FEDによる出口戦略の順序:竜河
FEDが現行の緩和的な金融政策からの出口戦略を真剣に検討しているようです。
無論、深刻な不況と低迷する物価を考えれば、緩和的な金融政策をすぐに変更する必要はありません。
ただ、景気が改善したら直ちに現行の金融政策から脱出する意思を周知させなければ、インフレ期待が台頭し、それに呼応して長期金利が上昇してしまうと、景気回復の機運がそがれる可能性が大きい。
昨年12月より、FEDは政策金利を実質ゼロにし、そして、そのゼロ金利政策をある期間維持する約束で緩和的な金融環境を作り出しました。また、金融危機を受け、FEDが緊急流動性供給策を発動し、CP、RMBS(住宅ローン担保証券)、政府機関債および国債の買い取りで市場に1.75兆ドル(日本円で約167兆円)の資金を提供しました。FEDによるこういった一連の政策・措置は効力を発揮し、市場機能の回復に大きく寄与したと見られます。
ただ、こういった金融政策・措置は、その性格から、あくまで一時的なものと思われます。
そして、今のところ、インフレ期待がまだ高まっていないとは言え、マネーサプライが今までのペースで増加し続けていくと、インフレ期待が高まるのは時間の問題と思われます。無論、巨額な財政赤字もインフレ期待が生まれる土壌になる可能性を孕んでいます。というのは、巨額の財政赤字は最終的にFEDが穴埋めするとの思惑が広がっていれば、紙幣の垂れ流し観測が生まれ、インフレ期待が増長されます。
その意味では、FEDにとって、現行の金融政策・措置が十分に効果を発揮したと確認できた時点で、インフレ期待をうまくコントロールことは重要な課題となってきます。
幸い、現行の金融政策・措置が既にそれなりの効果を発揮しました。その象徴の1つは、最近、多くの資金注入ルートが使われなくなったことです。こうした現状から見ると、今後、FEDがとるべき又は最も取りやすい行動方針は、将来的に使われる可能性が最も低い資金注入ルートを取り外し、そして、金融混乱が再び起きる際使われる可能性の高いルートを残しておくことです。
FEDがインフレ期待をうまくコントロールするには、政策金利の引き上げ、準備金の調整、又は、購入した資産(証券)を再び市場に放出するなどの手段が考えらます。
緊急流動性供給策の縮小・放棄、又は購入した資産(証券)を再び市場に放出するなどの操作は、政策金利の変更、又は準備金の調整より実行し易くかつ機動性に富んでいると見られます。そのため、出口戦略の順序では、緊急流動性供給策の変更が政策金利の変更・準備金の調整より先行する可能性が大きいと見られます。
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