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2009年9月30日 (水)

中国の国慶節 と 株式相場: 呂 新一

今日は米国の株式マーケットについて書こうと思っていましたが、中国の国慶節(10月1日、明後日)が近づいているため、それについての報道が多くなり、触発され、やはり国慶節について書くことにしました。

 

というのは、今日、中国の各ネットニュースサイトが共に、国慶節当日に予定されたパレートに、名門理工系大学の清華大学の学生達が、「毛沢東思想万歳!」との巨大な看板を掲げてデモ行進することを報道しました。

 

下記の写真はそのリハーサル様子を映っています。

 

Photo

 

毛沢東思想は非常に豊富で多岐に渡り一言二言でサマリーすることはできないが、晩年の毛沢東氏はますます「階級闘争」の重要性を強調するようになり、「階級闘争」という概念は間違いなく毛沢東思想の中心であると言えます。

 

筆者が小学生の時、共産党中央が毛沢東の最新指示を全国民に伝える際、必ずすべての学級が授業を中断し、全員が大講堂に集められ、1時間にしよ、2時間にして、ラジオから毛沢東の言葉が伝えられるまでじっと待つということになっていました。伝えられた毛沢東氏の最新指示は往々にして、一言か二言のようなものでした。

 

その一言か二言かの最高・最新指示(当時はそう形容されていました)のうち、筆者がどうしても理解できず、そのためか今も鮮明に覚えているのは、次の2つです。

 

「八億の人がいれば、階級闘争をしなければならないのではないか」

「階級闘争をしっかりやれば、(経済建設など)すべてがうまくいく」

 

毛沢東の指導下で、中国全国で階級闘争の渦が巻いていました。すべての中国人が成人であれば、14種類に分けられ、そのうち9種類が人民(イコール正義)側、あとの5種類が売国賊、邪魔者或いはゴミカスとされる敵(悪)側とされていました。一旦敵側の”人間”にされると、もう、一生、人間として扱われることはありません。

 

新中国が建国当初、田舎で階級(敵と味方)を分ける際、金持ちであれば敵ということでした。そして、余りにも貧乏な村で金持ちがいないと、一人当たりの土地面積を計算して、多い家族が自動的に敵になります。そこで、このようなこともありました。ある家で御爺さんが病気でなくなった際、持っていた土地を二人の息子に均等に分けましたが、長男に6人の子供がいて、次男に子供がいませんでした。そこで間もなく共産党がやってきて、一人当たりの土地面積を計算した結果、自動的に、長男一家が味方にされ、次男夫婦が敵で制裁を受ける対象にされました。

 

毛沢東が晩年になった際は、建国からも二十数年が経ち、革命当初”敵”というレッテルが貼られた人は死亡で数が少なくなりました。そこで、田舎では毛沢東氏の階級闘争の思想を実践するため、敵の子孫を敵と定義しました。無論、その新しい敵は全員建国後に生まれ新中国で教育を受けた人達です。筆者が10代の時に2年半ほど過ごした村では、ある日、お父さんが革命前でちょうどした金持ちだった男が夜逃げしました。それが、借金返済できないための夜逃げではなく、革命の対象、階級闘争の対象に指定され、間もなく拘束される噂を聞いたための逃走でした。

 

毛沢東氏がなくなって33年が経った今年の国慶節に「毛沢東思想万歳」の看板が復活したが、思うにはその実践が非常に難しくなりました。というのは、革命当時の定義によれば、金持ちが革命・闘争の対象ですが、今の中国で超を付く金持ちの9割以上が高級幹部の子弟で、共産党が身内を闘争の対象にすることは考えられません。では、どうすれば良いのか、清華大学の学生達に聞いてみたくなりました。

 

今の中国では、ところにより地方政府も金持ちになりました。報道によれば、広州市番禹区が主な出資者で800万元(日本円で約1億600万円)を投じて造ったトイレ(!!)928日にマスコミに初公開され、そのトイレの壁に合計500gの金箔も貼られました。

 

下の2枚の写真はそれぞれ黄金トイレの外観と内部です。どうですか?

 

Outlookofthetoilet

 

Insidethetoelet

 

この黄金トイレのオーナーである番禹区政府が革命の対象になるかどうかは清華大学の学生達の判断に任せますが、筆者がここで強調したいのは、このような億ションならぬ億トイレが建設されたことが中国経済、或いは少なくとも中国の官僚たちの発想がバブル状態になっていることの症状です。そのようなバブル化している症状は探せば幾らでもありますが、問題はそのバブルがいつ崩壊するのか、又、中国国民にとってより重要なことは中国政府がどこまで現状を認識し、対応する政策手段を考えたのかです。

 

文書が長くなりました、最後に米国経済と株価について簡単に触れて置きます(詳しくは先週の本欄である「当局とマーケット」を参照にして頂きます)。

 

まず、景気は回復していないことを確認しましょう。先週末に開かれたG20では景気について前より大分楽観的になりましたが、しかし、決して景気は回復していません。というのは、住宅を失った人達は棲家を取り戻していないし、失業した人達は再就職できたわけでもなく、給料がカットされた人達が前の所得に戻っていません。悪くなったものが悪いままで、このような状態はとても“景気回復”とは言えません。

 

我々が中国経済を論じる際、輸出が依然不振であることを中国の景気回復が難しい理由の1つに挙げることに慣れているが、中国の輸出不振はそのまま先進諸国の消費がまだ戻っていない証明でもあります。

 

このような状況が続くようであれば、早かれ遅かれ、株価は2番底を付けに行くと思われます。

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