数年後に中国版のサブプライム?:竜河
中国の不動産市場はますます過熱化しているようです。
報道によると、今年に入って半年足らずの間、深圳市の住宅平均価格が30%ほども上昇しました。同様に、上海では、日本で言う億ションに相当する高級マンションの成約戸数は5月に前年同期比5倍も増え、6月に入ってからさらにペースアップしています。そして、北京市では、6月中旬まで中古住宅の成約戸数は既に昨年一年の合計を超えました。
おカネは産業から不動産市場へ
中国財務省が22日発表した統計によると、1-5月の国有企業の営業収入総額は前年同期比7.4%減少し、利益総額は30.3%も減りました。業種別でみると、インフラ投資の恩恵を受けた不動産・建設、建材などは利益水準が拡大したが、電力、鉄鋼、海運などは赤字幅が拡大した。
中国企業にとって輸出のマイナス成長が止まらない限り、全体の利益水準拡大が望めません。輸出が委縮し続き収益環境が厳しい現在、数多くの中小企業は資金を不動産市場に向かわせています。中小企業のオーナーから見ると、株式投資はリスクが高いが、不動産価格は長期的に見て右肩上がりしかありません。こうした中小企業のオーナーにとって、投資(投機)用の住宅を数戸、ないし数十戸持つことはさほど負担になりません。
事実、データも住宅投機熱が高まっている説をサポートしています。例えば、深圳市の住宅価格上昇は主に投機対象になりやすい高級住宅が主導しています。そして、ある調査によれば、最近、杭州市で住宅を購入した人のうち、3割は投機目的そのもので、2割は投機・住居兼ね、純粋に住居用は半分しかありません。
緩和的な金融政策が不動産価格の高騰を後押し
銀行も企業の不動産投資を助長しています。報道によれば、一部の銀行は企業が50%の頭金さえ払えば、非本業用の不動産投資に対しても貸出をしています。
また、中国人民銀行上海本部の統計によれば、上海にある本土系銀行の個人住宅向けローン残高は5月で前年同期比78.7億元(日本円で約1,100億円)増加、前月比44.8億元(日本円で約627億円)増加し、増加ペースが加速しています。
日本の不動産バブル期と同じように、今の中国の銀行にとって、収益がすべてであり、収益が高ければリスクがカバーできると信じられ、そして、収益を得るには貸出を増やすしかありません。
負債の重圧下にある家計
中国招商銀行が最近、7つの経済地域の都市部住民貯蓄・投資現状についての調査結果によると、都市部でも3割ほどの家庭は負債比率が40%に達し、住宅ローンやほかの借金の返済に喘いでいます。無論、こういった家庭にとって、失業、事故、又は大きな病気は家計の破たんを意味し、政府の消費拡大呼び掛けに応じる余裕は全くありません。
こうして見ると、アメリカのサブプライムローン問題は、中国の銀行にとって、得難く“他山の石”となるべきです。
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