日米両国の株式市場調整について考える
日米の両市場とも調整局面が続いています。先週の日経平均株価は0.6%下げました。ダウ平均株価の下落率は日経平均株価を上回る1.8%となっています。終値ベースで直近の高値から見ると、日経平均株価は3.2%、ダウ平均株価は5.9%低くなったことになります。
興味深いのは、両市場とも3月に底値をつけてから基調としては上昇局面にあるのですが、日経平均株価の上昇率が高く、下落率が小さいのです。そのため、日米の株価乖離の拡大が続きます。底値から現在までの上昇率は日経平均株価が39.1%、ダウ平均株価が26.4%とかなり大きな格差がついてしまいました。
そこで今日は、なぜダウ平均株価がもたついているのかについて考えてみたいと思います。
結論を先に申し上げておけば、意外に思われるかもしれませんが、米国経済の回復のペースが日本経済に比べて遅いのです。
米国の景気の状況を在庫循環モメンタムで見てみましょう。出荷金額の増減率から在庫金額の増減率を差し引いた指標です。
使用するデータは米国商務省の「出荷・在庫・受注統計」(Manufacturers’ shipments, Inventories and Orders)、一般に「3M」と呼ばれる統計です。最新のものは7月3日に出た5月分です。発表の時期が多少遅いこともあって、どうも人気のある統計とは言えないのですが、その中の一部のデータが一足早く発表されます。「耐久財受注」として人気のある指標です。
それでは、全製造業の在庫循環モメンタムです。その指標を構成する出荷の増減率は細い実線、在庫の増減率を細い点線で示してあります。
出荷が大きく落ち込んでいます。これは売上高の推移と看做すことができますから、米国製造業の減収幅はかなり大きく膨らんでいるようです。一方、在庫も大幅に減少していて、厳しいコスト削減と資産圧縮の努力を示唆しています。
このような状況下ですから、在庫循環モメンタムは明確な底打ちはしたものの、反騰に勢いがつきません。
この在庫循環モメンタムとダウ平均株価の動きを見るとかなり強く連動しています。
7月3日に発表された5月の統計を用いた在庫循環モメンタムは-15.42と前月の-15.24をわずかに下回ってしまいました。ダウ平均株価もしばらくの間は停滞気味に推移する可能性が高いことを示唆しています。
それでは日本はどうなのか? 経済産業省の発表する「鉱工業生産・出荷・在庫指数」(「鉱工業生産動向」と呼ばれます)と日本銀行の「製造業部門別投入・産出物価指数」を用いて作成した在庫循環モメンタムを、米国のものと比較すると明らかな差が目につきます。
赤い太線が日本の鉱工業在庫循環モメンタムです。大底をつけた後の反発力の強さが際立っています。
どうもこの差が、両国の株式市場の展開の差になって表れているように思われます。
より詳細な議論を、私のブログである「スケアクロウ投資経済研究所」 http://kakashi490123.cocolog-nifty.com/blog/ の中で、「なぜ日経平均の上昇率はダウ平均を凌ぐのか?」という表題でしてみました。ご興味があればご参照いただければ幸いです。
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