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2009年7月29日 (水)

日米金利差:水谷

金利差の拡大がドル/円のドル高傾向の理由と言われています。そこで今回は日米金利の見方を検証しましょう。

Spreadjuly29

上のチャートは日米の10年債の利回りの比較を描いたものです。黒い線が10年米国債の利回りです。これを見ると610日近辺で4%近くと利回り上昇となりましたが、710日前後に3.3%まで低下し、そして現在は3.7%近辺にまで上昇しています。6月上旬の上昇要因は米雇用統計で非農業部門雇用者数が予想よりかなり良い数字であったことです。5月以来上昇し、ピークを付けました。その後7月には同じく米雇用統計の数字が悪かったことからリスク回避の動きとなり米国債が買われる展開となりました。この間、需給面では、中国が外貨準備金の投資対象として、米国債からIMF債に切り替えるのではとの思惑、米国債の入札悪化から、そしてリスク志向の投資スタンスから、安全資産である米国債からリスク資産の株、高利回り海外金融資産にシフトする動きが強まりました。中国は10年債から短期の米国債にシフトする動きなど、米国政府の揺さぶりをかけています。基軸通貨としてのドルの立場を政治的に揺さぶるなどいささか政治的であると思えなくもない。しかし大きな部分は米国の投資家の投資マインドが安全志向からリスク志向に変ってきていることが大きな要因と思います。株高、金・原油価格などの商品に投資マネーにシフトする動きが鮮明に映し出されています。10年債の利回りは今後3.50%前後を下限にして、4.0%を上回る傾向になるのではと思います。短期金利は平時には政策金利であるフェッド・ファンド・レートは4.00%5.00%の水準と言われています。長期金利はこの水準を1.00%前後上回って取引されると言われています。その意味では10年債利回りは5.0%6.0%あたりに景気の回復とともに上昇傾向を辿るのではないでしょうか。米経済は金融危機が過ぎ去り、製造業を中心としたファンダメンタルズの改善途上に現在はあるようです。即効性のある景気回復は期待されないものの、徐々に利回り水準を切り上げて行くのではと思います。気がかりは長期金利の上昇が住宅金利の押し上げにつながらないかとの懸念です。昨今の住宅関連指標は良いものの、金利上昇が足かせとなる可能性があり、バーナンキ議長以下メンバーは、スムージング・オペレーションが基本の金融政策をとるものと思われます。リスク回避という名目の利食いを消化しながら、売り先行(債券では価格下落は利回り上昇)の展開になると思います。

景気回復で気がかりは商業不動産市況の悪化が続いていることです。住宅関連は相場観が上昇と予想以上に好転しているようです。しかし、商業不動産部門では一向に上昇の気配を見せていません。景気が回復しても法人など企業は経費部門の節減を最重要に企業経営、利益率の向上を図ります。オフィスなどのスペースはNYなど大都市では空室が目立つと言われています。この商業用不動産の債務を金融商品としたのがCMBSCommercial Mortgage-Backed Security 商業用担保証券)です。米大手金融機関は大量のCMBSを抱えており、日々値荒い(mark-to-market)をしている状態で内心ひやひやしているのではと思います。金融機関の第二四半期の決算発表ではトレーディング部門が主導した内容だったようで、足を依然引っ張りそうな債券を大量に抱えており、市況悪化とともに決算も悪くなる可能性があります。

反対に日本の金利を見てみましょう。過去の反省からか、また日銀の独自性がないのか、景気好転の兆しが出たとしても、長期金利は上昇しそうにありません。長期金利が上昇すると日本の財政収支で利払い負担が上昇することから、財政悪化となり、政府に重い負担になります。10JGB2.0%が上限と見るのが正しいのではないか。敢えて日銀としても長期金利が上昇するようなことは控えているようです。そして短期金利は出口戦略のヒントとなる発言さえ控えているように思います。日本の金利は上がらないとの歪められた相場観が日本の債券・金利ディーラーにはあるのではないのでしょうか。極めて狭い変動幅で推移するために日本の債券ディーラーの働く場所さえなくなりつつあり、もっぱら海外債券投資に走るのではと推測するところです。

日米金融当局の金利に対する姿勢が全く異なることから、日米金利差拡大の傾向は高くなり、その結果として長期に渡りドル/円でも円安傾向が強まると思われます。短期金利の低位安定はファンド筋に「円キャリー・トレード」の機会提供し、これも円安傾向をサポートするように思えてなりません。

それでは。

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