中国 ― デフレの亡霊が再び:竜河
中国国家統計局が今朝発表した2月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比1.6%低下し、6年2カ月ぶりのマイナスとなりました。そして、同時に発表された2月の工業品出荷価格指数(PPI)の伸び率は4.5%の低下と、3カ月連続のマイナスでした。
2月の前年比CPI低下に旧正月の影響を指摘するアナリストは非常に多い。
たしかに、旧正月の影響は大きい。昨年2月は旧正月の月で、需要が集中している上、大雪被害で電気・水道並びに日常用品の供給が逼迫する地域は多かったと記憶しています。それに比べ、今年の旧正月は1月だったため、2月に集中した需要がなく、天候も順調ということで、昨年2月に比べ、物価が幾分落ち着くと想像できます。
しかし、それにしても、前年比CPIの低下は先月に始まったことではなく、昨年2月をピークに一本調子で低下してきました。言い換えれば、季節要因があるにしても、グローバル的な景気後退、中国国内での失業者増加、賃金削減を目的としたワークシェアリング・無給休日の普及などが、前年比CPI低下の主因ということです。
CPI低下は、まず、小売業を直撃します。下記チャートは、代表的な小売業銘柄の1つである武漢中百(百貨店)の株価ですが、年初から昨日までの間、13.13%も下落しました。
無論、CPIの低下が示唆している消費不振は、景気回復の希望を内需に託している政府にとっては頭痛の種です。このことは、中国の国内市場を狙っている日本のメーカーにとっても歓迎できないニュースです。
中国政府は景気を刺激するため、銀行に貸出をもっと増やせと大号令をかけていまして、その成果は出ています。例えば、1月の広義的なマネーサプライ(M2)伸び率は18.8%と、09年の年間目標である17%を上回り、銀行の貸出も前月比1.6兆元増(昨年一年の年間増加額が4.91兆元)で、歴史的な増加額となりました。
他方、こういった湯水のように急増した資金が内需拡大との名のもと、社会固定資本投資に回されて、供給能力の大幅増を招くなら、将来的に投資効率の低下ならびに供給過剰がもっと深刻な状態に陥る可能性は極めて大きい。
このシナリオは、銀行にとって悪夢となります。
下記チャートは、中国の代表的な大手銀行である工商銀行の株価ですが、年初から昨日までの間、上海総合が12.66%上昇したことに比べ、工商銀行の株価は2.78%の上昇に止まっています。
銀行と小売りの株価が上昇トレンドに入れない限り、中国の株価上昇は長続きしないと思われます。
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