難しくなってきた中国の金融政策:竜河
これからは、中国の金融政策の舵取りが非常に難しくなると思われます。
以下のデーダはその理由を物語っています。
・1-4月の銀行融資累計増加額が5兆1000億元を超え、昨年1年間の増加額である4兆9100億元を上回りました。
・1-3月の家計貯蓄率が35.3%で、過去最高だった2008年の28.8%を上回りました。
・4月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比1.5%下落し、下落幅は3月の1.2%から拡大、工業品の卸売物価(PPI)も6.6%下落し、デフレ色を強めています。
・上海総合株価指数が年初から39.2%も上昇しました。
・不動産販売価格が下げ止まる気配を強め、北京、上海、広州などで4月が前月比プラスに転じました。
要するに、政府・中央銀行が一所懸命に旗を振って、景気を刺激しようとしていますが、今までのところ、増発したマネーが主に株式/不動産市場に入り、資産価格の上昇を招きました。一方、中国国民は貯蓄に励み、消費を増やす方向に動いていません。
その間、世界工場としての生産過剰と国民の節約志向の挟間で、物価下落が続き、民間企業が収益増を望めにくい状況に置かれています。
中国国民が財布の紐を緩めないことにそれなりの理由があります。輸出不振で企業が給料削減・リストラを急ぎ、将来への不安を覚えた人々は支出を厳しく管理するようになりました。雇用市場の悪さは大卒生の就職難にも現れ、今の中国で、少しでも就職の可能性を高めるため、美容整形を行う大学生が増えています。
このように国内消費の拡大はしばらく期待し難い。他方、外需の回復もまだまだ先のことと思われます。中国税関総署の発表によると、4月の輸出が前年同月比22.6%減の919億4000万ドルと、6カ月連続のマイナスとなりました。
内需が弱く、外需が縮小し、物価の下落も止まらないとなれば、中央銀行である中国人民銀行は利下げを継続する可能性が高い。ただ、これからの金融緩和は両刃の剣となる恐れが極めて大きい。
金融緩和をし続ければ、株/不動産価格の上昇が止まらず、持ち家が庶民にとってさらに高嶺の花となるだけでなく、バブルを膨らませ、やがて崩壊することで金融システム・実体経済に取り返しのつかない大打撃をもたらす可能性があります。思い起こせば、80年代後半の日本と2003年から2006年までのアメリカは、中央銀行が物価(フローの価格)安定をいいことに長期に亘って金融緩和策を取り続き、その結果、株・不動産(ストック)バブルを招き、深刻な景気後退に繋ぎました。
他方、中国人民銀行がここで方向を変え、緩和スタンスを放棄してしまうと、デフレが加速し、過剰生産力・設備の調整がさらに難しくなり、就職事情の悪化で、社会不安が高まる恐れがあります。
その意味で、中国の金融当局にとって、今後、最も注意すべき点は、増えた資金が実体経済、中でも特に民間企業と個人に流れるように努力し、効率の低い官主導の事業または株式、不動産だけに流れるのを防ぐことです。
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