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2009年8月19日 (水)

地に足が付かない米中の株価上昇: 呂 新一

米国の経済指標の改善、中国の景気回復ぶりは世界の投資家を勇気付け、リスクテークが活発になり、米中の株価が急激に反発してきました。

 

しかし、よく見ると、米中両国の景気は政府による臨時・緊急対策に支えられている所が非常に大きい。そして、不思議なことに、政府による支えがどこまで持続できるのか、その支えがなくなれば、景気がどうなっていくのかについて真剣な議論は殆どなされていません。

 

米景気にとって、住宅市場の悪化は依然ガンであると言えます。全国範囲で見れば、住宅価格の下落が止まらず、差し押さえが増え続けています。事実、不動産仲介会社のリアルティトラックによると、7月の住宅差し押さえ件数は36万件を上回り、前年比32%増加し、6月からは7%増えました。

 

米住宅市場が悪化し続けている理由は主に以下の2点と思われます。

 

1)90年代後半から始まった住宅価格の上昇は前例のないスピード、長さであったため、その反動も前例では測れない大きなものになります。下記のチャートはケース・シラー住宅価格指数で、字が小さく良く見えないが、それでも90年代後半から始まった住宅価格上昇の凄まじさが見て取れます。

2)住宅価格の急激な上昇とローン債権の証券化商品氾濫の相乗効果で、見せかけの好景気を演出し、雇用市場も活況を見せていました。そこで、見せかけの景気が崩壊してしまうと、雇用も失われ過去の盛況に戻るのは非常に難しいと思われます。雇用市場が悪いままでは住宅の買い手がとんとん少なくなっていきます。そのような状態では、住宅市場の回復が難しいと言わざるを得ません。

Home_values

 

住宅市場が回復しなければ、逆資産効果で米国民の消費余力が削がれると同時に、関係する金融機関の不良債権も膨らんだままで、景気にポジティブな循環が生まれ難い。

 

そして、ポールソン財務長官時代に策定した金融機関から不良債権を買い取り計画は現政権の下で真剣に実行される形跡が全くありません。金融機関にとって、過去は時価評価が必要であったが今はしなくても良い不良債権をわざわざ時価評価するメリットが小さく、まして不良債権の買収に応じ、投資損失を実現してしまうことです。ただ、不良債権が金融機関のバランスシートに居座りしたままでは、景気回復の道はナローパスにならざるを得ません。

 

中国についてまず言えることは、政府の景気刺激対策は質より量を重視していることです。質より量を重視してしまうと、景気回復の質にも大きな疑問符が付くようになります。

 

事実、質より量であることの弊害が随所に出ています。その1つの好例は、新車へのクレームが頻発していることです。中国品質協会全国ユーザー委員会が729日公表した報告によると、今年第2四半期での新車へのクレーム件数が第1四半期に比べ30%も急増しました。即ち、多くのメーカーは政府による新車購入奨励策を千歳一遇のチャンスと捉え、質よりは生産量を優先し、アフターケアーよりは販売を優先しています。無論、その結果、見かけ上は景気がよくなりましたが、一方では、資源が浪費され、税金、消費者の資金が無駄にされ、企業も質、社会・消費者への責任をないがしろにし、王道を外れることになります。

 

質より量、見せかけの景気回復であれば、おのずと株価の急上昇も見せかけになり、大幅調整が当然のこととなります。

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