ちょっと一息(その1): かかし
「かかし」です。
先週の日経平均株価は0.6%とわずかながら下落しました。9000円の壁は重そうな気配ですね。一方、NYダウ平均株価は続伸したものの、0.6%の伸びにとどまりました。日米とも急上昇を続けた後の「ちょっと一息」といったところです。
さて問題はここからです。すぐに急上昇に復帰する、しばらく調整を続ける、本格的な反落局面に入る。どれもあり得るシナリオです。水晶玉があればよいのですが・・・
私はしばらく調整が続くと見ています。より正確に言えば、日経平均株価が9000円の壁をブレークして力強く上昇するためには、何となくダラダラと上がり続けるよりも、一度調整したほうが良いと思っています。
日経平均株価が調整すると見る最大の理由は、かなり長期にわたってほぼ同期してきた日米の株価が大きく乖離してきたことです。日本の株価の上昇が速すぎるのです。下の図はその乖離幅の推移を示したものです。
ただし、日経平均株価が本格的な下落局面に入るとは考えていません。それについては、先週かなり詳細にお話させていただきました。
そこで、今日は米国の景気の状態を見ておきましょう。米国商務省の全製造業ベースのデータを用いて議論しますので、あくまでも製造業サイドから見た景況感であることにご注意願います。
まず長期的な景気変動です。出荷金額の変動率から在庫金額の変動率を差し引いた「全製造業在庫循環モメンタム」にご注目ください。赤い太線で示してあります。
直近の下落が大幅ですね。ただ、気になることがあります。在庫循環モメンタムの水準は第2次石油危機のころのほうが低いのです。決して「100年に一度」の大幅な悪化ではないのです。
なぜでしょうか? 図を見ればわかるのですが、第2次石油危機のころは在庫調整が遅れました。景気の悪化に対する危機感が比較的に薄かったようです。だから在庫が積みあがってしまいました。
今回は、「100年に一度」説の流布で、製造業は物を作るのをやめてしまいました。売れないのですが、作ってもいないのです。だから、在庫は増えるどころか、減りました。皮肉ですが、「100年に一度」の危機感が「100年に一度」の経済危機を食い止めたのです。もちろん製造業から見た視点ですが・・・
出荷金額(細い実線)は低迷が続いています。売上高は低迷しているということです。ところが、在庫金額(細い点線)の減少が急速です。そのため、在庫循環モメンタムは底打ちを鮮明にしています。株式市場はこのような展開を大変に好みます。
このように見てくると、日本と同様に、米国の景況感も底打ち局面に入りつつありますので、株価が本格的な下落局面に突入することはないのだろうと思っています。
最後に、気になる米国の自動車の状況を見ておきましょう。ここでも在庫調整の進展から需給バランスは改善しつつあります。だからGMがOKというわけでは決してありませんが、日本の自動車メーカーにとってはあまり悪い話ではないようです。
長くなってしまったので、ここでやめておきますが、半導体などハイテクの需給バランスは、さらに鮮明に改善してきています。ハイテク株が好調なのは、決して理由がないわけではないのです。これについては、私のブログ「スケアクロウ投資経済研究所」http://kakashi490123.cocolog-nifty.com/blog/ で、「ハイテク株の上昇について考える」と題して、日米の状況を比較して論じています。ぜひ合わせて目を通していただけたら幸いです。
かかし
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