中国にとっての米国債:竜河
中国の米国債保有は、増加スピードが落ちてきているものの、日本を超え、世界一となっています。米財務省が今月16日発表したレポートによれば、1月末現在、中国が保有している米国債は7,396億ドルに達し、第2位の日本より1,000億ドル以上も多い。他方、中国側から見ると、1.95兆ドル弱の外貨準備のうち、約70%の1.4兆ドルがドル建て資産になっています。
そのようなわけで、中国にとって、米ドル資産、中でも特に米国債の価値が保っていることが最大の関心事となっています。
中国国内で米ドル建て資産の安全性について関心が高まっている中、今月18日、FRBが公開市場委員会で、今後半年間で長期国債を最大3,000億ドル買い取り、住宅ローン担保証券の購入規模を7,500億ドル拡大するなど、洪水のようにドル資金の供給増を決めました。FRBの決定が発表された途端、ドルインデックスが2.9%急落しました。米金融システムにおける不良債権の大きさを考えれば、これからもFRBが買い取りのため、ドルの供給を加速させ、その結果、ドル価値の下落が避けられないように見えます。
今の中国政府にとっては、ドルの下落が頭痛の種であるが、ほかに膨大な外貨準備の運用先がないことで、仕方がなく我慢しているところです。中国人民銀行の胡暁煉副総裁は23日の記者会見で、「信用リスクが比較的低い米国債への投資は外貨準備運用の重要な一部分であり、こうした投資は今後も続ける。……、我々は(在米)資産の価格変動に高度な関心を持っている」と発言したことは、今、中国が置かれている状況を鮮明に表わしています。
無論、中国にとって数少ない自衛策はまた残っています。
1)保有する米国債をできるだけ短期ゾーンに集中し、長期ゾーンをさけること(そうすることでインフレ期待による長期金利上昇・価格低下リスクが避けられる);
2)米国債のほか、戦略備蓄用の石油、ゴールド、その他の資源を購入するなど、外貨準備の運用先を分散させること;
3)企業の“走出去(海外投資)”を奨励すること;
4)貿易決済通貨の分散化を図り、中国に流入するドルの量をコントロールすること;
最も、中国にとっての根本的な解決策は、資本の流動性を認め、人民元の自由化を実施することと思われます。資本の流動性を認めれば、企業または個人からドルを半強制的に購入する必要はなくなり、巨額な外貨準備の運用に悩むこともなくなります。
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コメント
多分、人民元が自由化された時、中国の不動産の暴落の日が来ると思います。特に、不動産の場合は、いかにバブルにあるか明らかです。
投稿: Shanghai | 2009年3月25日 (水) 05時57分