当局とマーケット: 呂 新一
金融市場において、明らかに緊急モードが過去のものとなり、当局が出口戦略を検討し始めています。
事実、先週、バーナンキ米FRB議長は初めて公式に“リセッションは終了した可能性がある”と発言しました。そして、昨日は、今週開催されるFOMC会合において“出口戦略が検討される”との観測を受け、ドル買いが優勢になっていました。また、中国の温家宝首相は10日、大連市で開かれた国際経済フォーラムで、今年の目標である実質GDPの8%成長に自信を示しました。
一方、目を金融市場に転じると、波乱を示唆する症候は幾つかも現れています。
まず、下記のチャートはジャンクボンド・ファンドの過去2年半ほどのバリュー推移ですが、楽観ムードが広がれば、皆が高いリターンが欲しがり、ジャンクボンド(別名ハイイールドボンド)は買われますが、警戒感が高まれば、ジャンクボンドは売られ値崩れします。チャートから昨年9月リーマン・ショックの直後、ジャンクボンドが崩落したことが見て取れます。ところで、今は、ジャンクボンドの値段はほぼリーマン・ショック前のレベルまで戻り、貪欲さが再び剥き出しになり、楽観ムードが危険なレベルまで広がっていることが分かります。
また、別名「恐怖指数」であるVIX指数は、ここにきて、再び底値まで低下しました(下記チャート参照)。「恐怖指数」が低いということは、大方の投資家が近いうちに株価が急激に動き出すとは予想していないことを示しています。言い換えれば、仮に株価に大きな変化が訪れると、楽観ムードに浸っている多くの投資家はどう対処すれば分からなくなることは十分に予想されます。
目をさらに中国に転じると、当局の経済成長への自信とは裏腹に、株価の上値が重くなっています。下記のチャートは中国上海総合株価指数のここ6カ月の推移であるが、8月初頭に下落した後、3,000ポイント超えがむずかしくなりました。建国60周年(孔子「六十而耳順」)という盛大な祝典を前に、株価に祝賀ムードが感じられないのは不思議なことで、警戒する必要はあります。
最後に日本について言うと、内閣府が今月8日発表した8月の景気ウオッチャー調査によれば、2-3カ月先の先行き判断指数が7月以来、2カ月連続の下落となりました。過去の経験から言うと、日経平均と景気ウオッチャー先行き判断指数との相関が高く、先行き判断指数が悪化すれば、日経平均の上値も重たくなります。
要するに、政策当局の判断とは別に、近いうち、株式市場が違うシグナルを出す可能性は充分にあります。
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