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2009年11月11日 (水)

米中両国のチープマネーの後: 呂 新一

7日にスコットランドのセントアンドルーズで開催されたG20で、関係各国が景気刺激策を維持していくことを合意したと伝えられた。

 

このような結論になるのはある程度予想されたものです。というのは、今の世界経済の2大主力であるアメリカと中国を見ると、アメリカは、つい先日発表された10月の失業率が10.2%という26年半ぶりの高水準まで上昇しまして、景気刺激策からの脱却を議論できる状況にありません。一方の中国は、8月に緩和的な金融政策からの脱却を試みたが、株価急落という市場の反撃を受け、その後、景気刺激策の維持が不動のものとなりました。

 

無論、この世界には、イスラエル銀行が8月24日政策金利を0.25%引き上げ、オーストラリア準備銀行が10月7日、そして11月3日連続2回で政策金利を合計して0.50%引き上げ、ノルウェー中央銀行が10 29 日政策金利を0.25%引き上げたなど、景気刺激策からの脱却を進む動きもありますが、大きな流れにはまだなっていません。

 

現行のアメリカの超低金利が長期化する見通しがより鮮明になったことで、投資家はさらに安心してドルを売ることができ、その証として、昨日、ドルインデックスは一時、08年8月以来の低い水準まで落ちました(下記チャート参照)。また、今までのパターンからみると、ドル安(チープマネー)が株価を押し上げ、商品市場などを含め、1つのバブルを作り出す可能性があります。

 

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ただ、世界の基軸通貨であるドルが周りに何の悪影響も与えず長期下落していくことは考えにくく、仮にその途中で何らかの混乱が起こっていれば、既に実体経済の回復を遥かに先行している株価が大きく躓くことは十分に考えられます。また、逆に何らかの理由でドルが下落傾向から回復するトレンドに転じる際も、米株価は大幅調整する可能性があります。

 

他方、最近の米国の対中経済戦略を見ると、自国の苦境を反映しているためか、ムチの方は多くなったと思われます。今のオバマ氏が、トウ小平氏の弟子にでもなったように、「白猫であれ、黒猫であれ、ネズミを取っていれば良い猫である」の教えに従い、自国市場を守るために自由貿易の原則を捨て、無闇に色んな中国製品に高額の反ダンピング関税を課すことにしました。さらに、中国に対しては、人民元の切り上げも求める計画であると伝えられています。

 

こうして見ると、今の米中間の貿易摩擦が前世紀80年代後半の日米貿易摩擦に共通点があります。当時の日本は、結局、円高の圧力下で内需に活路を求めることになり、不動産バブルを引き起こしてしまいました。そして、今の中国は、輸出主導の経済構造を是正する目的と8%の成長を確保するとの大義名分下で不動産バブルを作り出し、それを膨らませています。

 

中国の不動産バブルの進行状況を示す1つの例として、浙江省瑞安県のケースを見てみます。瑞安県の中心都市である瑞安市は未だに映画館が1つもない地味な町ですが、ここにきて不動産投資(投機)熱が頓に高まってきました。まず、500メートルにもならない東の大通りに今年になってから70件前後の不動産仲介業者が現れ、その多くが客引きするために、毎日、無料のランチを提供しています。そして、地元にある銀行支店は預金総額の90%にも相当する大金を不動産融資に回し、今、不動産投資に充てられた資金が日本円で4,500億円を超えたと言われています。さらに、田舎のおばさん達も不動産投機に手を出し、全員参加型で誰もが住宅価格が上昇することこそあれ、下落することがあり得ないと考えて投機に走った結果、新築マンションはスケルトン(内装する前)のままで、廊下、エレベーターホールなども計算に入れて、平均して1平方メートルが2-3万元(日本円で約30-40万円)の高値となっています。

 

無論、このような不動産バブルが長期に亘って持続することは考えられません。チープマネーが不動産バブルを演出していますが、そのチープマネーの勢いが少しでも衰えると、中国不動産市場の大規模な調整、そして銀行の不良債権の急増が避けられません。

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