次の一手を考える(その3):かかし
「かかし」です。
先週の株式市場は堅調でしたね。日経平均株価は、わずか0.4%の上昇とはいえ、米国のダウ平均株価が4.1%も下落する中での上昇でした。しかも鉱工業生産が、季節調整済み前月比で10%という過去最大の下げを記録したのを無視するかのような動きでした。
そこで今日は、「悪い経済指標にもかかわらず、なぜ株式市場は堅調なのか?」、そして「悪い経済指標の代表格である鉱工業生産をどう見るか?」の2つに焦点を絞って考えてみたいと思います。
まず、株式市場の動きです。太線が日経平均株価、破線がNYダウ平均株価です。週後半の乖離が鮮明です。
その要因は円安にあるようです。円/ドルの動向と株価を重ね合わせてみると、輸出関連銘柄の堅調ぶりを思わせます。円/ユーロも同様の動きでした。
次に鉱工業生産を見てみましょう。1月は季節調整済み前月比10.0%、原指数の前年同月比30.8%の下落でした。過去最大とのことです。
次に、数量ベースで出荷の増減率から在庫の増減率を差し引いた「出荷在庫バランス」を見てみましょう。この「出荷在庫バランス」は三菱東京UFJ銀行のエコノミストである嶋中雄二氏が提唱されている指標です。
細い実線で示される出荷が大きく下落していますね。でも破線で示される在庫に注目してください。若干低下しています。つまり、出荷が弱いのですが、生産がうまく抑制されたため、在庫の伸びが止まったのです。この点が重要です。鉱工業生産の増加が望ましいのは、出荷が十分に強い時だけです。出荷が弱い時には、株式市場は鉱工業生産の減少を「良いニュース」と判断する傾向があります。
もう少し詳細にみてみましょう。乗用車の出荷在庫バランスです。ちょっと見にくいのですが、破線の在庫に注目してください。増加したとはいえ、ほぼ前年同月の水準にあります。つまり減産で在庫が抑制出来ているのです。減産を緩和の動きを予想するのが合理的でしょう。
次に集積回路です。破線の在庫が大幅に上昇しています。減産が不十分です。半導体などハイテク産業の厳しい状況はしばらく続きそうですね。
それでは、金額ベースで出荷の増減率から在庫の増減率を差し引いた「在庫循環モメンタム」を見てみましょう。嶋中氏の「出荷在庫バランス」と比べて異なっているところがおわかりになりますか?破線の在庫です。金額ベースでみた在庫が、原材料価格の低下を反映して大きく減少しているのです。この在庫金額の減少は好ましい展開といえます。
なぜ在庫循環モメンタムなどという、一見すると面倒な指標にこだわるのでしょうか?理由は簡単です。株式市場が在庫循環モメンタムに連動するのです。
今後の株式市場は、多少の下落余地があるものの、すでに十分に低いといえます。更なる下落を考えることに貴重な時間を費やすより、反騰に備えたシナリオをたくさん用意することに時間を割いたほうが意味があるでしょう。「次の一手」を考えましょう。
かかし
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