中国 ― 農村・農民への熱いまなざし:竜河
中国では、今、にわかに、農村、ひいては農民への注目度が高まっています。
というのは、07年から一部の地域で始まった「家電下郷(家電製品の農村展開)」は、今年では全国規模に拡大されることになりまして、そのうえ、旧正月明けてから、「汽車下郷(機動車両の農村展開)」プロジェクトも始まりました。
「家電下郷」とは、農村部の消費者が電気製品を新規購入または買い替えする際、中央政府と地方政府が合わせて13%の補助金を出すことです。このプロジェクトの予定期間4年で、終了時までに製品4.8億台(日本であれば1人当たり4台)の購入に補助することを狙っています。
「汽車下郷」とは、今年12月31日までの間、農民が三輪自動車や低速貨物車を廃車し、軽トラックなどに買い換える際、又は排気量の少ないワゴン購入際、政府が10%の補助金を出し、オートバイの購入に13%の補助金を出すことです。そのために政府が用意した資金は50億元で日本円にして約750億円です。
この2つ「下郷」は、農村市場の拡大を狙うものと同時に、不振を極めている輸出の穴埋めとも言えます。
政府の発表によると、これまで、「家電下郷」を実施した地域において、家電販売台数は前年比40%も伸び、大きな成功を収めたとのことです。
それに比べ、「汽車下郷」はこれからのプロジェクトで、効果のほうはまだ何とも言えません。ただ、農民たちに一所懸命に家電を売るより、低い価格で輸送道具を提供することの方ははるか有意義と思われます。
景気不振で旧正月に田舎に帰った出稼ぎ労働者のうち、推定で約2000万人が職場に戻れないでいます。中国の農村では、交通手段が足りない地域が沢山あり、そういった地域で安い価格で機動車両・輸送道具を提供することは、出稼ぎ労働者の起業ないし就職に繋がり、それに内需の拡大、農村の生産性向上を考えれば、まさに一石三鳥と言えます。
ただ、それにしても、1つ奇妙に思うことがあります。それは、家電にしても、機動車両にしても、農民が都市部の住民より10%以上安く買えるという酷く“差別的な”政策に都市部住民から不満の声が出ていないことです。その理由は、中国の農民たちは都市部住民に比べあまりにも“貧乏”であるためです。中国社会科学院が昨年10月中旬発表した報告によると、過去17年間で都市部と農村間の収入格差は12倍近くにも達しました。そのような現実を目の前にして、一部非常に現実的な大学卒業生は「犬になっても、豚になっても、(中国政府が奨励している)田舎に絶対に行かない」と宣言しています。
都市部と農村間の愕然となる収入格差を考えれば、2つの「下郷」は総額で見るとどれほど内需促進できるのかは甚だ疑問です。
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