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2009年7月 2日 (木)

豪州の5月小売売上高:津田

5月の小売売上高は過去最高を記録

豪州統計局(ABS)が昨日発表した5月の小売売上高は季節調整済みでエコノミストの予想+0.5%を大きく上回り季節調整済みで前月比+1.0%となった。1%増加は率としては昨年12月のクリスマス商戦時における+3.8%には遠く及ばないが、売上高は1955,000万豪ドルと過去最高を記録し、前年からは7.1%となった。小売売上高は豪州のGDPの約23%を占め、国内雇用者の約15%が小売業に携わっている。
この強い数字の背景は政府による給付金と現下の低金利との見方が一般的である。

            

        豪州の小売売上高 (%、前月比)

7月’08

8

9

10

11

12

1’09

2

3

4

5

+1.9

+0.5

-1.6

+1.0

+0.4

+3.8

+0.5

-2.0

+2.2

+0.3

+1.0

小売売上げに最も寄与したのはデパート売上げと衣料品、織物類であるが、一方カフェ、レストラン、テークアウェイ・ショップなどの外食産業も好調であり、消費者は“若干の贅沢”に出費を惜しまなかった模様である。

家計の改善と小売店の大幅ディスカウント作戦がマッチしたとの見方が出来る。Australian National Retailers Association のCEO Margy Osmondは「金利は昨年9月から十分低下し、ガソリン価格は下がり、加えて税金還付措置が取られたことから家計は改善し、一方小売店は値引きを積極的に行ったため結果として消費者の購買力が増加した」と指摘する。彼のお試算では政府の給付金が5月に7億5000万豪ドルの消費に向かい、昨年12月からの給付金総額の消費に及ぼす影響は36億豪ドルに上るという。

住宅ローン支払い金額の月額平均はRBAが利下げを開始した昨年9月に比較して700豪ドル減っているし、他の主要国で見られるような大幅な雇用削減がなかったことも消費の追い風となった。

この結果に対してスワン財務相は「小売売上高は追加景気刺激策を実施した昨年11月から5.9%増加している。今回の結果はウエルカムであり景気刺激策の効果が出ていることは確かであるが、繰り返し申し上げるように、世界的なリセッションの影響からまだ脱っしたわけではない」と警戒感もあわせて示す。

高級デパートであるDavid Jonesのコメントは「連邦政府の景気刺激パッケージと株式市場の回復がここ数ヶ月小売売上げを押し上げていると分析する。4月は伸びがほぼゼロであったが、5月、6月と状況は改善した」

政府の景気刺激パッケージ第二段の900ドルの戻し税が5月に実施され、一方71日(新財政年度)から所得減税が実施されている。

71日から税率30%の最低所得額は34,001豪ドルから35,001豪ドルに引き上げられ、一方40%の所得税は38%に引き下げられる。これにより年収40,000豪ドルの人は1週間で26豪ドルの減税となり、年収60,000豪ドルの人は17.30豪ドルの減税、更に年収90,000豪ドルの人は28.0豪ドルの減税となる。

しかしながらエコノミストの中には、今後失業率が上昇し出した時に、昨年11月以来の消費の回復基調が保てるか疑問視する向きもある。UBSのチーフエコノミストScott Haslemは「給付金効果のフェードアウトと失業率の上昇から2009年後半から2010年初頭にかけて個人消費は落ち込む」と警鐘を発する。

また、今回同時に発表された住宅建設許可は前月比で+3.0%の予想に対して-12.5%と大きな落ち込みを示しており、住宅部門の回復の遅れが個人消費の足を引っ張ることを懸念するエコノミストは多い。
いずれにしても今回の小売売上げの好調は経済にとって好ましいことではあるが、同時にそれはRBAの更なる利下げの可能性が遠のいたことを意味していることは言うまでもなく、最近高まっている金融緩和サイクルの終了観測が更に高まることが予想される。




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