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2009年5月19日 (火)

中国‐雇用の質的改善が伴うGDP成長が欲しい:竜河

社会が安定し、皆が生活に困らないほうが望ましいとの観点から見ると、経済成長と雇用確保の両方とも大事です。両方を同時に達成するのが難しいであれば、雇用の確保が先決と思われます。

 

中国政府はまさに社会安定・雇用確保を図るため、今年のGDP成長目標を8%に設定しました。中国では、毎年1,000万人の新規求職者が生まれ、それを吸収するには8%の成長が必要であると言われてきました。その8%成長を達成するために、中国政府は大掛かりな財政刺激策を発動したうえ、銀行にも貸し出しを増やすように大号令をかけました。

 

中国全土でインフラ建設が全開し(建設機械大手のコマツと日立建機はそれぞれ今年度中国での売上高が11.6%27%増と期待している)、銀行貸し出しも第1四半期だけで去年一年の総額にほぼ匹敵する総量になったことから見ると、8%の成長は達成できる可能性があります。ただ、現在のこの形で8%成長が達成できても、労働市場の回復、特に質の伴う回復が期待しにくそうです。

 

というのは、各種報道を読むと、銀行貸し出しが急増したにも係わらず、中小企業は依然借金難の状況に置かれています。その理由は、銀行は安全のため国営大手向けにのみ貸し出しを増やし、中小企業には貸し渋っているためです。しかし、中国は日本と同じ、労働者の7割前後が中小企業で勤めており、中小企業が資金繰り難で当面の苦境を乗り越えられなくなると、ますます多くの人が労働市場に放り出されることになります。

 

そして、確かにインフラ建設が増えると雇われる労働者数は増えますが、そこには雇用の質的改善は期待できません。インフラ建設現場で働く人々に対する技能要求が低いうえ、支払う給料も高くない。箱ものを作ることで一時的に雇用創出できても、そこからさらに雇用が派生して生まれる効果が薄い上、工事が終われば雇用が消滅してしまいます。

 

今の中国では、雇用のミスマッチが深刻化しています。例えば、広東省では、310日現在、今年夏に卒業する大学生はただの8.43%しか企業から内定もらっていません。言い換えれば、約91%の大学4年生は学校を出れば即失業者になるとのことです。また、報道によると、重慶市では、今年一万以上の高校生が大学入試を受けませんでした。その背景は、大学の学費が高いうえ、卒業したら就職難、たとえ就職できても給料が安いなどの点が挙げられています。

 

雇用の量の持続的な拡大とミスマッチを解消するには、中小企業振興策(この点については日本が先輩格である)、および産業構造の高度化に本腰を入れなければなりません。その意味では、中国政府が18日打ち出した「軽工業、石油化学産業の調整・振興計画」はまさに時機を得たものです。その計画は、軽工業について、企業育成・中小企業支援および品質の向上などで国内消費と輸出を図り、2011年までに300万人の雇用創出を目指しています。

 

今まで、我々の発想では、中国が毎年の新規求職ニーズを吸収するため、8%のGDP成長を確保しなければならないというものであったが、これからは、その発想を逆転させる必要があります。即ち、中国が持続的な発展を遂げるため、政府の目標はGDP成長にではなく、雇用の量と質の確保に置いた方が望ましい。安定した質の高い雇用がなければ、内需が拡大せず、社会安定するところか、輸出で無理やりに達成できた高いGDP成長率も砂上の楼閣にすぎない。

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コメント

随分いいことが書いてあります。勉強になりました。不正統計に関す処罰条例を最近発表しました。また、そのホームページに、4月14日WSでイギリス人が書いた中国統計の問題に関す記事があります。時間があれば、読んだほうがいいです。

投稿: Shanghai | 2009年5月20日 (水) 06時39分

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