逃避資産が米ドルに向かった結果であった。
世界的な通貨分散投資の影響を受けて米ドルの外貨準備における割合は今後とも漸減していくであろう。これは歴史的事実であり、代りに近い将来ある種の代替通貨や中国元などの割合が増加するのかもしれない。しかしたとえばゴールドマン・サックスによる2050年の世界GDP予想など見ると(少し話は飛躍するが)世界のGDPトップ3は中国70兆ドル、米国38兆ドル、インド37兆ドルとなっており、米国は今後も長きにわたって世界の主要国であり続ける可能性が強い。米国の巨額の財政赤字や経常赤字、つまり昔懐かしい“双子の赤字”という言葉が再度復活しており、米経済の回復にも不透明感が漂うが、他方、その他主要国の景気も前述の“OECD成長見通し”を見ても米国に劣る状況である。通貨面に置いもデザスターシナリオに基づく米ドル暴落の可能性を100%排除するわけではないが今後とも米ドル資産(時に米債)は緊急時の逃避先となり、米ドル需要も継続するものと思われる。歴史的に見てもやはり米金利上昇局面となれば、米ドルに再び資金が流入する可能性があろう。

6)商品相場

CRB Index

Image018

今年商品相場は多くのアセット同様に昨年の暴落から徐々に回復基調となった。特に3月の世界的な株価の底入れ以来、世界的に株価の上昇が顕著となり、主要国の株価インデックスは年初よりも高い陽線引けとなるであろう。係る中、商品相場(CRB Index)はさすがにバブルの絶頂であった昨年7月の史上高値圏(473)と比べてこの年末で280と控えめなものであるがこれは金融危機の影響で投機資金のパイの大きさが激減したことによろう。今年の商品相場を特徴付けるものの一つは金価格がこの12月に1オンス1226.50の史上高値を付けたことであろう。(最初のチャート参照)。金は金融危機時にあっては逃避先として、また景気回復期待が高まり出した後には、世界中で投入された巨額の景気刺激対策資金が将来的にインフレ懸念を再燃させるとの思惑もあり、一気に昨年3月の従来の史上高値1033ドルを突破した。
一方、投機的な相場が建たない石炭・鉄鉱石など豪州の主力鉱山輸出品はどうであろうか?今年年初の石炭、鉄鉱石価格交渉は世界の景気後退真っ只中で昨年比4割近くの大幅値下げであった。しかし来年度の価格交渉(来年4月には決まる)では逆に4-5割値上げという強気の情報も聞かれる。来年の世界景気に対する不透明感と投機資金のパイの縮小を背景に昨年夏に見られた“幻の資産バブル”の再来は予想できないが、世界経済の二番底が現実味を増すことがない限り、商品相場もある程度の堅調地合いを維持するものと思われる。

 A Happy New Year to you all !!!”

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Joe Tsuda


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