さらに一歩(その3):かかし
「かかし」です。
日米の株式市場はともに順調に上昇しています。先週の日経平均株価は約8.6%上昇しました。NYダウ平均株価も約6.8%の伸びでした。
日経平均株価は3月10日のザラバ安値7021.28円を直近の底値に短期間に約23%上昇しました。ピッチが速すぎる気がします。4月に入ってちょっと一休みしたほうが良いと個人的には思っていますが、そうも言っていられないようです。
株式市場の基調の変化を物語る興味深いニュースが先週金曜日に出ました。北越製紙が紀州製紙の買収を発表したのです。これに対するメディアの反応は決して明るいものではありませんでした。
「不況下の需要減少に促された再編」、「中堅製紙会社が身を守るための生き残り策」、「5つの生産ライン停止に追い込まれる」などなど・・・・
しかし、かつて王子製紙による強硬な買収提案を断固として撥ね退けた北越製紙の経営陣に決してそのような後ろ向きの姿勢は見えません。不況をテコに成長戦略を加速する意思が鮮明なのです。
それは、北越と紀州両社の生産設備の配置を見ると理解できます。
今回の買収でいくつかの生産ラインを停止します。北越の新潟長岡と千葉市川、そして紀州の大阪吹田が停止になるラインです。これらはすべて内陸立地で海から離れています。これらを停止することで、北越は主力の新潟工場、紀州も主力の三重紀州工場が中心になりますが、これらは臨海工場です。
かつての製紙工場は、原料である木材の調達に便利な内陸部に立地していました。歴史のある製紙会社はいまだにこのような内陸工場を数多く抱えています。
ところが、現在では製紙原料は米国、ロシア、豪州から輸入します。臨海工場のコスト競争力が内陸工場に対して圧倒的に高くなりました。
北越製紙は不況を利用して、臨海工場を中心とするコスト競争力の強化戦略を急速に展開しています。
しかも北越製紙は得意な量産型の洋紙に特化して、多品種少量型の特殊紙を紀州製紙に集約します。もちろん、紀州製紙の得意分野は多品種少量生産です。地理的な補完関係も理想的です。
そのようなわけで、新聞などメディアの論調とは異なり、この買収が決して後ろ向きではないことが明らかなのです。
買収発表のあった27日の株価は、紀州製紙がここに示したように約35%上昇しました。
北越製紙は約3%の上昇にとどまりましたが、3月10日を直近の底として約35%上昇した水準にあります。ちなみに27日の日経平均株価は2%弱の下落でした。
この買収に対する株式市場の反応が前向きなものであったという点が重要です。市場の基調が悪い時には、決してこのような株価の動きは期待できません。買収期待から、三菱製紙の株価まで9%近く上昇するという状況は、明らかに基調が好転していることを強く示唆しています。
「さらに一歩」を進める中で、不況を逆手に取った業界再編の動きに注目したいと思います。紙パルプ産業だけでなく、石油精製産業や中小型液晶などのエレクトロニクス産業など注目すべき分野はかなりの数になります。
これ以上書くと長くなりすぎるので、今回はこのくらいで。
かかし
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