中国‐不動産価格が一足先に躍進した:竜河
中国の不動産市場は復活期を飛び越え、一気に過熱状態に入りました。
ビジネス紙である«北京商报»によると、北京市で物件によっては徹夜並んで購入受け付け番号をもらう光景が再び見られるようになりました。これは2007以来、2年ぶりのことです。
中国国家統計局が最近公表したデータによれば、今年1月から5月までの間,全国で成約した住宅販売面積は2億4,644万㎡で、昨年同期に比べ25.5%増え、成約金額は1兆1,389億元(日本円で約16兆6,500億円)で、昨年同期より45.3%も増えました。
不動産市場が過熱化する最大の理由は言うまでもなく、政府による積極財政と中央銀行による金融緩和措置です。昨年冬、中国政府は総額4兆元(日本円で約58兆4,800億円)にのぼる景気刺激策を打ち出し、中央銀行である人民銀行は昨年10月以後の100日以内で連続5回利下げしました。
住宅購入への銀行の融資方針も大きく変わりました。昨年9月までは、セカンド・ハウスの融資が絶対認めなかったが、10月以後は融資を認めるようになっただけでなく、優遇金利も適用するようになりました。銀行の各支店にしてみれば、住宅ローンに担保が付いているため安全な貸出であり、本店からの融資目標を速く達成する格好の手段でもあります。
中央政府・人民銀行による刺激策のほか、各地方政府も地元の建設業・不動産市場のテコ入れに躍起になっています。中国では各地方政府が土地の実質的なオーナーで、開発業者が地方政府から土地の開発権利を購入するのは普通です。そこで、上海市、重慶市、福建省などの地方政府は開発業者に対し、土地購入代金の納入期限を先延ばしにしたり、違約金を放免したりするなど開発業者の資金繰りを援助しています。また、それとは別に、住宅の買い手に対し資金援助をする地方政府も現れています。
地方政府にとって、建設業・不動産業は景気の牽引役であり、カネのなる木でもあります。
中央・地方政府のサポートで、巨額の資金が不動産市場に入り、住宅価格を押し上げたと同時に、開発業者のキャッシュフロー改善に繋がりました。懐が潤った開発業者が売り惜しみ、住宅価格がさらに上昇するという循環が生まれました。
多くの中国人から見ると、人民銀行が手放しの金融緩和策を実施しているため、いずれインフレが表面化すると予想され、そうなれば、財産を守る一番の手段は不動産を保有することです。
また、中国で、若い男が結婚するには自前の住まいを持たなければならないことが多い。最近、住宅価格が下がる見込みがなくなったと待つのを諦め、悩んだ末で購入に動いた若いカップルが多いと伝えられています。これは、89年、90年日本で住宅バブルが崩壊する直前によく見られた風景にそっくりです。
インフレを恐れての住宅購入、価格低下期待を諦め上昇する価格に背中が押された住宅購入は、開発業者・仲介業者にとって収入増を意味するが、購入者にとって、中国経済の将来にとって必ずしも良いこととは言いきれません。
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