次の一手を考える(その4):かかし
「かかし」です。
出版社系の会社にいるせいか、日本株に対する投資意欲がいかに減退しているかが肌身にしみて感じられます。
最近2週間の日米の株式市場の動向を見てれば、いつもどおり米国株式市場の影響を大きく受けています。
この連動性は、日本株独自のダイナミズムが失われた結果と見ることができます。ただ、この間に、日本経済にとって悪いニュースが山のように出てきたにも関わらず、株式市場が大きく下げていないことに注目したいと思います。いつもこのような展開になるわけではないからです。大底圏に達したシグナルかもしれません。
同時に、どうも日本株は米国株から離れて上に行きたがっている感じがするのはわたしだけでしょうか?米国株が大きく下げても、日本株が思ったより下げない場合が増えてきたような気がします。ひょっとすると、これも大底圏に達したシグナルかもしれません。
では、大底に達した場合のシグナルとは何か?明確な決め手があるわけではありませんが、市場が発してくれるシグナルをどう受け止めるかに尽きるようです。ポイントは、「悪いニュースに反応しない、もしくは逆行して上昇することさえある―――という状況が頻繁に生じる」ということです。
ついでに、大天井をつける場合には、「良いニュースに反応しない、もしくは逆行して下落することさえある―――という状況が頻繁に生じる」ということが言えるように思います。
同志社大学の浜矩子教授が「グローバル恐慌」(岩波新書)という本の中で述べられていますが、現在の「恐慌」を理解するには、1970年代の初めのころがとても重要なのだそうです。1970年にはジニーメイ(GNMA)と呼ばれる米国の政府抵当金庫が融資債権の証券化を始めました。翌年にはニクソン大統領がブレトンウッズ体制の終焉を告げました。ドルが金のくびきから逃れることになったのです。その結果生じた金融の急激な自己増殖が破綻清算されているのが現在の状況だと教授は指摘しています。
その観点で、1971年から現在までの日米株式市場の動向を見てみると、なかなか興味深いチャートですね。情けない話ではあるのですが、日本株の最大の魅力は極めて安くなってしまっているということくらいです。そして、日本のゼロ金利がこの恐慌の重要な原因の1つであるという浜教授の指摘どおりの展開がチャートに表れている気もします。重要だと思うのは、1971年初めの日経平均株価を100とすると、現在はおよそ300強にすぎない水準になってしまったということです。ずいぶん差が縮まりました。ちなみに、NYダウ平均の水準は1971年のおよそ8倍弱です。
もう一歩話を進めてみましょう。1971年にはラーメン一杯が100円で食べられました。今は500円です。もっとも、私がたまに行く北千住駅の地下鉄構内の食堂は380円ですが。このような物価の動きをGDPデフレータという道具を使って修正して、実質日経平均株価というのを作ってみました。
実質日経平均株価はすでに1971年の水準近くまで低下してしまいました。つまり、長期にわたる物価上昇の影響を考慮すると、現在荒れ狂っている「恐慌」の原因が発生した当初の水準まで株価が逆戻りしてしまっているのです。この水準を非常に魅力的だと思いませんか?「大底」のシグナルを注意深く観察しながら、「次の一手を考える」ということで話を進めさせていただいている理由の一つがここにあります。
かかし
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