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2009年6月 9日 (火)

中国‐民間企業の悲鳴が聞こえそう:竜河

 

中国政府はグローバル金融危機から国内景気(特に雇用情勢)を守るため、矢継ぎ早に各種景気刺激策を打ち出し、今のところ、非常に成功しているように見えます。

 

ただ、それでも、中国の民間企業から悲鳴が聞こえてそうです。

 

というのは、今、中国経済に活力を与えているのは政府主導の大型公共事業および不動産建設であり、そこから恩恵を受けているのは主に国営企業と不動産開発、建設・道路業者で、多くの民間企業はカヤの外に置かれています。

 

建設以外の多くの民間企業にとって、輸出および個人消費が頼りの綱ですが、個人消費は政府系シンクタンクも認めているように「昨年ほどの勢いがなく」、輸出も縮小傾向が続いています。事実、中国税関総局(海関総署)が512日に発表した20094月の貿易統計によると、輸出額は前年同月比 22.6%減の9193,500万ドルと、減少幅は3 月に比べ5.5ポイント拡大し3月までの減少幅縮小傾向は止まりました。

 

中国にとって個人消費の力強い拡大が期待できない1つの理由は貧富の差が余りにも大きいことです。日本のテレビを見る限り、中国で金持ちが勢ぞろいとの印象を受けますが、実際はむしろ貧乏人が大多数です。ここで、1つのデータを見てみましょう。2008年末の1人当たりの平均貯金額です。

 

   北京市: 101.1万円

   上海市:    91.8万円

   広東省:    42.4万円

   四川省:    16.6万円

   チベット:   0.9万円

 

政治の中心、党・政府の高級幹部が集中する北京市では1人当たりの平均貯金額が100万円を超えましたが、人口8千万を超えた四川省では17万円未満で、チベットに至っては1万円もないということです。即ち、中国での消費主力は党・政府と一部の金持ちで、普通の市民であれば、使えるおカネの絶対額が絶対に足りず、消費を拡大するすべが持ちません。

 

個人消費が頼れないことで、中国政府は輸出に活路を求めています。中国財政省は8日、玩具や家具、靴、帽子、傘など労働集約型の製品について、輸出時に企業が受け取る税金の還付率を1日にさかのぼって引き上げると発表しました。輸出への税還付率引き上げは金融危機が顕著になった昨年8月以来7回目です。また、中国政府の試算によると、還付率の引き上げで政府税収がさらに252億元(日本円で約3600億円)減るそうです。

 

政府からの援助金で、輸出企業はますます欧米・日本に対して安値販売攻勢をかけることになると予想されます。ただ、中国はそもそも資源・エネルギーの乏しい国で、輸出品を作るため、世界中から原油、鉄鉱石などを大量輸入しなければなりません。中国政府・企業のこうした行動から、1つ可笑しな現象が生まれています。即ち、中国の爆食で世界の資源・エネルギー価格(ドル建て)が高騰する一方、中国政府が輸出の勢いを維持するため、人民元上昇を許さず、基本的にドルリンクする政策を維持します。そうなると、中国の企業、全ての国民にとって、自らの行動で資源高を招き、その資源高がもたらすインフレ脅威を個人消費の弱さで抑えているのは現状です。

 

この現状では、資源(原料)高と弱い個人消費に挟まれている多くの民間企業から、悲鳴が聞こえそうです。

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