中国‐長期利益と短期利益とのバランス:竜河
金融危機が発生した後、中国のGDP成長率は落ちたのは言え、欧米諸国に比べ、依然非常に高いレベルにあります。その理由は、無論、中国政府による一連の景気刺激策です。
景気刺激策のうち、最も力が置かれているは銀行に積極的な貸出を求めることです。しかし、それが行き過ぎて、金融当局の統計によれば、第1四半期の貸出増は既に今年の年間計画の93%に達してしまいました。
資金がジャブジャブに供給されましたが、一方では、海外需要が軟調のままで輸出の回復が望めず、国内の消費にも力強さが欠けています。このような現状では、資金は株・不動産に流入し、資産価格の高騰に繋がりやすい。
株価が上昇し続けていることはチャートで容易にチェックできますが、住宅価格も下げ止まり、地域によっては上昇し始まっています。事実、新華社の報道によると、今年1月から4月までの間、全国の住宅販売面積が前年同期比17.5%多くなり、販売総額が35.4%増えました。また、北京市統計局のデータによれば、1-4月期で、北京市の環状四号線内の住宅平均価格は1-3月の15,124元/㎡から15,593/㎡(日本円で約22万円/㎡)へ上昇しました。
このように資産価格が上昇していますが、一部の生活必需品価格の上昇も目立ち始めました。いま、普通の市民が最も悩んでいるのは、野菜・果物価格の高騰です。中国では、中規模以上の都市であれば、その周辺郊外で広大な開発区(企業の入居を待っている工業用地)を作るのは普通です。そのため、お野菜を作る土地が小さくなり、野菜・果物価格の高騰を招きました。
また、地方政府が景気刺激のため支出が増す一方、増収を狙って色んな名目で民間企業から新たな資金を徴収しています。
このように、ここにきて、景気刺激策のひずみ又は不調和音が出始めました。
無論、中国経済がある程度の成長を維持するため最も大事なポイントは健全な消費拡大です。しかし、中国の国家発展開発委員会マクロ経済研究院副院長の劉福垣さんによれば、「中国国民の80%は平均預金額が5000元(日本円で約7万円)未満であり」、このような現状では、内需拡大の裾野がおのずと限られています。
他方、政府による内需拡大策は長期的な目で見ると、望ましくないことになる可能性も大きいと思われます。
例えば、先に農村で始まり今は都市部にも適用するようになった車買い替え補助金策は既にひどく汚れている中国の環境をさらに悪化させてしまい、農村で推進している電気製品購入促進策は農民たちにエネルギー効率の悪い製品を買わせ、毎月払う電気代を必要以上に膨らませることも考えられます。
このように、短期的な景気浮揚効果を狙うことと長期的に見て中国経済・中国国民に本当に良いこととは必ずしも一致しているわけではありません。中国政府にとって最も重要なことは長期的な視点をしっかり持つ一方、当面の難局を乗り越える柔軟な姿勢と思われます。言い換えれば、長期利益と短期利益とのバランス感覚です。
(投稿が遅くなり、申し訳ありません)
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