9月以降米株調整の可能性: 呂 新一
米株は依然強気ムードに支配されています。今月上旬当たり調整する局面が見られましたが、すぐさま反騰し始め、さらに上進しました。このような現象は殆どの参加者が投資リターンを目指し、全力投球していることを意味し、同時に、調整らしい調整をしていないため、今進行中の上昇が脆弱である可能性を示唆しています。
米景気の先行きにとって、住宅市場は依然1つ重要なファターであるに変わりがありません。その住宅市場について言うと、抵当銀行協会(MBA)の調査によれば、今年第2四半期の住宅ローン延滞および差し押さえ件数はローン全体の13.16%(季節調整前)を占め、過去最高を記録しました。そして、プライム固定金利ローンの延滞率が第1四半期の6.06%から6.41%まで、差し押さえ率が第1四半期の2.496%から3%まで上昇しました。一年前では、プライム固定金利ローンの差し押さえは全体の五分の一であったが、今は差し押さえ全体件数の三分の一まで占めるようになりました。このようなプライム固定金利ローン返済状況の悪化は、今まで余裕があると考えられていた家庭も資金繰りに悩んでいることを示し、注目すべき現象と言えます。
住宅市場の好転が期待しにくい理由の1つは雇用市場状況の悪さにあると思われます。労働省が7日発表した7月の雇用統計によると、失業率が9.4%で6月の9.5%より低くなったとは言え、非農業部門就業者数は6月より24万7,000人減り、給料受給者の減少はまだ止まっていません。そして、就業者数の減少と同時進行しているのは、給料の削減であります。言い換えれば、非農業部門就業者の総所得が就業者数の減少を上回るペースで進んでいます。
このような状況はそう簡単に変わらないと思われます。事実、Conference Board(全米産業審議会)が7月に発表した100社前後の大企業CEO(最高経営責任者)への調査結果によれば、これからの12カ月で収益の向上を見込んでいるCEOの56%が人件費などのコストカットがその最大な原動力と見ていることが分かります。言い換えれば、雇用、給料・福祉の改善はなかなか見込めず、そのため、住宅市場の本格的なボトムアウトも期待しづらいと思われます。
住宅市場がボトムアウトしなければ、銀行のバランスシート改善も時間がかかります。こういったことは、景気回復、そして株価に悪影響を与えかねません。
米株式市場は、1つの習性として、夏を過ぎて、9月、10月に入ると暴れる(大きく下落する)ことが多い。今年も、3月上旬から今までの間、相場上昇が続けてきただけに、9月以降相場は暴れる(調整する)可能性が十分にあります。そのような下落相場を利用し高いリターンを得たい投資家にとっては、秋以降のボトムでの投資のため、キャッシュの一部をキープした方が良いと思われます。
米株価上昇が脆弱である可能性を示すもう1つの証拠はドルインデックスの動きです。というのは、3月上旬に株価がボトムアウトし反発してきた軌跡は、ドルインデックスが3月上旬から下落してきた軌跡(下記チャート参照)と一致しています。言い換えれば、米株価の上昇は、ドル下落の犠牲の上に立っています。
過去1年のドルインデックス変動
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