株式市場調整後の姿を思い描く : かかし
日米ともに株式市場の調整が続きます。先週は、ダウ平均株価が1.6%の下げにとどまったのに対して、日経平均株価は5.4%と大きく下落してしまいました。
株式市場の調整に歩調を合わせるように、最近3週間は「会社四季報を考える(その1)」「会社四季報を考える(その2)」「日米両国の株式市場の調整について考える」など「ひと休みモード」のテーマで書き進めてきました。
しかし、いつまでも調整というわけではないでしょう。
そこで今日は株式市場の調整後の姿を思い描いておこうと思います。
歴史的な経済混乱からの回復ですから、以前とまったく同じ姿に戻ると考えている人は少ないと思います。ではどういう姿になるのか? 明確なイメージを描いている人は多くないでしょう。
その観点から、実に面白く、有意義な書籍を見つけました。現在は東京大学の特任教授をなさっておられる村沢義久氏が書かれた「日本経済の勝ち方 太陽エネルギー革命」(文芸春秋社、2009年3月)という本です。
詳細にご報告するゆとりも紙面もないため、とりあえずポイントだけをご紹介します。
*世界経済は、これまでの常識をはるかに越えて大きく変化する。
*20世紀を象徴した「石油を燃やす」文明の時代は終わりを告げる。
*石油に代替するエネルギー源は太陽。
*ガソリン車から電気自動車へ
*エンジンからモーターへのシフトが、メカトロニクス産業に大打撃を与える。
*一方、自動車の内外装関連産業は大きく成長する。
*ガソリンスタンドが消える。電源にコンセントを差し込むだけのためにスタンドは不要。
*発電所を中心とする電力事業は大きく変貌する。
*多様なエネルギー源、蓄電装置を組み合わせたネットワーク(マイクロ・グリッド)の運用が電力会社の収益源に。
*ガス事業は存亡の危機に。
*石油産業の規模は、自動車や家庭用などの需要減少で5分の1に縮小する。
*資源戦争が緩和される。産油地域に偏在したエネルギーから、世界中がエネルギー保有国に。
*オイルマネーが消える
*二酸化炭素の排出枠を巡る南北問題がなくなる。
実は、まだまだ興味深い論点があるのですが、ぜひ書店で目を通して見てください。
かなり長い時間軸が必要な構図だと思うのですが、20世紀の資本主義を象徴する「石油」と「自動車」の位置づけが大きく変貌するという村沢氏の議論には、強い説得力があります。
そういえば、英国石油(British Petroleum)が2001年に社名を「BP」とした時のキャッチフレーズが「Beyond Petroleum」(石油を越えて)。 石油業界の人たちのほうが、石油の将来を真剣に見つめていることは言うまでもありません。
そのような変化の中で見ると、GMに莫大な資金を注ぎ込み必死の再生を図る米国の産業政策の行方が注目されます。過去の鉄鋼産業や自動車産業に対する強力な保護政策の成果は、今日の両産業の状況を見れば明らかです。
そこで現実に戻って、現在の株式市場の調整について考えてみたいと思います。
下の図は、大恐慌時代のダウ平均株価の底値(1932年)と、日本の株価が大底を付けた時とを重ね合わせて見たものです。実は、日経平均株価が10,000円を付けた直後に「ひと休みモード」スタンスを転換した理由がここにあります。
この調整は、あと数カ月続く可能性があります。
ただし、弱気は禁物です。理由は、1930年代の米国の株式市場のその後の展開です。丸で囲った部分が調整局面の位置です。
となれば、歴史的な下落を記録した日本の株式市場が1930年代の米国のように上昇するのかどうか知りたくなりますね。 もし、以前の経済への単純な復帰であるならば、その可能性は高くないでしょう。しかし、村沢氏の指摘されているような大変化をともなう回復であるならば、その可能性は十分高いと考えています。
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