道程の遠い米景気回復 竜河
この数週間、米国で、株価の下落と歩調を合わせ、国民の将来への期待が再び低下しました。事実、コンファレンス・ボードが6月30日に発表した消費者信頼感期待指数は前月の71.5から65.5に低下し、3月からの回復基調が中断しました。
3月以来、株価の回復に伴い市場心理が好転し、消費者センチメントも改善していました。しかし、それが問題解決され将来が明るくなったことの表れではなく、単に、最悪期を通り過ぎ、気分がこれよりさらに悪くなるようがないといった状況の反映であると思われます。
米景気回復が強くなれない最大の理由は雇用市場の弱さです。数年先に亘る“見込み収入”を借金で前倒し使い、住宅の値上がりした分(home equity)も担保にして資金を調達して使ってしまった米国人にとって、今ほど安定した収入が得られる職を欲しがる時はありません。しかし、残念なことに雇用市場の状況は非常に悪いです。
というのは、6月の雇用統計を見ると、非農業部門の雇用者数は前月から46万7000人減り、これで雇用者数の減少は18カ月連続で戦後最長となりました。そして、普段言われている失業保険継続受給者数に緊急失業救済を受けている人をカウントされていないが、それをカウントに入れると、失業保険継続受給者数は報道された688万人からより現実に近い940万人に膨れ上がります。
雇用の回復難しいということは、新しい産業、又は経済の新しい姿がまだ見えていないことを意味し、“新しい現実”に米経済が適応し、そこから再出発することは簡単なことではありません。
バーナンキFRB議長はこの点をよく認識しているようで、13日の議員との会合で、米経済が雇用なき回復に直面する可能性があるとの認識を示唆しました。
雇用市場が悪化し続けていくと、住宅市況の回復が望みにくくなり、個人消費が停滞し、企業の収益(売上)回復も難しくなります。
思い起こせば、3月からの株価反発は、米政府が大手金融機関に公的資金を導入し金融システムの安定化を図ったほか、企業業績の回復期待も背景にあると思われます。ただ、その企業業績回復は人員削減に頼った所が大きく、景気回復の追い風を受けたものとは言えません。そこで、最終需要が盛り上がらず、収益見通しが依然暗いままであれば、企業は再び大規模な人減らしに動く可能性は大きい。そうなれば、米景気の回復が一層遠くなります。
上記チャートは小売チェーン大手ウォルマートの過去1年の株価推移であるが、チャートが示している通り、“everyday low price”のウォルマートも収益を上げることに苦労しています。
米国内消費の委縮が続く限り、株価の上昇トレンド入りは難しいと思われます。
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