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2009年6月29日 (月)

「会社四季報」を考える(その2) : かかし

 日米ともに株価の動きが一休みです。先週の日経平均株価は0.9%上昇して、その前の週に3.4%下落した分を幾分取り戻しました。一方、ダウ平均株価は2.9%。1.2%と2週連続で下げています。20090629

 この結果、日経平均株価の上昇率がダウ平均株価を上回る状況が続き、日米の株価乖離の拡大が止まりません。20090629_2

 チャートから見ても、日米両市場の調整の動きは明らかですね。となれば、この先をどう読むべきなのか気になるところです。

 日経平均株価は3か月ほどで底値から40%上昇しました。ダウ平均株価も同様に29%上げています。調整が入ってもおかしくない時期です。

 ところが、この調整の小ささは実に驚くべきことと言わざるをえません。実際のところ、「調整」というより、動きが多少緩慢になったという程度です。

 日経平均株価のザラバの動きを追っていると、下値を支える買いエネルギーの強さに驚かされます。

 マーケットを素直に読めば、現在の動きを本格的な調整の始りと見て悲観的になりすぎるのはリスクが大きいと言わざるをえません。

 ただ、現在は一休みの時期であるとは見ていますので、先週に続いて「会社四季報」について考えてみたいと思います。

 ブーメラン原稿

 「会社四季報」の特徴は、上場全銘柄について2期分の業績を予想していることです。この業績数字の中の営業利益の変動を記述したのが「記事」として掲載されます。特殊な事情がない限り、経常利益や当期(税引き後)利益ではありません。

 元編集長は、業績数字を会社予想と比べて見るだけでなく、四季報の前号と比べてみてほしいと強調しています。

 その業績を説明するものとして「記事」があるわけですが、編集長を含め7-8人のチェックが入ります。

 若い記者にとっては、このチェックが地獄だそうです。何度も何度も突き返されます。そのような原稿を「ブーメラン原稿」と呼びます。

 短い記事ではあるのですが、このような苦労が背景にあることを知ると、読者としては読む楽しみが増すような気がします。

元編集長のボヤキ

 田北氏はかなり力をこめてボヤきます。「個別銘柄も大切だが、巻頭にある『XX号のポイント』や、業績集計表、さらにその詳細を示す業種別業績展望をぜひ読んでほしい」。

 よほど読まれていないのですかね。

 ただ、今回の夏号では、2010年3月期の営業利益が16.6%の減少になると記してあります。2009年期が53.9%の減益ですから、大幅な改善が見込まれているわけです。

 ところが、この16.6%減益という数字は、実のところ前号と比べれば下方修正になっているのです。つまり、期待された回復のペースに遅れが生じていると読めるわけです。

 偶然でしょうが、発売日以降株式市場に停滞色が強まりました。

 株式市場での個人投資家の存在感が高まっています。「四季報相場」が話題となることがあるかもしれません。念のために申し上げておきますが、私は一読者であって、決して東洋経済の社員ではありません!

「会社四季報」の欠陥

 元編集長によれば、「会社四季報」には大きな欠陥が2つあるそうです。

 ひとつは中長期の業績予想がないこと。試みたこともあるのですが、あきらめたそうです。金利や為替の動向など前提条件が読み切れないことがネックでした。そこで、次善の策として、田北氏は「設備投資増加率ランキング」を利用してほしいと提案しています。成長性の高い企業は、設備投資に対する積極性から、ある程度見極めることができると指摘されています。

 もうひとつの欠陥は、「経営者の器」を測ることができないこと。数値化しにくいということが最大の理由なのですが、たしかに最も重要でありながら、最も難しい領域と言えます。田北氏も良いアイデアをお持ちというわけではありませんでした。

 しかしながら、面白いことをおっしゃっていました。「企業のホームページを見て、社長の顔写真と経営理念が明確に記載されていること」。やましいところのある企業のホームページには社長の顔写真が載っていないことが多いのだそうです。それから、「企業理念と現実のビジネスが整合的であること」。土地勘のない分野でバタバタしているのは良くないのだそうです。なるほど!という感じですね。

財務分析指標はROAとROE

「会社四季報」の限られた紙面の中で、削りに削って精選された財務分析指標はROAとROEでした。それには重要な理由があるのですが、長くなりすぎるので、私のブログである「スケアクロウ投資経済研究所」 http://kakashi490123.cocolog-nifty.com/blog/で、「『会社四季報』が選び抜いた財務分析指標の意味」というタイトルで書きました。ただし、これは、田北氏の見方ではなく、私自身の見方をまとめたものです。もし時間が許すようでしたら、お眼を通していただければ幸いです。

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