米株価の今後について考える: 呂 新一
今回の株価反発は既に数カ月という長い時間を経ち、そしてボトムからの上昇率も6割弱(S&P500種)に達しまして、歴史に残る記録となりました。
では、これから株価が反発し続けるのか、或いは今年または来年中に失速し2番底を試しに行くのか、皆が関心のある所でしょう。
言うまでもなく、最終的に株価の行方を決めるのはファンダメンタルズです。今のところ、表面的にファンダメンタルズも株価に遜色なく改善してきているように見えますが、政府による一時的な刺激策の役割が余りにも大きいため、持続力がそれほどないのではと疑われます。
これまでの間、政府が車の買い替えに補助金を出し、一次住宅所得者には8,000ドルにものぼる減税を実施しきました。そして、FRBが金融機関から総額1兆2500億ドルの不動産担保証券購入計画を実施しています。ただ、時間の経過と同時にこういった刺激策が次々に終了することになり(車購入補助策は既に終了しました)、そうなると、景気の本来の弱さが戻ってくる可能性が大きい。
刺激策が終了しても、景気が引き続き順調に回復するには、米経済の7割を占める消費が拡大していく必要があります。しかし、それが非常に期待し辛いと思われます。その理由としては、まず、失業率が長期に亘り高止まりする可能性が高いことです。9月の失業率が9.8%と報道されていますが、実際の失業率はそれより遥かに高いと思われます。仕事探しを諦めた人、そして、そもそも合法的な身分がなく、仕事をしていた時は雇用統計に入らず、今、仕事についていなくても失業者統計に入らない人は沢山います。言い換えれば、雇用の実態が9.8%の高い失業率が示したよりも悲惨ということです。
そして、これまでの間、給料収入のほか、株式投資および住宅価格上昇からの利得も米国民の消費を支えてきました。しかし、昨年から情勢が一変しました。今では、株価がある程度戻ったものの、まだリーマン・ショック前のピークの75%にしかならず(S&P500種)、住宅価格に至っては一部で下げ止まりの兆候が出ているものの、高値回復することはもう無理と思われます。
このように、雇用情勢と保有資産の価格低下が消費の足を引っ張っていますが、消費を抑制するもう1つの要因は、金融危機を経験しさらに環境保護意識が高まったことで、過剰消費を意識的に避けるようになった米国民が増えてきたと見られることです。事実、昨年のリーマン・ショック以後、米国民の貯蓄率が上昇傾向にあります(下記チャート参照)。
このように、米国内の消費ひいては国内市場に期待できないためか、米企業による新興国への投資が非常に盛んであります。S&P500種の構成企業では既に収益の過半が海外から得ている事実から見ると、今後、米企業の収益がますます海外市場、そしてドルの為替レートに依存するようになります。事実、下記のドルインデックス・チャートはドル安が株高の原動力になっていることを示しています。
と言うのは、このチャートはドルインデックスが今年3月にピークを付けてから下落の一途を辿っていることを如実に示していますが、米株は3月にボトムを打ち反発し始まりました。
こうして見ると、米株の反発が今後も続いていくかどうかは、刺激策が切れた後(来年の春以降)、国内消費がどこまで景気を支えられるのかと、ドルがどこまで下落出来、そしてドルが下落しても長期金利が低位安定出来るかどうかにかかっていると思われます。無論、筆者は米国民の消費拡大意欲および混乱を起こさないドルの下落の2点とも疑問に感じています。
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