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2009年10月21日 (水)

中国― 将来のことより目先の成長: 呂 新一

今回の世界的な金融危機から身を守るため、中国政府は色んな手を打ってきました。そのなかの1つは4兆人民元(日本円で約53兆円)にのぼる財政追加支出案です。

 

今までの間、この巨額な財政支出の大半が“鉄公基”(鉄:鉄道;公:公路・道路;基:基礎・インフラ)の建設に注ぎ込まれました。このような政策の結果、バブル崩壊後の日本が経験したように、最初のうち、鉄筋、セメントなど建設材料への需要が増え、雇用も拡大し、一時的にGDPが上向きになるが、やがて、政府が約束したおカネを使い果たし、仮需は消え、鉄筋、セメントなどの過剰生産能力が明らかになるだけでなく、新築された“鉄公基”の多くもそのまま放置され、過剰生産能力となっていきます。

 

現在の中国経済を見ると、国内消費はGDP35%しか占めていません。言い換えると、消費が不足する一方、生産能力が大幅に過剰です。このような状況下で、53兆円の財政支出の大半が再び“鉄公基” に投入したことで、生産能力過剰という歪な現象がさらに歪になりました(そのためか、ここ数日、中国国家発展改革委員会が鉄鋼、セメントなど6業種を生産過剰抑制策の重点対象にすることを発表しました)。

 

中国の住宅価格の高さも中国経済が順調に発展していく上での障害物と思われます。というのは、上海、北京などの大都市では平均住宅価格は既に東京の8割前後までに達し、中国の1人当たりGDPがまだ日本の1/10程度しかないことを考えれば、住宅バブルが非常に膨らんでいることが分かります。

 

最近、日本のテレビがいかに八畳の土地の上で、広く感じさせ住み心地の良い住宅を建設する事例を紹介していますが、中国では僅か8㎡の住宅(シャワーはトイレの上に座ってしかできない狭い住宅)の事例が広く知られています。住宅価格が高騰した結果、若者が結婚できないし、老人たちは大切な預金を引き出して子供の住宅購入頭金に充てています。

 

このような状況ですので、普通では、政府が住宅価格の抑制に乗り出すと思われますが、今の中国は、むしろ、各地方政府が住宅市場を重点産業として保護し、高い住宅価格をサポートしています(事実、7月の新規貸し出しのうち、不動産開発会社向きは1,143億人民元(日本円で約133,000億円)と、全体の32%も占めています)。というのは、多くの地方政府にとって、土地はカネの成る木です。地方政府の指導者たちは出世昇進のため、カネのかかる大型ハコモノを建設し、都市の美化に一所懸命であるが、それにかかるおカネの殆どは土地譲渡により得た資金です。そのため、地方政府にとって高い地価は願ってもない嬉しいことです。

 

事実、北京市の例を見ると、今年第三四半期の地方税税収が昨年に比べ10.1%増えましたが、その中身では、不動産関連税収が273億人民元(日本円で約3,630億円)と、昨年同期より21.5%も増え、全体税金に占める比率が21%まで拡大しました。

 

ただ、このような、当面の経済成長、当面の財政収入のために、将来の可能性、将来の成長空間をつぶしてしまうことは、将来に弊害を残し、長期的な観点に立った施策とは言えません。

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