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2009年5月 6日 (水)

米銀は不良債権の重圧から解放されたのか:竜河

各国政府による明日の財政状況を考えない思い切った金融システム救済措置、および民間企業による迅速な生産・在庫調整で、ここに来て、世界経済が縮小するスピードはゆっくりなってきました。

 

景気後退のスピードが遅くなった最初の兆候は米銀の収益状況の改善でした。シティグループ、バンク・オブ・アメリカが相次ぎ予想を上回った第1四半期決算を発表したことで、投資家は最悪期が過ぎ去ったのではとの期待を高めてきました。

 

我々は4月21日の本欄において、「企業の在庫削減努力が実り、景気の改善を示す指標はこれからも続々と発表される公算が大きい」と述べたが、その考えは今も変わっていません。ファンダメンタルズが改善したことで、株価の反発もしばらく続くと見られます。

 

ただ、長期的にみれば、現在の改善は一時的な現象に止まり、事態がさらに悪化する可能性は十分にあります。

 

問題の深刻さを集中的に象徴しているのはやはり米銀です。決算で各大手銀行が軒並み好業績を発表したが、爆弾を抱えていることに変わりがありません。

 

というのは、まず、銀行の決算書は、幾つか“合法的”な手法で厚化粧した後のものでした。その厚化粧とは、例えば、1)保有資産の評価を時価より甘く算定する;2)貸倒引当金を減額することで当期収益を嵩上げする;3)社債の評価が下落したため、その社債を安く買い戻して償却するとの仮定で負債の評価を小さくする;等々です。

 

そして、銀行の先行きも決して平坦なものではありません。

 

これから予想される難関の1つは、来年年央と再来年年央にそれぞれ3千億ドル前後と4千億ドル弱にのぼる変動金利型融資(ARM)の金利再設定(借り換え)です。労働市場が劇的な改善を見せなければ、返済できない家庭が続出し、銀行の不良債権が急増するのは火を見るより明らかです。

 

もう1つの難関は商業用不動産向き貸出が急速に不良債権化していることです。商業用不動産調査大手のReis, Inc.が発表したレポートによると、上位76のショッピングモール/センターの空室率が昨年年末の8.3%から今年第1四半期の9.1%まで上昇しました。無論、ショッピングモールに止まらず、ホテル、オフィス・ビルの空室率も上昇中です。今年中に3-5千億ドルの商業用不動産向きローンが期限を迎えるが、そのうち、かなりの部分が不良債権になると思われます。

 

さらに、米銀にとって、クレジットカード・ローンの劣化も重荷になっていくと思われます(421日本欄参照)。

 

このように、米銀にとって前途は決して平坦なものではないが、その険しい山道をさらに険しくするのは、米長期金利上昇の可能性です。下記チャートは米国の10年国債利回りを示しているが、最近、上昇傾向を鮮明にし、ついに3%を超えました。アメリカでは全てが貸し出し(借金)に依存しているため、長期金利が高止まりしたら、景気停滞が余儀なくさせられ、銀行の経営は一層圧迫されます。

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