米国の出荷・在庫の動向を読む : かかし
日米の株式市場が堅調さを維持しています。先週は日経平均株価が2.6%、ダウ平均株価は3.1%の上昇となりました。これで、3月上旬の底値から見ると日経平均で38%強、ダウ平均で34%弱上げたことになります。
個別銘柄ならともかく、市場全体がわずか3か月という短期間に4割近くも高騰するという事態はそう頻繁に発生するわけではありません。
前回は景気指標と株価の高い連動性から、景気指標の底打ちが、この株式市場の高騰の重要な要因の一つになっているとお話しました。
その時に用いた景気指標が「在庫循環モメンタム」です。出荷金額の増減率から在庫金額の増減率を差し引いて作る比較的に簡単なものです。
そこで今回は、3日に米国商務省が発表した4月の出荷・在庫統計、正確には‘Manufacturers’ Shipments、Inventories and Orders’と呼ばれる統計を用いて、米国の全製造業在庫循環モメンタムの動向を見てみたいと思います。
最初に結論を申し上げておくと、日本と同様に米国の景気指標も鮮明な底打ちを示しています。これが、日本と同様に上昇を続ける米国株式市場の重要な理由の一つであろうと考えられます。
それでは、米国の全製造業在庫循環モメンタムを長期的な視点から見てみましょう。2つのオイルショック、ITバブルの崩壊、サブプライム問題の深刻化、そして今回と何度か大きく下落したことがわかります。
次に、最近の動きをもう少し詳細に見てみましょう。かなり変化が出てきたことが鮮明に浮かび上がります。底打ちが鮮明になっているのです。4月は前月に比べわずかに下落したのですが、基調に変化はありません。
さて、問題はここからです。果たしてこの上昇は続くのか、あるいは下落に転じるのか?
私は上昇が続くと考えています。全製造業の内訳をここにチェックしてみると、上昇に転じる分野が次第に増えています。ですから、その集積体である全製造業の在庫循環モメンタムは下落ではなく上昇の可能性が高いと見ます。
参考までに、ハイテクの代表として、コンピュータ及びその関連製品の在庫循環モメンタムの動向をご覧ください。底打ち反騰の傾向が全製造業以上に鮮明であることがわかります。
注目の自動車はどうでしょう? この厳しい業界でさえ在庫循環モメンタムは底打ちが明確です。もっとも、出荷の基調は依然として弱く、懸命な在庫圧縮の努力が在庫循環モメンタムの底打ちを支えています。
というわけで、米国の在庫循環モメンタムの底打ちが、米国の株式市場の上昇を担う重要な要因のひとつであること、そして指標の反騰が続くため、株式市場の上昇基調も続く可能性が高いことがおわかりいただけたと思います。
もちろん、短期的な株式市場の調整はあると思いますが、基調は強く、強気で臨みたいと考えています。
そうなると、日米の在庫循環モメンタムを比べてみるとどうなのかという興味が湧いてくるかもしれません。
実は私もそこに一番注目しています。
面白いことに、日本の指標の上昇率が米国を上回っています。それに呼応するかのように、日本の株式市場の上昇率が米国を上回り、日米の株価乖離が恒常化する兆しさえ見えています。
このあたりの多少詳しい分析を、私のブログである「スケアクロウ投資経済研究所」 http://kakashi490123.cocolog-nifty.com/blog/ で「日米の在庫循環モメンタムが示す株価の方向性」というタイトルで昨日書きました。合わせてご参照願えれば幸いです。
最後に蛇足ですが、「在庫循環モメンタム」などオリジナルな指標を使うことが多いため、もしご興味をお持ちでしたら、日本経営合理化協会で発行している私のCD「景気循環で株式を読むCD」をご覧いただけると幸いです。指標の解説にもかなり時間を割いています。詳細はこちらです。 http://www.jmca.jp/prod/1002/1033/
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